Cure / ZXS | 安眠妨害水族館

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Cure/ZXS

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1.Cutting Blood
2.FATHER
3.cureless
4.BUTTERFLY
5.メビウスブルー
6.運命の標
7.カニバル カーニバル

2000年にリリースされた、ZXSの2ndアルバム。
白衣の衣装が多かった彼らですが、医療系バンドにカテゴライズされるのでしょうか。

デジタルとアナログの融合を狙って、前衛的でマニアックな路線を貫いた1st、「Spiral Code」のインパクトが大きかった彼ら。
その路線を継続しているのかな、と思いきや、本作は予想以上に王道路線でした。
歌メロを意識した楽曲が大半を占め、ストレートさすらある。

序盤の「Cutting Blood」こそ、1stの名残があるカオスで鋭利なデジタルナンバーなのですが、そこからは、バンドサウンドが主張するようになっています。
重さのある「FATHER」で、ダークにザクザク切り込むと、「cureless」では、メロディアスなザ・V系チューンを展開。
こういった普遍的なアプローチは、前作との対比があるため、逆に新鮮な印象ではありますね。

続く「BUTTERFLY」で、デジタルさが戻ってくるのですが、これまたメロディが立っている。
シャウトも織り込まれ、良くも悪くも、ジャリっぽさのあるダークテイスト。
ファルセットの弱さはご愛嬌ではあるけれど、90年代後半のV系フォーマットに、彼ららしいカオスな展開を詰め込んだといったところで、これはこれで、ZXS風の成長と言えるのかもしれません。
「メビウスブルー」は、前作にも収録された楽曲のバージョン違い。
むしろ、こちらがオリジナルなのでしょうか。
リミックス色が強く、聴きにくいだけであった前作版に比べて、音がバンドサウンドになったことで、本来のポテンシャルを発揮できている。
何故リミックスを先に出したのだろう、と疑問に思うほど生まれ変わったな、と。

アクセントとして、ミディアム調の「運命の標」を噛ませて、ラストは「カニバル カーニバル」。
これ、絶対、タイトルから先に決めたでしょ、という楽曲ですが、レア曲がここに入ってくる嬉しさもありました。
ただし、鋭く、激しく、という持ち味は感じられるものの、アルバムの中では攻撃性は抑えられてしまっている印象。
ある種、この「Cure」で貫いた音楽性における締めくくりとしては、ふさわしいクローザーであるのは間違いないのだけれど、ややもったいなかったかな。

ZXSのアルバムであることを念頭に置かなければ、聴きやすく、当時の王道が好きだった人には、耳馴染みの良い作品。
彼ら史上、もっとも大衆性のあるCDとなったのでは。

一方で、癖が弱まってしまったというか、あの強烈だったインパクトは薄れ、ボーカルの未熟さなど、スキル面の甘さが浮き彫りになってしまっている部分があるのも事実。
こういう音楽性は嫌いじゃないだけに、複雑なのだけれど、ZXSには、あの難解で捻くれたサウンドを奏で続けて欲しかったなぁ、と感じてしまったのが本音だったりします。

<過去のZXSに関するレビュー>
Spiral Code