宴。 / ADAPTER。 | 安眠妨害水族館

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宴。/ADAPTER。
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1. コンニチワ  
2. ご自由にどうぞ  
3. 楽しんだモン勝ち  
4. 僕が君を忘れた時  
5. 祭り  
6. 僕の声  
7. 推論機構  
8. はじめの一歩

メトロノームのギタリスト、福助。さんによる、ソロ・プロジェクト。
従来からソロ活動は行っていましたが、メトロノームの活動休止を契機に、サブ・プロジェクトから、メイン・プロジェクトへと移行し、活動を本格化させました。

本作は、2009年、活動休止の直後にリリースされたミニアルバム。
その後の活動の基盤とする位置づけもあってか、結果的に、代表曲が多く収録されている印象です。
音楽性としては、メトロノームの延長線上。
ピコピコ・テクノをベースとして、ロック的なアプローチを織り交ぜていくスタイルは、早くも源流的な風格がありますね。

さて、メトロノームとADAPTER。の違いと言えば、コンセプトに含まれている、「和」への意識でしょう。
単に衣装が和服だというだけでなく、サイバーなサウンドとミスマッチとすら思える、歌謡曲的な純和風のメロディが、惜しげもなく注ぎ込まれている。
だからか、サウンド・アプローチには共通項が多く見られるものの、よりポップス・ライクに生まれ変わっており、受け入れやすさ、聴きやすさを纏っているような気がします。

それが中毒性にまで昇華されているのが、「ご自由にどうぞ」、「はじめの一歩」といったキラーチューンたち。
サンプリング音を巧みに使って、歌やメロディよりも、サウンドそのものの衝動性を楽しむスタンスはそのままですが、ところどころ、メロディ部分にフックが出来ており、耳に残る。
エフェクトをかけて、機械的な声に加工する等、決して歌メロを前に押し出すアレンジにはなっていないのにも関わらず、これだけポップに聴こえるから面白い。
要所要所のフレーズも、良い意味で軽く、キャッチーさがあって良いですね。

気になる福助。さんの歌唱力も、そこまで気にならない。
というか、基本的にエフェクトがかけられているので、歌唱力が全体的な世界観に影響を与えないといったほうが正しいか。
よほどピッチを外すとか、声が特徴的すぎるということであれば、話は違うのかもしれませんけれど、この音域であれば、無難に歌えています。
もともと、パフォーマー気質ですし、フロントマンへの転向は、案外ハマっていると言えるかも。

近時では、ベストアルバムが発売されていますので、初心者向けにとなると、それが妥当なのかと思われますが、オリジナル盤で言えば、本作がもっとも入門書的なCDかと。
ベースを担当しているのが、メトロノームの盟友、リウさんですし、「MATSURI」のセルフカバーである「祭り」が収録されているなど、バンド時代からのファンも、注目せずにはいられないところです。
楽しく、切ない、感情豊かな機械的サウンドは、ありそうでなかった不思議な感覚。
敷居の高くないピコピコ・テクノとしては、非常に良質な一枚。