透明な速度で / yazzmad | 安眠妨害水族館

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透明な速度で/yazzmad


1.透明な速度で

2ndワンマンライブ「sentimental holic」にて配布された、yazzmadのシングル。
ジャケット等はなく、CDRにバンド名と曲名が記載されたシールが貼ってあるのみです。

収録されているのは、表題曲1曲のみ。
タイトルだけを見て、爽やかで軽快な楽曲を想像していたのですが、180度裏切られた。
まるで、yazzmadの負の部分をすべて引き受けているように、どんよりと暗い。
サウンドとしては、彼ららしいお洒落なロックを継承しているのだけれど、精神的な重苦しさがあると言いましょうか、端的に言えば、"鬱曲"ということになると思われます。

序盤から、少し不気味。
淡々と、低音域でのボーカルラインが続き、歌詞も鬱々としている。
サウンド的には、四畳半フォークに近い雰囲気を持っているかもしれません。
内容全体としては、どことなく、プロレタリア的な肌触りがあるのだよな。

Bメロでは、Vo.ナオキさんのファルセットにより、浮遊感が出てくる。
盛り上がりそうで盛り上がらず、曖昧なままで間奏に移っていく展開が、ネガティブさや、葛藤をイメージしているようで、そういう演出のひとつをとっても、精神的なダメージが大きいですね。
キャッチーさは完全に無視しているのだけれど、蝕むように癖になる。

サビらしいサビは、最後の1回だけ。
構成としては、なかなか珍しい形をとっているでしょうか。
淡々と積み重ねてきた感情が、ここで爆発。
ハスキーな声を振り絞ってナオキさんがメロディを歌い上げると、コーラスが重なって、ラストシーンに向けて、広がりを見せていきます。
少し気味が悪く、少し切ない。
なんとも、後遺症的に後に響く楽曲だなぁ。

なんとなく、シングルに入れなかった理由はわかるかな。
ワンマンに来るような、コアなファンにしか聴かせられないと判断しても無理はない。
弱っているときに聴くと、心を持っていかれそうな重さがあります。

しかしながら、4分に満たない短い時間で、こんな空気感を作り上げることができるとは。
楽曲のタイプとしては、彼らの中でも邪道ではあるのですが、しっかりとしたコンセプトを感じる一枚。
予算や制作日程の都合上、仕方ない部分はあったのだろうけど、せっかくだから、アートワークにもこだわって、この世界観を表現してほしかったですね。

<過去のyazzmadに関するレビュー>
僕達が紡いだあの紛れもなく輝いた日々と、いつしか気付いてしまった最低な現実
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ハロー