1.Paradox
惜しまれつつも他界したMoranのZillさんの弟が在籍していることでも、注目を浴びているジミニークリケット。
本作は、会場限定の1stデモCD。
挨拶代わり、という位置づけのシングルではありますが、それにしても、捻くれている。
ひとつのパートを切り取って聴いてみても、特にマニアックすぎるようなことはしていないのだけれど、全体を通して聴いてみると、やはり捻くれているように聴こえるのです。
わかりやすく転調しているわけでも、変拍子を使っているわけでも、譜割が独特だったりするわけでもないのですけれど。
よくよく聞いてみると、その独特さの正体がわかってくる。
普通、J-POPは、4小節とか、8小節とか、4の倍数ごとに構成をまとめるものが大半なのですが、この曲のサビは、10小節で構成されている。
サビを繰り返せば繰り返すほど、頭の中で思い描いた曲の進み方と、ズレていくため、メロディ自体に突飛なフレーズがなくても、不思議な感覚を生み出せているのかと。
メロディを、あえて抑揚をつけない、淡々と流れるようなものにしているのも、そのズレを自然に生じさせるための工夫だとしたら、なかなかポテンシャルのあるバンドだと思います。
この1曲だけでの判断は難しいところはありますけれど、最近の流れをまったく汲まないわけでもなく、それでいてオリジナリティを出しているので、期待できるのではないでしょうかね。
ボーカルに、やや癖があり、あまりすっきり歌ってくれないのが気になりますが、経験を積んで表情やメリハリが出せるようになってくれば。
演奏面も、曲構成以外の工夫は特には見られず、渋みにプラスして、自ら主張する場面というのも欲しい。
全体的な底上げは求められますかね。
しかしながら、正式音源がリリース間近ですし、そちらが楽しみであることに違いはありません。