Edge of Glory / Vent Croix | 安眠妨害水族館

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Edge of Glory/Vent Croix
 

1.Edge of Glory
2.Voice

2011年に活動を開始したヴァンクロアの3rdシングル。
これまでのシングルは、TOWER RECORDS等での限定販売という形態でしたが、本作では、店舗限定を解除。
早い段階からV系専門店以外での流通も開始していることについては、先を見ているバンドという印象があります。

名古屋を拠点に活動している彼らですが、音楽性としては、ラルクのフォロワーという側面が強い。
今時、ラップやデスヴォイスを使わず、メロディ一本で勝負しているスタイルは、若いファンには新鮮で、90年代のファンには、懐かしく好感が持てるといったところでしょうか。

タイトル曲である「Edge of Glory」は、疾走系のメロディアスチューン。
1st、2ndからの流れと比べると、ラルク色よりも、近代の王道に歩み寄ったアプローチを取り入れていて、所々でバンドサウンドと絡み合う電子音が特徴的。
伸びやかで解放感のあるサビは、単純に気持ちが良いですね。
歌詞の面では、「たくさんの光が降り注ぐようにと願う」くだりに、ラルク意識を感じさせるかな。

カップリングの「Voice」は、三拍子のリズムで進行するポップナンバー。
シンセを使って、スケールを出そうとする試みもあって、ヴァンクロア流の歌モノという位置づけなのかな。
細かいところで、Vo.Nancyさんの粗っぽさが気になりはするのだけれど、こういう曲を強引に押し切るというのも、癖になりそうなところではあります。

ラルクのフォロワーバンド、というカテゴライズをすれば、それがシーン全体の主流になることはなくとも、いつの時代も存在していたりはする。
L'Arc~en~Cielというバンドが現存し、伝説を作り続ける限りは、この流れは続いていくのかなと思っています。
そういう意味では、若手の中から、彼らのような音楽を志向するバンドが登場するのも、自然の摂理。

しかしながら、それを踏まえたうえで新鮮だな、と思ったのは、彼らの持っていきたいラルク像が、TETSUYAさんが担当した楽曲に多い、ポップでピースフルな世界観ということでした。
どちらかと言えば、これまでのラルクのフォロワーバンドたちは、kenさんの作曲する、神秘的で、ダークさもあって、所謂"白系"ど真ん中の楽曲にインスピレーションを受けている気がしていた。
そこではなく、あえてTETSUYAさんライクな楽曲に的を絞ってきたというのは、なかなか興味深い。
そういえば、ヴァンクロアのベーシストも、Tetsuさんなんですよね。

更に、ボーカルのhydeさん意識が、それらのバンドに比べて、弱い気がします。
まだスキル不足な面があるのは否めませんが、ハスキーな声を活かして、一般層にも抵抗が少ないような歌唱法を目指しているような。
上記の音楽性とも相まって、ラルクっぽい、という表現は使いつつも、実は、TETSUYAさんのソロに近い雰囲気があると言ったほうが適切なのかもしれません。

まだ、自らの個性を上乗せする部分について、試行錯誤している感はあるけれど、キャリアを鑑みれば、十分に成長が期待できます。
なんだかんだで、メロディが立っているので、聴いていて耳馴染みが良い。
曲も増えてきたようだし、ここらで、少し興味があるという層にアピールするためのアルバム作品が待たれるところ。