灼熱の蒼 / Deshabillz | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

灼熱の蒼/Deshabillz
¥3,059
Amazon.co.jp


1. 天の滅亡~Laissez faire~

2. Carry

3. 水の唄声

4. 解放記念日

5. グロテスク

6. 跡

7. 影絵の中で・・・

8. He clever~能無シ達へ~

9. 椿色の微笑み

10. 毒の兆し

11. 夢遊の湖

12. 届かぬ祈り


そろそろ、年末年始のお祭りムードを断ち切らねばいけないところ。

もっとも、新年っぽくないバンドのレビューをしようと思いまして、選んだのがDeshabillz。

デザビエと読みます。本作は、1997年に発売されたベストアルバム。


このバンドの特徴は、なんといっても、Vo.SHUNさんの描くグロテスクな歌詞。

ちょっと耽美に着飾ったV系によくあるグロさではなく、まるで、精神異常者、もしくは猟奇殺人者の手記といったリアリティのある描写は、当時のリスナーを魅了しました。

曲の冒頭に、その世界観を煽る語りを挿入するスタイルも、独特でしたね。


音楽的には、様式美的なギターのフレーズに、雰囲気作りのシンセを重ねていくような、当時では主流のアプローチ。

疾走感のある楽曲も多く、個性的なバンドでありながら、王道好きにも受け入れられ、男性ファンも多かった印象です。

特に、「影絵の中で・・・」から、「椿色の微笑み」までのメロディアスに突っ走る展開はたまらない。


ただし、大きな壁となるのが、SHUNさんの歌唱力と、メロディのバリエーションの少なさ。

コード進行をなぞるだけといった、お経のような抑揚のないボーカルラインと、滑舌が悪く、うろ覚えでカラオケを歌っているかのような気持ちの悪い歌い方は、マンネリ感を生みだしてしまいますし、狙いとは別のところで、聴きにくい要素になっている。

圧倒的な世界観によって、当時のシーンでは知らない人はいないほどの人気バンドだったにも関わらず、現代において、伝説のバンドになり損ねているのは、その辺が大いに影響しているのではないかと。


もっとも、その手法こそが、このバンドの世界観であるグロテスクさとマッチしているという意見も多い。

実際、歌が上手かったら、ここまで確固たる個性を持っていたかと言えば、そんなことはないのでしょう。

これがハマる、心に闇を持った人にだけ共感されればいい。

そんな突き放した感覚も、ある種の中毒性になっていた。

インパクトはとにかく大きかったので、未だにコアなファンの間では、語り草なのですよね。


彼らのベストアルバムとしては、2008年の復活時にKISAKIプロデュースで発表した「伯牙、琴を破る」もあるのですが、本作の強みとしては、既存の曲を再録し、未発表曲を追加してのリリースであったこと。

上記の歌唱力の問題は、オリジナル盤よりも改善されていますので、かなり聴きやすくなっています。

入門編としては、おススメの一枚。


デザビエの不幸は、ベースの美歪さんが事故死してしまい、望まぬ形で活動休止になってしまったのですよね。

10年の歳月を経て復活こそしましたが、メインコンポーザーだったSHI-NOさんではなく、UNDER CODE代表のKISAKIさんが作曲を担当しているため、音質、歌唱力等は向上しているものの、音楽性としては別モノです。

SHUNさんさえいれば、デザビエになってしまうあたりは、さすがカリスマといったところなのでしょうけれど。