VISAGE / DIE IN CRIES | 安眠妨害水族館

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VISAGE/DIE IN CRIES
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1. Die of Cold
2. FUNERAL PROCESION
3. RAPTURE THING
4. 硝子の肖像
5. 水晶の瞬間   ~to immortality....
6. 仮面の下の表情
7. MELODIES
8. 慈悲の椅子
9. L.O.V.「 」.・・・・
10. INSTEAD OF KISS
11. WEEPING SONG (visage mix)


DIE IN CRIESのメジャー1stアルバム。
実に20年前、1992年の作品です。

ex-D'ERLANGERのVo.KYOさんを中心に結成。
L'Arc~en~CielのDr.yukihiroさんが、YUKIHIRO表記で在籍していたことでも知られています。

全体的に漂っているのは、デカダンスな香り。
メジャーデビューシングルとなった「MELODIES」をはじめとして、キャッチーなナンバーも少なくないものの、それ以上に、ダークな世界観を持っていました。
メロディは立っているのに、どこかダウナー。
崖の上に立って、目を閉じるような背徳感。
そんな絶妙なバランスのもとに成り立っているのです。

その辺りを象徴しているのが、「水晶の瞬間   ~to immortality.... 」でしょうか。
熱っぽく、感情的に歌うKYOさんと、ミスマッチなほどに無機質な演奏。
シリアスなシンセサウンドに、ポップさのあるメロディ。
文字にしてしまうと、明らかに不自然な取り合わせなのですが、実際に聴いてみると、これがハマっているから不思議なのです。
じわじわと浸食されるような、渋い大人の格好良さがある。

表情豊かなKYOさんのボーカルのイメージが先行すると、もしかしたら、リミックスアルバムのような印象を受けるのかもしれません。
それだけ、他のバンドでは見られない、独特な音作り、アレンジをしていたのかと。
ボーカルは感傷的なのに、ギターはキャッチーなフレーズを弾いていたり、淡白なドラムフレーズと逆行するように、ベースラインは鮮やかだったり・・・
どうやってこれをまとめきったのだろうと、溜息が漏れてしまう。
気が遠くなるほどの緻密さ、繊細さ。

音楽的に特筆すべきは、やはりYUKIHIROさんのドラム。
的確に、寸分の狂いもなく叩くフレーズには、まるでマシーンのようなのだけれど、決して打ち込みでは出せない味わいも持ち合わせている。
ドラムトラックだけを取り出してみても、聴き応えがあるのではなかろうかと思えるくらいの手数の多さ。
単にリズムキープをするだけには非ず、ときにぶっ飛んだ前衛的な音を混ぜてくるのも面白い。
乾いた音に好き嫌いは分かれそうですが、重低音だけがドラマーの役割ではないのだよ、と訴えかけるようなパワーを持っているのですよ。

前に出る面々は、テクニックよりも個性で勝負するタイプ。
リズムが安定していることで、フロントマンが好き放題に散らかすことができていたのでしょう。
完璧ではない、少し隙があるのが、かえって魅力的に見えたりもして、正しい意味でバンドだからこその化学反応が起きていたのだよな、と。

ちなみに、インディーズ時代のビデオシングルから、「WEEPING SONG」のリミックスバージョン、「仮面の下の表情」のリテイクバージョンも、それぞれ収録。
アルバムに気を遣うことなく、相変わらずの退廃的なアレンジに仕上げてしまうのは、さすがの一言。
CD越しにもピリピリと漂う緊張感を堪能してほしい1枚です。