RED / LiPS | 安眠妨害水族館

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RED (TYPE-C)/LiPS

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1. RED
2. ルームメイト
3. HENRY

CELLT、東京カルテット、伝染歌謡一座バラッドなどに在籍していた清人さんが現在所属しているLiPS。
本作は、3タイプ同時にリリースされた、1stシングルです。

TYPE-Aは、2曲入りでDVDが付属。
TYPE-BとTYPE-Cは、それぞれ異なるボーナストラックが収録されていて、TYPE-Bが「復讐少女」、TYPE-Cが「HENRY」となっています。
レコチョクにてどちらも配信されているので、楽曲を聴くだけであれば、配信サービスを利用するのがもっとも網羅的と言えるかな。
「復讐少女」はライブで聴いた煽り曲だったので、違う曲を聴いてみようとTYPE-Cを購入しました。

清人さんは、ソロプロジェクトであった楽團孤独以降、昭和歌謡をベースにした音楽性に特化。
ひとつのバンドが長続きせず、転々としているのが実態ではありますが、やりたい音楽はそこまでブレていないということなのでしょう。

表題曲である「RED」は、ピアノとボーカルのみで演奏されるサビからスタートする歌謡ナンバー。
バンドサウンドになるとハードでスリリングな要素が加わり、低音が続くAメロなどではダークさすら感じさせるのですが、サビになるとやはり哀愁たっぷり。
昭和歌謡と呼ぶには禍々しい気はしますが、素直にフォーマットに従うだけではなく、現代V系シーンへの歩み寄りも図ろうとしているのだろう。
こういう部分で個性化できていけば、活路が見出せそうです。

「ルームメイト」は、お披露目デモCDとして無料配布されていた楽曲。
率直に言えば、初期のシドあたりが好きなリスナーには刺さりそうな構成ですね。
というか、サビの歌い出しが「青」を彷彿とさせるというか、ある程度は意識しているのかしら。
こちらの方がシンプルに哀愁歌謡に徹しているので、その筋のリスナーには聴きやすいと思われるのだけれど、サビの歌い尻でスケールアウトしてウネウネとした間奏に持っていく捻くれ方には彼ららしさを感じます。

TYPE-Cのみに収録された「HENRY」は、その意外性に驚かされた。
雰囲気モノのダークチューン。
淡々としたギターのリフに、デジタルな質感のベースフレーズやシンセを重ねていって、これまでとまったく異なるアプローチで仕上げられているのです。
外人女性の語りなんかが入ったり、ファルセットを多用したり、どことなく、00年代以降のラルクっぽいイメージもあり、このバンド、デンジャークルーの所属だったっけ?と錯覚してしまいそうになる。
ボーナストラックという位置づけは妥当だと思うけれど、1stシングルから、こんなハズシも入れてくるとは予想できなかったな。

正統派の哀愁系バンドと、どう違いを作るか、インパクトを残すか、という部分での試行錯誤が見え、これが結実したら面白そう。
キャリアを積む中での経験に、プラスアルファを足して、どこまで独自性を高めていけるかが鍵となるでしょうか。
LiPSというか、清人さんには、CELLT以降、流通しているアルバム作品が少なく、初心者向けの代表作に欠ける状況。
せっかく、聴く人が聴けばハマりそうな音楽を続けているのだから、そろそろ安定した活動ができる下地を作り、そういった作品がリリースできるまで続けてもらいたいものです。