- in the direction of sunrise and night light(DVD付)/deadman
- ¥3,465
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1. star baby
2. rip roll soil
3. raison d'etre
4. when the saints go marching in
5. asthenia bullet stain
6. additional cause for sorrow
7. follow the night light
8. fragile sandy
9. dim quiet
10 .grand ground
11. this day.this rain.
タイトルが長すぎて、バンド名まで表題に掲載できませんでした。
deadmanの2ndフルアルバムです。
当時のメンバーは、Vo.眞呼、Gt.aie、Ba.kazuya、Dr.Tokiという布陣。
ゆきの在籍時を推す人も多いですが、後期は後期で、じっとり沈む深みのある世界観が心地良い。
本作は、実質的にラストアルバムとなった作品で、後に2ndプレス盤も販売されます。
初っ端から、aieさんがメインボーカルを張る「star baby」という意外性にびっくり。
刹那的で勢いのあるロックチューンに仕上がっており、眞呼さんにはハマらなそうな楽曲も、こうやってdeadmanのものにしてしまうアイディアは素晴らしいですね。
続く、「rip roll soil」も、同じくライブ感を意識した楽曲ながらも、タイプ的にはまったく違っているから面白い。
こちらは、小気味よく、サーカスのようにコロコロ変わる表情に引き込まれるミディアムナンバー。
驚きと安心、早くもリスナーの心を掻き回していて、導入にして、すっかりdeadmanの作るシアトリカルな世界に誘われています。
全体的に、ミディアム~スローな曲が中心となっている印象。
「dim quiet」のようなハードな楽曲もあって、バランスは保たれていますが、基本的には、雰囲気に酔いしれる作品でしょうか。
まるで、モノクロ映画のよう。
色味はないのですけれど、ストーリーがあって、登場人物の感情があって、歌詞に描かれた内容以外のバックボーンや、未来像まで想像できる。
aieさんの作曲センスだけでなく、眞呼さんの頭一つ抜けた表現技法が音に重なるからこそ、deadmanは成立していたのだと、この作品では、はっきりと示されています。
ともすれば、洋楽ライクな楽曲が多いイメージの彼らですが、本作では、日本語とマッチするメロディを意識的に持ってきているのが特徴ですね。
最初の「star baby」だけが例外であり、これがあるからこそ、本編の10曲の異質さ、重さ、深さが際立つ仕掛け。
キャッチーさはあまりないので、万人受けするものではないというのは重々承知であるも、世界観を極めればここまで立体的な映像を頭に浮かべることができるのか、という圧倒的な楽曲群は、ひとりでも多くのヴィジュアルフリークスに届いてほしいなと。
細かいところでは、スケールアウトが絶妙です。
コードと合わない歌メロを乗せることによって気持ち悪さを残す手法が、とにかく効いている。
下手に多用すると、単に音を外しているだけと思われてしまうだけに、上級者向けのアレンジではありますが、彼らの場合は、そのちょっとした違和感にさえも心地よさがあるのですよね。
初期は、もっとあざとく、この手法を取り入れていたイメージですが、自然な流れで使われるようになっていて、とてもお洒落な演出となっていました。
ラストは、鬱々とした雰囲気を持ちながらも、ドラマティックな「this day.this rain.」で幕を閉じる。
目立つことは少ないのですが、この曲でのベースとドラムはたまらないな。
リズムキープに集中力が必要な前半の構成を完璧にこなし、徐々に激情的に広がっていく感情の渦を、微妙なリズムパターンの切り替えで表現。
歌メロがワンフレーズの繰り返しであっても、リズム隊に耳を傾けて聴いていれば、刻々とフレーズが変わっていくのがわかって、ますます味わい深くなっていくのです。
ラストシーンはテンポアップし、衝動的に終了するところは、余韻すら世界観に組み込んでしまったようで、聴き終わってからの無音でさえ、彼らの作品の一部。
活動休止後、伝説化しているdeadman。
クオリティの高い演奏、独特なパフォーマンス、特出した世界観・・・
最近のシーンが、音楽は体を動かして楽しむもの、という方向に傾いている中で、視覚と聴覚だけを研ぎ澄ませてステージを見つめることが美徳であるバンドの存在は重要。
本来、そういうバンドこそ、ヴィジュアル系の真髄であるべきとも考えるので、deadmanが現代における世界観タイプのバンドの道標になっているのも、これを聴いたら納得でしょう。
<過去のdeadmanに関するレビュー>