TOKYO HEROES / TOKYO HEROES | 安眠妨害水族館

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TOKYO HEROES/TOKYO HEROES
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1.心音~shinzouno-oto~
2.渦
3.クロイムレ
4.踏みつけ草
5.フレンドリスト
6.あの日へのラブレター
7.冬色、私は墜ちてゆく
8.星空が見えるあの場所へ
9.大人ごっこ
10.雨音~ameno-oto~
11.冷たい空、僕は何もできないね。
12.桜彩

遂にリリースされた、TOKYO HEROESのフルアルバム。
結成10周年にして、フルレンスはキャリア初となります。

Vo.岡澤雅史さんが、本作を最後に脱退。
そういう意味でも、ひとつの区切りとなる彼ら。
会場限定シングルや、過去の楽曲の再録を含むため、新曲は少なめとはなりますが、集大成としてのセルフタイトル。
それも必然だったのかもしれません。

Gt.イワンさん脱退以降、4人編成で活動してきた彼らですが、音楽性としては、大きく変わらなかったのかと。
昭和歌謡をベースにした哀愁メロディ、マイナーコードで疾走するリズム、喜怒哀楽を叫びに乗せて声を張り上げるボーカルスタイル・・・
強いて言うなら、ドロドロとしたアングラテイストが薄まり、初期ムックのフォロワー的な要素が感じられなくなったところが変化ではありますが、どちらかと言えば、彼らの個性が洗練されたととるほうが妥当でしょう。

SEである「心音~shinzouno-oto~」から、「雨音~ameno-oto~」までが本編、残りの2曲がアンコールとでも言いたげな構成ですね。
実際に、楽曲の運びかたもそんな感じで、「渦」で幕を開くと、「クロイムレ」、「踏みつけ草」で勢いをつける。
「フレンドリスト」、「あの日へのラブレター」あたりがアクセントとなって、「冬色、私は墜ちてゆく」と「星空が見えるあの場所へ」は、メロディアスで疾走する歌モノゾーン。
メロディは立っているものの、勢いは再び盛り上がってくるのもこの2曲からで、ライブで盛り上がりそうな「大人ごっこ」で締めるための繋ぎの役割を果たしており、ワンマンライブとしては、ややコンパクトながら、なかなか良い流れではなかろうか。

アンコール1曲目が、最新シングルとなる「冷たい空、僕は何もできないね。」というのも、なんだかそれっぽい。
そして、ラストに持ってきた「桜彩」は、切なく、芯のあるバラード。
大団円だな。
はっきりとした張りのある声で歌いきる雅史さんの熱唱を聴くと、本当に脱退がもったいないと感じてしまいます。

バラエティという意味では、あまり豊富ではないというのが正直なところ。
しかしながら、バンドのコアな部分だけを凝縮しつつ、ライブに映えるように並べたことによって、密度が濃く、飽きさせないものになっている。
"TOKYO HEROESはこんなバンドなのだ"というメッセージが、染み付くようなアルバムと言えるでしょう。

潔さを感じる作品。
フルアルバムを聴けば、彼らの音楽に満たされるかと思ったけれど、余計に、もっともっと聴きたいという気持ちにさせられてしまう。
ボーカリストとして在籍していた経歴のあるGt.リンダさんが返り咲くのか、新たなボーカリストを連れてくるのか、今後の活動はまだわかりませんが、TOKYO HEROESとしての活動が続くのであれば、この続きも是非聴いてみたいですな。

<過去のTOKYO HEROES(東京ヒーローズ)に関するレビュー>
あの日へのラブレター
大人ごっこ
末路
絶望記念日