-TERRORS- / D'espairsRay | 安眠妨害水族館

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-TERRORS-/D'espairsRay
 

1.ファシズム
2.Carnival
3.ero:de
4.絶望ロマンス
5.murder freaks

D'espairsRayの1stミニアルバム。
過去のシングルを2枚とも完売させ、勢いに乗り出した頃にリリースされた作品です。

振り返ってみると、このアルバムくらいから、ディスパの音楽性が固まり出したのですね。
それまでは、普遍的なダークバンドのひとつだった彼ら。
デモテープやシングルを聴いてみても、思いのほかインパクトが薄いので、驚いてしまうくらい。
確かに動員は増加傾向ではあったものの、はじめから個性的だったわけではありませんでした。

しかしながら、これを聴いたときに、確かな可能性を感じた。
「マニア向け」に狙いを絞っていくという舵の切り方が奏功し、独自の世界観を模索しはじめていたのです。
中途半端にキャッチーにしたり、激しくしたりするのではなく、どこからともなく漂ってくる絶望感に身を任せる。
わかりやすいメロディではない楽曲たちだからこそ、違和感として耳にこびり付き、じわじわと浸食されてしまいました。

攻撃的で激しいのに、浮遊感があってフワフワ、ドロドロとした印象。
激しい楽曲一辺倒で、世界観を幅広く表現するのは、単純に考えてみても難しいのですけれど、本作では、その攻撃性も認めつつ、雰囲気モノに再構築された楽曲たちが、異端な輝きを放っている。
シャウトも多用する暴れ系バンドの側面も持ちながら、ここまで自分の世界観をアピールできるとは。

もっとも、まだまだ粗さが目立ちます。
ゴシック、インダストリアルといった方向を目指していくには、演奏が軽すぎるかな。
「Coll:set」くらいの時期になってくると、これにゴージャスなシンセが加わり、十分な厚みが出てくるのですが、色々なアプローチを模索中だったのでしょう。
シャウトについても、旧時代の発狂シャウトから、現代におけるデスヴォイスへ移行する間の過渡期というイメージ。

なお、このミニアルバムは、2001年8月29日、高田馬場AREAで行われたワンマン、「Sixth TERROR」との連動企画がありました。
CDと、2枚組プラケースが会場で配布され、それと組み合わせることで、完成盤になるとのこと。
配布CDの収録曲は、「『モノクロ』になった最期の日」。
王道のミディアムバラードのようで、ザワザワと心を逆撫でるように不安にさせるシンセの不協和音が、彼ららしい味付けとなっていますね。

インディーズ期のディスパは、あまりシングル作品との相性が良くなかったのかもしれません。
1曲、2曲を聴いただけでは、その世界観を理解することは難しかった。
本作で、凝縮した楽曲群をドロップしたことで、ようやく潜在的だった個性が花開いたといったところです。
初期ディスパの入門編としては、フルアルバムの「Coll:set」、「MIRROR」あたりが良いのだけれど、過程を楽しみたいというマニアの方は、こんなミニアルバムを手に取ってみても面白いのではないでしょうか。

<過去のD'espairsRayに関するレビュー>
Coll:set