1.DistortiON .030.419.
2.b/w ~Retro
3.御免~Supreme obscure art
4.winterDreams
5.MaDamn
新年1発目に、まったく新年っぽくないバンドのレビューをしてみよう。
とはいえ、ちょっぴりスペシャル感を出したいという想いもあって、このCDをご紹介いたします。
PSYGAIの1stミニアルバム、「災害蝶」。
これ、リリースされた2005年~2006年くらいに、V系関連のブログで話題になったりしたので、視聴をしたことがある人もいるかもしれませんが、現物を持っている人は少ないでしょう。
なぜなら、このバンド、ブラジルのバンドだから。
まだ、今ほど海外進出が一般的ではなかった時代に、こんなコテコテな見た目のバンドが地球の裏側にいるなんて!と衝撃が走りました。
しかも、歌詞は日本語が中心。驚きです。
僕も、ブログに記事を書かせていただいたんですが、比較的初期の段階で採りあげたこともあってか、メンバーさんから喜びのメールを頂戴いたしまして。
その際に、「また紹介してください!」と送られてきたのが、この作品。
5年くらい経ってしまいましたが、今、約束を果たしたいと思います。
簡単に音楽性を紹介すると、コテコテのジャリバン。
よくもまぁ、ここまで研究したな!と思わせる作り込み感には、とても面白く聴くことができます。
「DistortiON .030.419.」は、導入的なインスト。
女声での「せーの!」という掛け声で入るあたり、拍子外れではあるのですが、バンドサウンドになってしまえば、一気に90年代のコテコテダーク仕様。
「俺たちは、お前たちの頭に、ディストーションしていく!」と語りが入ったと思えば、ヴィジュアル系特有のうめき声とでも言いましょうか、地を這うように声が掠れていって、次の曲へ。
構成の懐かしさに目を細めつつも、インストをしっかり作り込んでいるあたりは、水増しのSEで曲数を稼いでいた当時の日本のV系商法とは違って、良心的でしたね。
続く、「b/w ~Retro」は、そのタイトルのとおり、レトロさが漂う演奏が展開されます。
なんで、ブラジル人が、和風レトロな音楽を把握しているのだろう。
サビになると、ダーク・メロディアスになって疾走しだします。
後半に行くにつれて、徐々に盛り上がっていく構成で、昂揚感がある。
特に、ラスト部分が秀逸。
ファルセットになるかならないか、ギリギリのキーで苦しそうに歌いながら、最後はシャウト風に勢いで誤魔化す当時のジャリバンの常套手段。
そんなことを言いつつ、こういうノリって好きなのです。
「御免~Supreme obscure art」は、典型的な暴れ曲。
洋楽テイストも強く、ハードでシャウトの応酬といったこのナンバーは、外タレだからこその迫力があって、もっともポテンシャルが活かされていると言ってもいいのかもしれません。
一方で、シャウトの裏に、語りを重ねていたり、ブツ切りのように突然終わってしまう刹那的な構成であったり、工夫も見せている。
外国語でまくしたてた後の、語りの一言、「御免」で終わるインパクトは絶大です。
「winterDreams」は、歌モノのメロディアスチューン。
ボーカルは、この手の曲を歌いこなすには、歌唱力に課題ありで、やや聞き苦しさは出てしまうものの、バランスとして、この辺でシングル的な楽曲が来ることは間違ってはいませんね。
ラストの「MaDamn」は、ピアノとストリングスを使った雰囲気作りのイントロから、白系の透明感のあるバンドサウンドに入っていきます。
これまでのコテコテテイストから、初期ラルク的な展開や音使いを見せて、一辺倒でないことにも感心。
徐々に広がりを見せる楽曲なので、ラストに持ってくるにはふさわしく、セオリー通りといったところ。
演奏も歌も、かなり粗いですし、曲そのものが個性的というわけではない。
正直、語りもカタコトです。
それでも、日本語で綴られた歌詞は、とてもヴィジュアル系的で、常用語でもない耽美的なフレーズを、よくぞこれほどきちんと並べたなと感動すら覚える。
ここまでされたら、日本のヴィジュアル系愛好家としては、自分のことのように嬉しく思うよ。
インパクトは、とにかく大きい。
このPSYGAI、なんだかんだで、10周年を迎えたようです。
ボーカルがスキンヘッドになっていたり、風貌は変わっていますが、最近の曲を視聴してみたら、ラウド、メタル、ミクスチャーなどの要素も取り込まれていて、あぁ、時代に合わせて、ヴィジュアル系とともに進化しているのだな、と。
DIR EN GREYに影響を受けていると考えれば、大いに納得。
演奏も、だいぶ上手くなっているようですが、良くも悪くも、洋楽的になったというか、コテコテ感は薄れてしまっていたので、個人的には、この音源の頃の彼らが魅力的に映りますけどね。
一度ライブを見てみたいけれど、さすがにそれは叶うあてがありません。