夢想曲 / 朱鷺 | 安眠妨害水族館

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夢想曲/朱鷺
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1. 夜明けの空に描く色彩は....

2. something like a lovesong

3. 眠れる森

4. 七色の蝶々

5. SCRUB....!!!


群馬を拠点に活動中の朱鷺による、2011年にリリースされた1stミニアルバム。

Gt&Vo、Ba、Drの3ピース編成です。


よく、emmureeのフォロワーと例えられますが、確かに、親和性が高い。

幻想的な側面と、デカダンな側面を兼ね備えており、抑揚の少ない穏やかに漂うようなダークさが、90年代ライクな暗黒系好きにはたまらない音楽を展開しています。


ミディアムナンバー、「夜明けの空に描く色彩は....」でしっとりと幕を開く本作。

スウィング系の3拍子リズムが癖になりますね。

ジャジーでアダルティーな雰囲気を出していながらも、不協和音が混じって、静かにじわじわと狂っていくところに、退廃的な美がある。

序盤に勢いのある楽曲を持ってこないあたり、音楽性への自信も感じます。


「something like a lovesong」は、バンド感を強める一方、シンセも主張するダウナーロック。

emmreeに加えて、ラルクっぽさも感じるでしょうか。

中盤に配置された「眠れる森」も、穏やかな白系サウンド。

長めにとったイントロで、どっぷりと深く潜らせるようなアプローチを試みています。

目を閉じて聴くと、すっと体の中に入っていくような幻想的なイメージが強いのですが、実は演奏面でキメや、変拍子が多用されていて、気が抜けない1曲。


「七色の蝶々」は、インスト曲。

このタイミングでインストを持ってくるのも珍しいですね。

シリアスなベースに、鍵盤系のシンセが重なり、緊迫感を引き立てる。

3ピースという編成で、ボーカルが余らないこともあって、メイン曲の位置付けのインストを作れるのでしょうね。

これは、強みとも言える。

徐々に盛り上がっていくギターのフレーズや、ドラムのタム回しが格好良いです。


締めの「SCRUB....!!!」は、本作唯一のアップテンポのナンバー。

エフェクトをかけたボーカルスタイルで、激しさを演出しています。

このエフェクトの籠り具合が絶妙で、激しさが、外に向くのではなく、内向的な印象を与えるのが面白い。

若干、浮いている部分はありますが、インストを挟んだことで、そのギャップを緩和。

グラスが割れる音等、古き良きヴィジュアル系のモチーフを盛り込んでいるあたりも、古典へのリスペクトを感じます。


駆け出し中の地方バンドとしては、なかなか期待が持てるミニアルバムだと思います。

やりたい方向性ははっきりしていて、カラーが明確。

一般受けするジャンルではないものの、求めてくれる層の中では、普遍性のある音楽を奏でている。


まずはスキルアップが課題ですかね。

表現力が追い付いていない部分があり、雰囲気に飲まれてしまう場面も。

世界観をがっちり構築したうえで、いかに各パートの見せ場も増やすことができるか。

単なる先人バンドのフォロワーに終わらない個性が出てくれば、もっと化けていきそうです。