D+SECT / Moi dix Mois | 安眠妨害水族館

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D+SECT/Moi dix Mois
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1. In Paradisum

2. The Seventh Veil

3. Witchcraft

4. The SECT

5. Divine Place

6. Pendulum

7. The Pact of Silence

8. Ange~D side holy wings~

9. Agnus Dai

10. Sanctum Regnum

11. Dead Scape

12. Dies Irae13. Baptisma


ボーカルにArt CubeのZこと、Sethさんを迎えて、バンドとしても熟成されてきたMoi dix Mois。

2010年の年末にリリースされたフルアルバムです。


Sethさん、mana様については、ずっと耽美系のフィールドでやってきている方々なので、違和感はないのですが、その他のメンバーが、改めて見てみると、意外性がありますね。

ex-GRAND ZEROのKさん、ex-PlatinA ForestのSugiyaさん、ex-BlueのHayatoさんと、所謂ソフトヴィジュアル系だったメンバーばかり。

こういう面々が、一緒になってブラックメタルにも通じる耽美系バンドをやっているのだから、面白いです。


本作は、3年ぶりにリリースされた作品ということで、期待も不安もあったのが本音。

2007年に同様の編成で発売された「DIXANADU」が、スピード感があまり重視されていなかったこともあって、その傾向を突き詰めるのか、原点回帰の方向に進むのか、想像ができませんでしたもので。

結果から言えば、世界観においては、進化、深化という部分は、当然にして見受けられるものの、音楽面では後者の側面が強く、非常に安定感のある濃い作品に仕上がっています。


出だし、中間、ラストと、3ヶ所にSEを入れて、宗教的、ゴシック的な雰囲気を強調するとことも含めて、例えるならば、MALICE MIZER時代の「薔薇の聖堂」を、Moi dix Moisの音楽に昇華させたような世界観。

パイプオルガン、チェンバロが、バンドサウンドと上手く絡まって、荘厳さを演出すると、女声ソプラノのコーラスが効果的に神秘的に染め上げる。

1stアルバムの楽曲の再録版である「Ange ~D side holy wings~」が、もっとも象徴的でしょう。

耽美なメタルナンバーに、深みが確実に加わってきていることがわかる。

原点回帰のような作品でありながら、最高傑作との評判が高いのは、このような、今までやってきたことからの上乗せが感じられ、集大成といった言葉がふさわしいアルバムに仕上がっているからに違いない。


基本的に、サウンドを色に例えるなら、「漆黒」。

中世の洋館、黒衣を纏って、蝋燭に火を灯して・・・という邪教的な風景がぴったりなのですが、意外性があったのが、「Agnus Dei」の太陽を感じさせる白さ。

フレンチポップ路線の楽曲は、ソロユニットになってからは控えめになっていたこともあり、マリス時代からのファンにとっては懐かしく、嬉しいアレンジなのではないかと。

キャッチーな楽曲は少ないアルバム構成の中で、アクセントとしてポップ寄りのナンバーが入ってくるのも、箸休めの意味でも有効でしょう。

実質的なラストに、疾走クラシカルとでも言いましょうか、キラーチューンである「Dies Irae」を持ってきたも、ニクい。


全体的に、これまでのアレンジに比べて、ギターが主張していますね。

ただ単に雰囲気に馴染むため、またはテクニックを見せつけるためだけでなく、メロディを弾いたり、あえて轟音を響かせてみたり、プラスαの味付けを担っているのが、バンド形態を継続してきたユニットとしての、成長の証。

シンセに押し負けない、絶妙のパワーバランスになったと言っても過言ではありません。

音質面の改善も、この音楽性であれば不可欠であっただけに、嬉しい限り。


キャリアが長いバンド、メンバーというと、なかなかとっつきにくい人もいるかもしれませんが、最新作が教科書的であり、最高傑作というのは、導入のきっかけにするには、ベストのタイミング。

低音の効いたオペラ的な声や、メタルサウンドに苦手意識がなければ、この「D+SECT」、おひとついかがでしょうか。


<過去のMoi dix Moisに関するレビュー>

Dix infernal