ROENTGEN / HYDE | 安眠妨害水族館

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ROENTGEN(限定)/hyde
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1. UNEXPECTED

2. WHITE SONG

3. EVERGREEN

4. OASIS

5. A DROP OF COLOUR

6. SHALLOW SLEEP

7. NEW DAYS DAWN

8. ANGEL'S TALE

9. THE CAPE OF STORMS

10. SECRET LETTERS


言わずと知れたL'Arc~en~Cielのボーカリスト、HYDEのソロとしては1stとなるフルアルバム。

白系を代表するバンドであったラルクが、ポップ期を経て、洋楽ライクな音楽性になりつつあった2000年初頭、メンバーがそれぞれソロ活動を開始するということで、話題性が高まっていました。


そんな中、最も注目が集まるHYDEさんが提示してきたのが、この「ROENTGEN」。

とにかく驚きました。

どの曲も、冷たい石畳の街に、雪が降り注ぐような真っ白な世界観。

ラルクの原点回帰とも言えるような、白系ど真ん中の音楽性を、アコースティック風のアプローチから、見事に再構築しています。


HYDEさんと言えば、地声とファルセットをうまく絡めた、エロチシズムが漂う伸びやかな高音が特徴。

しかし、この作品では、どちらかと言えば、低音域が強調された楽曲が多いような気がします。

淡々と、ウィスパーボイスで語りかけるような、優しいタッチの歌い方。

バンドという枠組みを、あえて離れたからこそ可能となった表現の数々は、繊細であり、美しく響く。

ソロ活動という行為には賛否両論の大激論が付きものですが、これを見せつけられたら、納得せずにはいられないといったところですね。


洋楽からの影響も大いに見られ、Aメロ、Bメロ、サビといった典型的な構成からの脱却、英詞が多用されている歌詞など、かなり本格的に意識しているよう。

後日、全編を英詞にしたバージョンで、同作品を再リリースしていたりもします。

これをこのまま、何かの映画のサウンドトラックにできるのではないか、と思えるくらいの完成度がある。

生のストリングスを使った壮大で幻想的なアレンジは、少ない音数を無限の広がりに変える力があり、センチメンタルな心模様と、異国の街並みを、頭の中のキャンバスにありありと浮かび上がらせるのです。


全編、静かで、ゆったりとした楽曲ばかり。

徹底された世界観へのこだわりが見られます。

そういった意味では、爆発的にヒットしてからのラルクしか知らない人にとっては、退屈なアルバムなのかもしれません。

一般層に媚びを売るようなキャッチーさ、華やかさはなく、V系層が好みそうなハードさも、マニアックさもない。

ただし、この突き詰められた真っ白な音楽は、決して、分かる人にだけ分かれば良いよ、といった開き直りではなく、V系史上、いや、J-POP史上稀に見るヒーリング・ミュージックなのです。


ちなみに、HYDEさんの、その後のソロ活動については、バンドサウンドゴリゴリのアメリカンR&R的なハードさや、VAMPSとしての活動の起点となるようなラフさ、ノリやすさというのが重視されており、本作とはだいぶかけ離れた作風となっています。

それはそれで良いのですけれど、HYDEさんのソロであれば、間違いなく、この「ROENTGEN」が個性際立つ名盤だと思っています。