Draw / 9GOATS BLACK OUT | 安眠妨害水族館

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Draw/9GOATS BLACK OUT
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1. 甘美な死骸

2. Lilith

3. 軽蔑

4.a light remix

5.float remix


9GOATS BLACK OUTの3rdシングル。

会場・通販盤には、流通盤に収録された3曲に加え、過去のナンバーのリミックス2曲が収録されています。

「対」がコンセプトになっているようで、ジャケットも、会場・通販盤、流通盤がシンメトリーになっている、相変わらずのデザイン性の高さ。


内容については、これまでの作品に比べて、幾分聴きやすくなった印象。

決して、垢抜けたキャッチーさがあるわけではないのだけれど、水面を漂うような独特の作風には、癒しの要素すら感じます。


そう、このバンドの音楽を聴くと、澄んでいて、流動的な「水」のイメージを強く持つ。

本作についても、歌詞を読まずにインスピレーションだけで聴いたところ、「航海」を連想しました。

これまでは水面下を漂っていた彼らが、前に進みやすくするためにポップさという船を作って、ゆらゆらと揺れているような。


「甘美な死骸」は、空間的な広がりをイメージさせるミディアムテンポの美しいナンバー。

星空の下、ナイトクルーズをしているような、穏やかさを持っています。

ラルクのミディアムバラードような雰囲気がありますかね。

途中で転調したり、すんなり進まない展開の工夫により、マニアックでダークな世界観は残しつつも、ポップなメロディを重ねて、「9GOATS流のシングル曲」に仕上がったといったところ。

ファルセットを使ったサビでの浮遊感が印象的です。


2曲目の「Lilith」は、同じようなミディアムテンポの雰囲気モノという同種のアプローチを持ってきながらも、いよいよ夜も深まり、闇に包まれていくような、「甘美な死骸」とは、正反対のイメージを与えています。

この辺り、コンセプトである「対」という言葉が、上手くハマっている。

これまた、構成は複雑で、途中で激しくなったり、一転して広がりを見せたりと、動と静が一曲の中で前触れなく切り替わるのが面白いですね。


シングルとしては締めの1曲となる「軽蔑」は、ストレートなギターロック。

ryoさんの鋭く尖った声が重なってくると、9GOATSだな、と理解できるものの、雰囲気、世界観よりも、メロディそのものの衝動性を意識しているようで、意外性がありました。

疾走感が気持ち良い。

こういう曲がアクセントとして入ってくると、バランスも良いですね。


リミックスの2曲は、これを聴くために買え!というものではないかな。

デジタルさを強め、聴きにくさが増しているので、メインの3曲とは別と考えたほうが良いでしょう。

手間や資金負担を惜しまずに購入してくれたファンへのおまけ的な位置付けといったところか。

流れを意識して曲を聴くタイプの人だったら、流通盤のほうが後味は良いのかもしれません。

もっとも、丁寧に作り込まれたリミックスであることは間違いないので、この辺はお好みで。

クオリティとしては、かなり高いです。


とにかく、世界観の作り込みは、さすがの一言。

音楽性がマニアックなので、一般受けはしないコア層向けのバンドではありますが、その中でも、良い具合に導入にもってこいな作品に仕上がっているのではないかと。


一度聴けば覚えられるようなキャッチーさはないものの、従来の作品に比べて、マイルドさが出ていて、玄人でなくとも追い付けそうな、ほどよい難解さがニクいです。

じっくり聴きたい、浸りたい。

キャリアも長くはなってきましたが、今もなお進化、深化していくサウンドアプローチには、まだまだ成長を求めずにはいられません。


<過去の9GOATS BLACK OUTに関するレビュー>

devils in bedside