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PASSING e.p./JILS
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1. せつないうた
2. 幾つもの夜を通り過ぎて 僕はまだ君の背中を見ている
3. コイビト?/イミテーション
4. 忘れ得ぬ衝動、あの日君はただ立ち尽くしていた。

Vo.幸也、Gt.俊介、Ba.一郎、Dr.秀誉という編成では、初の音源となったJILSのシングル。
「SPIRAL e.p.」との同時リリースでした。

アニメのタイアップが付いていたこともあり、メジャー流通。
「SPIRAL e.p.」は、従来どおりのインディーズ流通だったので、どちらかと言えば、本作にはポップな曲が集められています。

「せつないうた」は、タイトルが表すように、切なさを引き立てた歌モノ。
疾走感のあるリズムに、シンセが絡まるイントロが気持ちよい。
歌メロは全体的にダウナーなのだけれど、ほどよくキャッチーにコーティングされていて、聴きやすいですね。
サビでテンポが落ちてしまうのがもったいないなぁ、と思っていたら、ラストシーンで、メロディはそのままに勢いを増してくれるので、救われたといったところ。

「幾つもの夜を通り過ぎて 僕はまだ君の背中を見ている」は、本作でJILSに復帰した秀誉さんの作曲。
タイトル、長いよ。
こちらも、イントロから疾走感があって、切ない雰囲気で進行していくのだけれど、サビで明るく開けるイメージ。
この頃のJILS内でのブームだったのか、これまたサビでテンポが落ちてしまうので残念です。
この構成、単体では悪くないけど、2曲続くのはどうなんだろう。

キラーチューンは、「コイビト?/イミテーション」。
これは、作詞が幸也ではなく、純三名義。
いつもの詩的な表現ではなく、くだけた口語調の歌詞で、ぶっきらぼうに歌い上げるスタイルは、JILSとしては異色ではあるも、格好良いのではないでしょうか。
とめどなく流れていくメロディに、最初から最後まで突っ走る構成は、王道好きにはたまらない。
正直、歌詞カードを読まないと、何を歌っているのか聞き取れないのですが、やたら耳に残る「だってしょうがないじゃん?」というフレーズだけでも、もう決まったようなものですよね。

ラストの「忘れ得ぬ衝動、あの日君はただ立ち尽くしていた。」は、ピアノを基調としたインスト。
インスト曲は序盤に入れてくることが多かったけれど、最後に配置というのも、なかなか味があります。

本作の内容としては、やはりポップ色が強いこともあり、垢抜けたJILSという印象。
切ない胸の痛みに対する表現の追及は相変わらずで、ポップといっても、なんだかんだ、哀愁は帯びているのもポイントでしょう。
もっとストレートで良かったのに、という部分はいくつかありますが、振り返って聴いてみると、このままメジャーシーンに進出する展開があっても、それなりに馴染んでいたような気がする。

メンバーチェンジ後、再スタートを切るJILSの方向性を探る作品。
音楽性の2面性を、2枚のシングルで示すというアイディアは、面白かったのではないかと。
これまでも、「黒」と「白」、「JIL NOIR」と「JIL BLANCHE」など、対極的な2枚を同時リリースという試みはあったのですが、そういう意味でも、原点回帰、再スタートというメッセージが伝わってくるようで、奥深い。
そのうえで、Vo.幸也さんの存在感により、バンドとしての統一感が出ているあたり、さすが、カリスマだな、と素直に思いますよ。

<過去のJILSに関するレビュー>
LAST【SAD】SONGS
SAD SONGS
MY DEAR