罪と罰 / Dear L’Novel

罪と罰/Dear L’Novel

￥3,570

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1. prologue~罪と罰~
2. departure
3. LOST(album version)
4. Concerto of hatred
5. masquerade
6. ロザリオ(album version)
7. 愛人
8. Scene of sadness
9. fairy parade
10. Winter lover(album version)
11. phalaris
12. solitude
13. The last recollection
14. Moon Flower

「切なる小説世界」をコンセプトに活動中のDear L’Novel。
5枚のシングルからの楽曲を含む1stフルアルバム。
実に14曲を収録した大ボリュームです。

さて、これだけは言わざるを得ないのが、とにかく漂うLAREINEの香り。
声質、歌い癖、楽曲の構成やアレンジに至るまで、細部に渡って、在りし日のLAREINEを再現しているようなサウンドアプローチ。
それもそのはず、Vo.kazuhoさんは、LAREINEのローディーだった経歴があるようで。
そのうえ、EMIRUさんがプロデュースを担当しているとあっては、この様式美バリバリの耽美テイストも納得ですね。

ポップでロマンティックなナンバー、ナルシスティックな語り、優雅に疾走するメタルチューンなど、ありとあらゆる表現で、貴族たちのロマンスのような世界観が描かれます。
まぁ、音使いや、演出技法など、オリジナルとは言い難い部分も多いのですが、いまどき、恥ずかしげもなく耽美系を貫けることは大事。
やはり、ヴィジュアル系。
このくらい演出過剰で、ナルシストなバンドがあってほしいものです。

楽曲も粒揃い。
どの曲も、しっかりと作り込まれたメロディアスさがあって、とてもキャッチー。
ダークな楽曲にしても、激しい楽曲にしても、耳馴染みの良い歌メロが乗ることで、親しみやすさを増しています。
歌詞は恋愛の内容が多いのに、アレンジが耽美的なので、非現実感も強い。
どちらに振れるかで印象が変わってしまうところなのですが、このメロディセンスのおかげで、リスナーとの絶妙な距離感を保っているのかと。

ロマンス色の強い「departure」、ダークでスリリングな「Concerto of hatred」、ポップなメロディで押すなら、「Winter lover」か。
「solitude」の王道感も捨てがたく、耳に残るナンバーが多いのは、ポイントが高いところです。
切なさを際立たせるシンセの使い方もツボ。

課題を言うならば、全体のバランス。
1曲1曲は聴き入ってしまうのだけれど、アルバムとしての繋ぎが悪く、ぎこちない。
特に、スタートが微妙かなぁ。
語りが入った、荘厳なSEを持ってきて、いよいよ本編に！というタイミングで、甘いポップなナンバーは、はしごを外された気分。
このSEから繋げるなら、スピード感のあるシンフォニック系の曲を持ってきてほしかった。

また、14曲も収録してくれるのは、もちろんありがたいのだけれど、全部が全部、本気のキラーチューンを持ってきている印象で、遊ぶ余裕がない感じですかね。
トータルとしての完成形を浮かべつつ、アクセント的な楽曲を挟んだりしていけるようになれば、目指している小説世界に近づけるのではないでしょうか。
この手の音楽性で、小説的と言えば、本家LAREINEの「フィエルテの海と共に消ゆ」が代表作ですが、あそこまでのストーリー性、展開のドラマティックさは、残念ながら見られません。

とはいえ、これに個性が色付けされていったら、面白くなりそうなバンド。
粗削りな部分も、詰め込みすぎな部分もありますが、多少背伸びをしてでも、やりたいことをやりきったという衝動性は、インディーズシーンならではの醍醐味です。
翼の生えた全裸のボーカルさんという、インパクトがありすぎるジャケットが目印。
あまり音楽性とシンクロしていないのが気がかりではありますが、ロマンティックな耽美系に飢えている方は、このアートワークに気後れせずに聴いてもらいたい一枚。