グランギニョル / ライチ☆光クラブ | 安眠妨害水族館

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グランギニョル/ライチ☆光クラブ
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1. Crescent Moon
2. Dark Knight
3. innocent fever
4. 漆黒の薔薇
5. 罪と罰
6. Beauty Beast
7. ガガガ
8. 微熱少年
9. 廃墟の☆帝王
10. 鎮魂歌
11. 光

劇団"東京グランギニョル"が1985年に公演を行った演劇を原作に、古屋兎丸がコミカライズ。
そこから、様々なメディアミックスが展開され、アングラ、サブカルシーンで今もなお根強いファンが多いのが、「ライチ光クラブ」です。

本作は、その耽美で残酷な世界観を、音楽面から表現しようとする試み。
PENICILLINのHAKUEIさんのソロユニットとなるようですが、様々なゲストミュージシャンで構成されたユニットとして捉えてもよさそう。
サックスには、俳優の武田真治さんも参加しており、「漆黒の薔薇」では、MVにも登場しています。
衣装や、映像も、原作を意識した作りになっていて、思わずニヤリとしてしまう。

配信という形で発表されてきた楽曲を、新曲も加えつつ、コンセプチュアルにまとめた作品といったところですかね。
ジャジーで大人びた「Crescent Moon」、官能的な「漆黒の薔薇」では、作品の甘美で繊細な部分を表現。
逆に、「微熱少年」や、「光」は、びっくりするくらい爽やかで、これはこれで、少年らしい瑞々しさと言えるのかもしれない。
その他、登場人物やシーンにまつわるテーマが数々出てくるので、ストーリーをわかっていれば、より楽しめるでしょう。

まぁ、ここまで再現するのなら、もう少し残酷性の表現に特化したドロっとした楽曲があっても良かったかな。
「廃墟の☆帝王」なんかは、思春期故の狂気的な側面も、王道感の中に上手く取り込んでいるとは思いますが、臓器をぶちまけるような描写もある漫画ですから、そのくらい耽美さとのギャップを持たせてほしかった。
大人の事情は、当然にしてあるのだろうけれど。

音楽的には、形態にとらわれないプロジェクトだからこその遊び心も盛りだくさんです。
ラップがメインの楽曲があったり、クラシックをオマージュしたナンバーがあったりと、雑多な印象は否めませんが、後ろ盾となる作品があることで、オムニバス的なアプローチも悪くないと思わせる。
「鎮魂歌」では、machineでもコンビを組む盟友、Kiyoshiさんが作曲を担当していたり、そういった人脈上の繋がりを音で辿っていくのも面白いものだ。

なお、曲数を重視するのであれば、同時に発売されたベストアルバム、「-2011~2012 COMPLETE BEST-『黎明』」のほうがボリュームがあります。
ただし、その分価格が高いということもあり、導入として触れてみるなら、本作のほうが手を出しやすいので、おススメかも。
これはこれで、代表曲と言える楽曲は網羅しているし、収録バランスも良い気がする。
企画モノではあるのだけれど、なかなか力が入っているのですよねぇ。