PROJECT DIE KUSSE "FULL MOON" / PLASTICZOOMS | 安眠妨害水族館

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PROJECT DIE KUSSE "FULL MOON" /PLASTICZOOMS
 

1.FULL MOON

PLASTICZOOMSのコンセプトシングルです。
"Die Kusse"をテーマに、同時にリリースされた3枚のシングルの中の1枚。

このバンドの凄いところは、美意識の追及を、音楽以外でも表現している、という点でしょう。
CDの中で、あれこれジャンルの壁を壊そうと躍起になっているアーティストは数多くあれ、同じコンセプトからスタートし、服やアクセサリー、写真に香水・・・
表現できるものなら、なんでもプロデュースしてしまうというスタンスのバンドは、そう多くはない。
コラボレーションならともかく、完全自主制作の範囲内でこれをやっているのだから、驚きです。

本作に収録された「FULL MOON」は、3作中、もっともアーティストのヴィジュアルイメージどおりのナンバー。
とにかく暗く、本格派なゴシックの香り。
聴きやすくキャッチーなサビを用意しておいたり、激しさも加えたりという、現代風に再構築しようとするアプローチは、あまり見られません。
時代に取り残されたようなドロドロとした質感。
これが、なんとも原理主義的に耽美なのですよ。

全体的には、起伏がなく淡々とした構成。
大きな展開もない。
だけど、演奏に感情がこもりだしていくというか、フレーズじたいは変化はしていないはずなのに、徐々に盛り上がっていくから面白いなぁ。
楽曲構成ではなく、サウンドや感情のコントロールだけで、ドラマティックにしてしまったといったところ。
大衆性は皆無だけど、癖になる。
退廃の美。
アーティスティック。

ちなみに、プロジェクト"Die Kusse"には、このCD3部作のほかに、フラグレンスもあるようですね。
洋服さながら、CDにタグがついているのも、なんだかお洒落。
こだわりが、あらゆるところに表現されているのが面白いな。

一方で、1曲入りで1,000円という価格はネックかもしれません。
3枚全部買っても、普通のシングル並みのボリュームで、お値段だけはアルバム級。
どの収録曲も毛色が違いますので、CDを分けた意味もわからなくはないのだけれど、ちょっと興味があるレベルでは、なかなか手が出ない部分は否めないです。
それだけがもったいない。