全てが造りモノにみえたんだ / シビレバシル | 安眠妨害水族館

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全てが造りモノにみえたんだ/シビレバシル


1. 廻向
2. 絶望ララバイ
3. 歪んだ精神、落者は嘆く
4. 消えない影
5. コワレモノ
6. マネキン世界

シビレバシルの1stミニアルバム。
2013年にリリースされた作品です。

このバンドには、2000年代初頭にお洒落系ブームを生み出したバロックや、エログロ要素を強めてコテオサ路線を切り開いた蜉蝣なんかの匂いがするのですよね。
ヴィジュアル系バンドとして、越えてはいけないラインをあえて踏み越えるようなアプローチ。
それは視覚の面でも、聴覚の面でもなのだけれど、個性を鋭く研ぎ澄ませて、極端に振り切ることを美学とするシーンにおいて、彼らの存在は必要不可欠な異分子といったところでしょうか。

さて、本作はシビレバシルにとって初期衝動をパッケージした一枚。
それ故に、彼らのルーツとなる音楽性が、原型のまま詰め込まれているのである。
初期の代表曲となった「絶望ララバイ」が、もっとも象徴的。
"ゲシュタルト崩壊"というインパクトがあるフレーズをフックに使い、古き良きコテオサ感バリバリで勢いよく突っ込んでいく。
これをベースに、個性を磨いていくのだな、とよくわかる楽曲になっています。

ミディアムテンポでヘヴィーなサウンドの「歪んだ精神、落者は嘆く」では、感情を吐き出すような歌声と、ウネウネとマニアックに響くギターリフのコンビネーション。
もっと歌モノに寄せて、メロディアスなバラードに仕上げた「消えない影」では、ネガティヴな歌詞をシリアスに歌い上げることで、リアリティのある痛みの表現を再現。
「コワレモノ」、「マネキン世界」は、ブチ切れるくらいに激しく振り切れて攻撃的な一方、ダミ声でアクセントを入れたり、曲調を途中でガラっと変えてきたりと、一筋縄ではいかない楽曲構成に。

文字に起こしていくと、コテオサ系のテンプレート通りなのだけれど、それが付け焼刃的に懐古主義に走っているのではなく、シビレバシルのサウンドに昇華して自然体で繰り広げているので末恐ろしいと思わせた。
特に、Vo.和泉さんが作曲を担当した「マネキン世界」は、ラストに収録されてもしっくりくるように途中から歌モノとしての要素も含んでくるのだから気が利いていますよ。

この段階では、特出した個性はなく、10年前のバンドのフォロワーといったところ。
ただし、時代遅れの二番煎じで終わらず、作品をリリースするごとに個性化していく彼らだからこそ、ファンにとっては面白味がある作品と言えるのかもしれません。
なんだかんだ、見てみたくなる、聴いてみたくなる仕掛けが多く、今後も目が離せない。
シングルのリリースが続いているので、そろそろ、現在の彼らによるアルバム作品が聴いてみたいところですな。

<過去のシビレバシルに関するレビュー>
自己嫌悪とあの日みた光
オロカ・モノカ / 悪魔とダンス
傷心愛戯~ラヴゲーム~