1.東京スカイツリー
アイクルの、O-EASTのワンマンで配布される予定だったシングルを紹介します。
「予定だった」というのは、東日本大震災の影響で、ワンマンが中止になってしまったため。
チケットのコピーを送付すると、CDが送られてくるという仕組みになっていたようです。
内容としては、アイクルらしさが詰まった「東京スカイツリー」1曲を収録。
話題のトピックを、うまく曲に織り込んでドロップするあたり、お洒落系の真髄といった気概を感じます。
イントロこそ重苦しいのですが、歌が入ると、ボーカルが主体になり、緊張感が走る。
ミディアムテンポで、手数は多くないのですが、タイミング、コンビネーションが重要な演奏となっており、今までの音を重ねてキラキラさせる手法と比べると、若干異質。
Bメロまでは、スリリングなR&Rの様相で進行していきます。
ところが、サビになると一転したアイクル節。
色鮮やかな同期のサウンドと、キャッチーな歌メロが爽やかにポップさを煽る。
今までの重々しさは何だったのか、と思わされるほど、中性的なVo.えみるさんの声が軽やかに抜けていきます。
この親しみやすいメロディもさることながら、ガラっと雰囲気を変えてしまう展開の強引さこそが、もっとも彼ららしいと言えるでしょう。
後半は、シャウトが強めに構成されており、激しさを見せるような終わりになっているのも、面白いところ。
シャウトが、少し抑えめにミキシングされているのか、あまり前に押し出されてはおらず、コーラス的な雰囲気で挿入されているのが、ちょっともったいないかもしれません。
展開の異質さ、不思議さを出すには、もっと表現のスイッチが切り替わる部分を、強く見せても良いとは思うのですけれど。
そういう意味では、必要以上にコンパクトにまとまってしまった感はありますでしょうか。
配布音源という意識で制作されたものとしては、十分に練られた作品ですね。
現段階での集大成として、実験的な作品よりも、王道よりの作品を持ってきたのも、うなずけるところ。
個人的に、このバンドは、もっと右斜め上を目指してほしいという期待もあったので、楽曲としては想像の範囲内だったな、というのが本音だったりはするのですが、無難に平均以上であることは間違いありません。
本作は、Amazon等でも、有料ではありますが配信されていますので、音楽を聴くだけであれば、お手軽に購入することも可能。
収益は義捐金となるそうですから、募金のつもりで聴いてみるのもよいかと思います。
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