AREA 18th Anniversary"Atmosphere"@高田馬場AREA | 安眠妨害水族館

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2015年6月29日に開催された、高田馬場AREAの18周年記念イベント、「AREA 18th Anniversary"Atmosphere"」に行ってきました。
LUNATIC FEST.の翌日で、ちょっと見たい程度のイベントであれば飛ばしていたと思うのだけれど、出演者が本当に奇跡すぎて・・・

シーンへのカムバックを果たした慎一郎さんが、慎一郎&杏太名義で出演。
盟友である人格ラヂオの悠希さんもアコースティックで出るということで、幻のユニット"カス"の再現も事前に発表されており、もうこれは行かなくては駄目でしょうと。
その他の出演者も、最近気に入っているバンドばかりで、ルナフェスとは趣向の違った豪華さ、青春への回帰があったのですよね。


yazzmad

1. 最愛の人
2. 18時のスープ
3. 蜜月は真夜中に
4. 新曲
5. パラドックスパレード
6. 新曲

結局、ベース加入後の新体制を見ることないまま、サポートベースを加えての現体制へ。
その間に、随分と見た目が派手になり、音楽性にも試行錯誤が加わったけれど、yazzmadはyazzmadだな、と思わせる。
トップバッターでもがっつり30分くらい演奏時間があって、聴かせる系のバンドが多いイベントとして、とても充実していると思いました。

スタートは大人びた「最愛の人」から。
"Atmosphere"と題されたこのイベントを象徴する楽曲で、目を閉じて自然に体を揺らすのが気持ち良くなる温度感。
とても心地よかったなぁ。

新たなチャレンジとしては、それらの歌モノナンバーの中に、V系らしいスピード感を織り交ぜようとしていたところ。
「蜜月は真夜中に」でのノリ方もそうなのだけれど、最後に演奏された新曲に、特にその辺りの実験が見て取れた。
このイベントでやる必要があったのかは何とも言えないながら、異端なだけではパイを増やせないのも事実。
どこまで歩み寄るかの落としどころを探るアプローチは、次のステップに進むためには必要なのだろう。
これが自分たちで昇華できるようになったら、いよいよ化けるときですね。


…。【サイレンス】

1. dreamer dreamer
2. マヨネーズ
3. music star
4. プラネタリウム
5. やさしいせなか
6. オレンジ色のobjet

…。【サイレンス】として見るのははじめてなのですが、メンバーは見たことある人ばかり。
演奏隊が出てきたときは、あぁ、いつも通りだな、って感じだったのですが、モノクロ衣装ではない想さんには気が付かなかった。
黄色いカーディガンを着ていて、てっきりサポートギターでも入ったのかと思いましたよ。
ギターを弾きながらも歌い出したので、"よくよく見たら想さんだ!"って。

音源を聴いていると相応にゴス色が残っているのだけれど、ライブで聴いて、少し印象が変わった。
ギターも弾くことによってレコーディングとは歌い方も変わってくるし、慣れたことので歌い崩しもあるのだろうが、別プロジェクトとしてやっている理由がよくわかるギターロックテイスト。
世界観をあえて濃厚にしすぎず、バンド感を楽しむというスタンスなのかな。
難解な演奏をさらりとこなしたり、マニアックの中にあるポップさを見つけたり、玄人好みではありますが、じっくり聴きたい楽曲ばかりでした。


DISH

1. come down
2. ドレスフラワー
3. リストカットベイビィズ
4. SNOW EMOTION
5. 49

青い照明に、雰囲気重視の楽曲。
「come down」を聴いて、DISHが成長していることに驚かずにはいられませんでした。
今までは、"剛"で突っ切るイメージで、とにかく轟音を掻き鳴らし、叫び倒す楽曲が多かったと思うのだが、この曲には、"柔"を感じたというか。
久しぶりのAREAのステージで、しっかりインパクトを残していましたよ。

「ドレスフラワー」、「リストカットベイビィズ」、「SNOW EMOTION」って流れも良かったですね。
好きな曲ばかり。
MCのタイミングで、ドラマーの方が先走ってカウントしてしまったのだけれど、そこでのフォローの仕方が渋谷さんらしくて面白かったな。
外に向けて何か言うのではなく、メンバー内での声掛けをあえて外に聞かせることで、笑いに持っていくという。

シンプルなスリーピースサウンドで、ここまで聴かせられるのだから音楽って深い。
引き込まれたところで終わってしまった感もあり、もっと長い時間見てみたいです。


LIPHLICH

1. SKAM LIFE
2. Room 612
3. より道エレジー
4. フェデリコ9
5. MANIC PIXIE

V系シーン的には、LIPHLICHは十分聴かせるバンド、魅せるバンドだと思うのだけれど、この日の面子の中では、"暴れるバンド"に見えてしまう不思議。
場に合わせすぎず、不完全燃焼にならないようにバランスをとる感覚はさすが、場数を踏んできただけあります。

この日初披露となった「より道エレジー」、なかなか良いですね。
久我さんがバーテン役となり、シェイカーを振ったり、エスコートしたりと、歌うだけでなく演技も織り交ぜてくる。
一般的なフリの感覚とは異なる、劇場型バンドLIPHLICHの本領発揮といったところでしょう。
台詞も含めて、これを堂々とやり切ってしまえるからこそ、魅了されるオーディエンスが日増しに増えていくのかと。

「フェデリコ9」、「MANIC PIXIE」と、後半は彼ら流のアッパーチューンで。
イベントも中盤から終盤に差し掛かるこのタイミングで、はじめてファンがジャンプをしていた気がする。
ライブ会場が少し揺れる感覚で、"あ、そうだ、今AREAにいるんだ!"と気が付かされるくらいに、この日の空気は独特だったのですよ。
そこに入っても違和感を与えず、違いとして動きを加えてしまうあたり、LIPHLICHの個性が、様々なジャンルに適用してきたことの証明になったのではないでしょうか。


悠希(アコースティックVer)

1. 勿忘草
2. 午後の落下
3. 回路
4. 再生の朝
5. 切り札
6. 哀愁色のカーテン

アコースティックが二組最後に残るっていうのも珍しいのだが、LIPHLICHでそれなりに減るかなと思っていた客入りがほとんど変わらないことに驚く。
アコギ一本でしっとりと。
改めて聴く人格ラヂオの楽曲は、やはり素敵でした。
シンプルな形態だからこそ、メロディの良さ、歌の良さが際立ちます。
「午後の落下」、「回路」は、本当に好きな曲だったので、聴けて良かった。

序盤は、ひとりぼっちということもあってか、やたら弱気。
ネタでLIPHLICHの楽曲の歌い出しを歌っては、反応が薄くて不安になるという悪循環を繰り返すと、「再生の朝」は、あまりの重圧に耐えきれなくなったようで、ワンコーラスでラストシーンに繋げて早々と終わらせていました。

しかしながら、"カス"の復活を告げるべく、慎一郎&杏太を招き入れると、態度が豹変。
水を得た魚のように饒舌になり、トークイベントさながらのロングトークに。
安定のミネムラいじりから、慎一郎&杏太の音源制作を手伝いたいという真面目な話まで、「再生の朝」でカットした部分以上には喋っていたので、実際に曲を演奏したのは、慎一郎さんたちが入ってきてからだいぶ時間が経過してからでしたね。

披露されたのは、人格ラヂオの「切り札」と、カスとして発表された「哀愁色のカーテン」。
「切り札」は、悠希さんと杏太さんがギターを弾き、慎一郎さんが歌うという編成。
本人よりも歌い込んでいると悠希さんが言うように、ファルセットで張り上げる歌い尻などは、低いトーンに抜けるようにカスタマイズされており、これはこれでオリジナルなのではないかという完成度でした。

「哀愁色のカーテン」は、今度のセルフカバー作品にて、慎一郎さんのボーカル込みで再録されるとのこと。
こちらでは、悠希さんもメインボーカルとして参加。
息の合ったコーラスワークを堪能できました。
まさか、生で聴けるとは思わなかったので、嬉しかったなぁ。


慎一郎&杏太

1. サクラチル
2. 遠き落日
3. 死にたがりと天
4. 同じ空
5. 涙日和
6. 三月の雪
7. たからもの。

帰りたがらない悠希さんを誘導すると、転換なくそのままセッティングをし直し、慎一郎&杏太として仕切り直し。
まさかのトリで、こんなにたくさん曲が聴けることになろうとは想像しておらず、嬉しい悲鳴でした。
カスでの2曲も含めれば、合計9曲。
こんなに、"慎一郎おかえり"ムードになるとは思っていませんでしたよ。

前半は、ホタル時代の楽曲から3曲。
ドラマーだったがおさんも関係者席で見ていて、なんだか色々と思い出してしまった。
「遠き落日」は、おそらくホタルのラストライブぶりで、ただただ感動するばかり。
あの頃よりも、30代になった今の方が沁みる歌。
慎一郎さんの表現力はまったく衰えておらず、ときに優しく、ときに激しく、伝えるべき言葉の意味を表情で示しながら歌い上げていました。

悠希さんとの一晩喋り倒しても足りないであろう馬の合った仲の良さも微笑ましいのですが、杏太さんとの間には、語らずに理解できているような信頼関係があるよなぁ。
「同じ空」からの3曲は、前日のイベントでも披露されていたという新曲。
そんな信頼関係があるからこそ出来上がったような「同じ空」は、ホタルの楽曲からの流れだと少し浮いてしまうのですが、今の彼らだからこそ、こういう楽曲を歌えるようになったのだろう。
優しくも力強い、説得力がありましたね。

「涙日和」は、これまでの音楽性の延長線上にあるような楽曲で、女性目線での切ない歌詞。
「三月の雪」は、東日本大震災を被災地で迎えた慎一郎さんだからこその強いメッセージを含んでおり、ずっしりと心に響く。
形は少し変わったけれど、どれもが彼ららしさを残した楽曲で、是非、CDに残してほしい。
悠希さん、本当に音源化、お願いいたします。

ラストの「たからもの。」は、涙腺が決壊しそうだった。
この曲があったからこそ、この曲をオムニバスで聴いたからこそ、僕はホタルに夢中になったのだ。
あの衝撃は10年以上経った今でも変わることなく、もしかすると、この日のライブで初めて見たという誰かに、同じように大きな衝撃を与えたのかもしれないのかと思うと、なんとも感慨深いものです。

音出しが可能な時間ギリギリまで歌い切った結果、アンコールは登場して挨拶するのみ。
本編で全力を出し尽くすというスタンスも、彼ららしい気がする。
ホタルもジュリィーも別にそうではなかったけど、なんとなくね。


何度も言うけど、人格ラヂオの楽曲とホタルの楽曲が聴けるなんて、本当に奇跡なのだ。
十数年前、僕が上京してAREAに行き始めたときによく対バンで見ていた2バンドが、大人になって、同じ歌を歌ってくれる。
そこに、最近好きになって聴いていたバンドたちが賛同して、過去と現在を繋げてくれる。
こんなに素晴らしいことってないよなぁ。
LUNATIC FEST.を含めて、音楽が好きで良かったと心から思った3日間でした。
高田馬場AREA、18周年おめでとうございます。