memory / Ru:natic | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

memory/Ru:natic
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1. 桜 さくら
2. Blue&Sky
3. ~キセキ~ 夏の思い出
4. 真夜中ノ日傘少女
5. White Merry Christmas
6. 黒薔薇族ノ招待状 鏖
7. 腐乱人形 LIVE ver

事務所から離脱し、初のオリジナル作品となるRu:naticのミニアルバム。
ジャケットのインパクトが凄いですな。

これまでは、絶叫シャウトに猟奇的な歌詞等々、ツタツタ、コテコテの発狂系バンドを貫いてきた彼ら。
本作では、それに加え、ポップなメロディも増えており、Ru:naticなりのキャッチーさにも挑戦してきたといったところ。
歌メロでのフックの弱さが課題だっただけに、バラエティを広げるという試みは正解だとは思います。

ただし、それにより、少し世界観が変わってきたような気がしないでもない。
「~キセキ~ 夏の思い出」、「White Merry Christmas」といった、甘酸っぱさすらある歌詞には、驚かされた。
ポップな曲と、激しい曲で、歌っている内容がガラっと変わるので、その辺をどう捉えるか。
歌い癖や、曲の前に、ものものしい語りを入れるあたりは相変わらずなので、歌詞さえ気にしなければ、ヴィジュアル系風ナンバーの一貫として聴けるのですが、だからこそ、好き嫌いは分けるような気がします。

この感覚、どこかで見たことがあるな・・・と考えていたのですが、そうだ、10年前のV系シーンでよく見られた傾向だ。
Matinaバンドを筆頭に、関西コテコテシーンが盛り上がった90年代後半から、東京のお洒落系バンドたちが市民権を得た2000年代初頭。
それまで、ギャウギャウとシャウトしていたバンドたちが、可愛いフリをつけたり、ダミ声で歌ったり、青春モノの歌詞を書いたりと、ポップになりつつあるシーンの中で、なんとか生き残ろうともがいていた時期。
そのときに量産されたバンドに似ているのだ。

もっとも、このRu:naticについては、お洒落系に媚びる必要性にはまったく迫られてはいないわけで、影響を受けたバンドへのリスペクトの一貫として、この雰囲気を出しているのだから興味深い。
ほんのりと哀愁のある「桜 さくら」なども、その観点から見れば、聴き方が変わってくる。
Ru:naticが、止まっていた時間を、ひとつ先に進めた。
それを象徴する楽曲と言えるのかもしれません。

17歳から22歳までの集大成、とのことですが、センスの面で若々しさを感じないのがある種の強み。
少しばかり、音楽性がブレつつあるのが気がかりではあるけれど、それも含めたノスタルジック感が面白さであることは間違いない。
再録された「真夜中ノ日傘少女」、「黒薔薇族ノ招待状 鏖」など、時代錯誤のコテコテチューンもしっかり収録されており、突っ込みどころは多くあれど、入門編にはちょうど良い作品ではないでしょうかね。

<過去のRu:naticに関するレビュー>
黒涙デ・・・終幕ヲ・・・