ゆりかご ~Holy Mother~ / Secilia Luna | 安眠妨害水族館

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ゆりかご ~Holy Mother~ / Secilia Luna
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1.ゆりかご ~Holy Mother~


台湾でデビューを果たすなど、着実に知名度を上げつつあるSecilia Luna。

彼らにとって初の試みとなった配信限定シングルです。


自らを、天使教徒と称し、白く耽美な楽曲を得意とする彼らですが、最近は、流行もあって、メタル色が強い曲構成だったり、デスヴォイスを使ったアクセントだったり、垢抜けてきた印象。

しかしながら、本作は、前身バンドとなるSeciliaルナの楽曲「ゆりかご」を、リメイクしたものということで、原点的な王道感が漂う作品に仕上がっています。


上モノとして、鍵盤の音が煌びやかに楽曲を彩る耽美さは、今も昔も変わらないところなんですが、軽めにツタツタと疾走するドラムや、クドいくらいにナルシスティックなボーカルラインは、懐かしい感覚。

シンフォニックテイストを織り交ぜたり、聖歌隊のような女性コーラスを加えたり、荘厳な雰囲気にしようとするアプローチも見られる一方、勢いを殺さず、メロディアスさを活かそうとするコテコテな展開がベースになっていて、聴きやすさを生んでいる。

同系統のバンドだと、教会的なゴシックサウンド、もしくはシンフォニックメタルに近づくのが、世界観を構築するという意味では正解なのかもしれませんが、このバンドは、世界観は嗜む程度、あとはキャッチーで聴きやすく、という割り切りをしているようで、うまく隙間を突いているようにも思いますね。


このシーンでは珍しい女性ベースのRioさんが作曲を担当。

確かに、アレンジやメロディには、ハードさよりも繊細さが強調されているようで、この辺りは、女性だからこその強み、個性を活かしたといったところでしょうね。

・・・と思いきや、ライブのコーラスでは、男まさりなデスヴォイスも堪能できます。

この二面性も、ある意味、女性らしさと見るべきか。


残念なのは、シンセにギターが完全に負けてしまっていること。

ツインギターの存在感があまりなく、音作りや音圧といった面でも、もの足りない気がします。

Versaillesレベルまでとは言わないけれど、この音楽性で、ギターの主張が強まれば、なかなか面白くなりそうなんですけれど。


シーンとしては、若干、耽美メタルの流行も、陰りを見せ始めてきたかな。

これから、淘汰されていく時期になっていくと思われますが、彼らにとっては、今が正念場。

武器は多いバンドなので、個性を出し切ってほしいですね。