サブカルチャー入門 ~もしもし渋谷~@渋谷REX (2013.5.25) | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

マイナス人生オーケストラのワンマンに行って来ました。
REXははじめてだったのだけれど、思ったよりも狭いハコなのですね。
ただ、ステージは高いし、モニターもあるしで、それなりに見やすいのではないでしょうか。

当初の予定枚数をソールドアウトさせ、その後、追加チケットを出しますが、そちらも完売。
そのため、会場はパンパンでしたね。
未発表音源の配布、レア曲ベストの限定販売、新譜の先行発売・・・
客寄せの道具は数多くあったわけですが、何よりも、彼らの勢いが東京まで侵食してきたという解釈が正しいのだと思います。

さて、ライブは、いつもの登場SEを経ての「短命ですこ」から。
「池袋!」と、素で会場を間違えたVOCALOID.HaLさんの煽りによりスタートするという、何とも決まりが悪い出だしとなりましたが、それも、フリーダムな彼ららしさか。
そのまま、イントロに合わせて、ゴールデンボンバーの「ワンマン不安」を歌ってみたり、相変わらずの自由な雰囲気。
これまでのワンマンは、拠点である大阪が中心だったということもあり、不安だったのは、ネタではなかったのかもしれませんが。

スタートから、飛ばしていくセトリ。
この日先行発売となった新譜「サブカルチャー入門 ~もしもし渋谷~」のリードトラックである「ワールドイズノットマイン」を、早くも2曲目で披露。
会場があたたまりきる前に、新曲を切るというのは、だいぶリスキーな印象なのだけれど、この曲が格好良かった。
メロディは、安定のHaL節が炸裂しているのですが、途中で変拍子が入ってきたり、ドラマティックな展開が待っていたり、一味違う構成に仕上げられていて、チャレンジを見事に成功させていました。

HaLさんは、序盤こそ、オーディエンスよりもメンバーに頼るアプローチが多かったのですが、曲が進むと、自らの世界に入り込んだ様子。
内輪ノリのスタンスから、オーディエンスを巻き込んでいくスタンスにシフトチェンジしていきます。
定番曲である「High-Technology Sub-Culture」や、「鳥人間たかし」などを盛り上げ材料として、バランス良く配置したのが、奏功したのかな。
そういう意味では、イベントライブよりもはっちゃけ具合は大人しく映る部分もあるでしょうが、それだけ、表現に徹することができていたということ。
ショウとしての意識が高かったように感じます。
個人的には、お気に入りの、「改造人間にて」や、「少女、時々 雨。」を、この辺りで聴けたので、テンションが上がりましたね。

ワンマンでのお楽しみは、この手のバンドでは、定番になりつつある当てぶりによるコント。
テーマは、アンパンマンをオマージュしたのであろう、「ザムパンパン」。
寸劇の詳細は、会場に行った人のお楽しみということで、割愛させていただきますが、BL要素あり、BASSOID.小川さん、DRUMUSHI.生虫さんによる生でのショートコントあり、短い時間でツボを押さえていて、さすがの一言。
関西バンドだけあって、テンポが良いのはもちろん、全員がノリ気だというのが、大きいのではなかろうか。
演技をする気のない棒読みのメンバーがいない。

ちなみに、この寸劇に入る前に暗転して流れた「アンパンマンマーチ」のアレンジバージョンが地味に格好良かった・・・
歌詞も少し変えていたとはいえ、メインのメロディラインはそのままなのに、アレンジひとつで、ここまでイメージを変えることができるとは。
最初は、気付かずにどこかのJ-POPかと思いましたよ。

寸劇が終わると、そのままピンクレディーの「UFO」を、バンドアレンジにてカバー。
これまた、イメージがガラっと変わる。
そして、世界観のつながりからか、「サラバ重力」へと続けていく粋なセットリスト。
この中盤戦は、歌モノがメインでしたね。
「僕の神様」、「死に損ないのサブカルチャー」、「葬送クロール」と、メロディの美しさを際立たせた楽曲たちを、感情を込めて歌い上げていく。
ストーリーテリング調の歌詞と、HaLさんの動きのひとつひとつがシンクロし、さっきまで、コントをやっていたバンドとは思えない世界観の演出が、そこにありました。

終盤から、アンコールまでは、勢いに任せて、暴れ倒すナンバーが目白押し。
レア曲、「シュレディンガーの二人」を演奏したり、「非☆労働者G」で本編を締めたり、意外性のあるラストシーンだった気がします。
イベントでは、「DIVE 4 U」が最後に披露されることが多かったので、てっきりそれだとばかり。
まさか、演奏すらしないとは。
ワンマンだと、こんな感じなのでしょうか。

"サービス残業"こと、アンコールは、2回。
HaLさんが、会場からはける際に、自分でコールを開始した気がするけど、きっと気のせい。
最初のアンコールは、小川&生虫の、"M&Mズ"によるMCから、「少女cyborg」、「不幸自慢」、セカンドでは、GUITAROIDコンビである、YuKkE&零のMCから、「自爆妄想」と、懐かしい曲も激しい曲も全部ごちゃ混ぜで、クライマックスならではのカオスっぷりを煽る、煽る。
MCが、やたら小学生レベルの下ネタばかりだったのは、このカオスな空気を作るための演出だったりして。
"終わりよければ~"ではないけれど、最高潮で終わるという、後味の良いライブでした。
見ているだけでも楽しい。
暴れた人は、もっと楽しそう。
かなり後方まで、モッシュゾーンになっていましたよ。

このバンドの楽しさは、なかなか文字に出来ないのだよな。
強いて言うなら、等身大でぶつかる部分と、突き放す部分とのメリハリが上手い。
感覚の共有と、カリスマ性の誇示の両立。
無法地帯のようなステージングをしているのに、オーディエンスは、きちんとそれに先導されているというか。
アクが強いファンが多い印象のバンドでしたが、それを纏め上げ、団結力を生み出している事実は、バンドの設定どおり、宗教と言えなくもない。

演奏中にふざけたりするバンドなので、演奏スキルにライブの良さを見出す人には、向かないのかもしれません。
しかしながら、この不思議な一体感は、誰でも作れるものではないかな、と。
このワンマンがピークということには、バンドが続く限りはなり得なそう。
マイナス人生オーケストラが持つ、強いサブカル要素。
それに惹かれたマイノリティたちの集団化を促して、もっと勢力は拡大するでしょう。

大きなサプライズ発表はありませんでしたが、充実感はたっぷり。
あっという間の2時間半でした。

1.短命ですこ
2.ワールドイズノットマイン
3.High-Technology Sub-Culture
4.現-りある-実クエスト
5.改造人間にて
6.少女、時々 雨。
7.鳥人間たかし

- 劇-

8.UFO(生演奏カヴァー)
9.サラバ重力
10.僕の神様
11.葬送クロール
12.死に損ないのサブカルチャー
13.シュレディンガーの二人
14.突
15.SHOUJO+ISSUE
16.非☆労働者

en1.少女Cyborg
en2.不幸自慢

en3.自爆妄想