WALK / Eins:Vier | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

Walk/Eins:Vier
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1.Not saved yet

2.L.E.S.S.O.N

3.Dear Song~なつかしの歌~(Album Version)

4.Stranger said to me like this

5.街の灯

6.Exact clock

7.Staying and Walking

8.君がすて去ろうとも

9.Bravo

10.I feel that she will come


1990年代を代表するバンドのひとつ、アインスフィア。

LUNA SEA、SHAZNA、ラクリマ、ピエロ、プラなどが所属した90年代後半のSWEET HEARTにおいては、やや地味な存在ではありましたが、その音楽は存在感が抜群でした。


本作は、メジャー1stフルアルバム。

デビュー後に発売したシングル、「Dear Song」、「君がすて去ろうとも」もしっかり収録。

この時期は、まだ派手めな衣装ではありますが、後期はだいぶカジュアルな格好になっていましたね。


このバンドの特徴としては、ヴィジュアル系の王道からは一歩外した、UKロックのような気だるくゆるく、だけどキャッチーさ、ポップさのあるサウンド。

疾走感のあるコテコテナンバーはほぼ皆無で、それまでにあった「激しくてこそのヴィジュアル系」という概念を打ち崩し、ジャンルの幅を広げた功労者的な存在です。

ポップと言えど、事務所の同僚、SHAZNAやラクリマのようなアマアマさはなく、UKロックと言えど、プラのような病的さもない、硬派なR&Rを貫きつつ、オリジナリティを確立していました。

ダークな曲も、ポップな曲も、全体的にミディアムテンポの曲が多いというのも、この頃のシーンでは異色でしたね。


シンプルな音使いは、今の時代では面白味に欠けるといってしまえばそれまでなのですが、このセンスは侮れない。

同期をバンバン使って出すゴージャスさがなくたって、こんなに空間を表現するような音の広がりを出せるものか。

空に向かって放たれるかのような、聴覚からの空間演出。

初期ラルクのような、白系の要素も感じられる幻想的なギターのフレーズが、とにかく格好良いのです。


これも時代なのだけれど、Vo.Hirofumiさんの声質は、いわゆるヴィジュ声ではなく、ハスキーでハッキリと歌うようなイメージ。

V系バンドしか聴かないよっていう若いリスナーには、それが強いアクとして聴こえてしまう部分もあるかもしれません。

しかしながら、スキルとしての歌唱力は申し分ない。

安定感を保ちながら、ときに感情的に、ときに淡々と、曲調に合わせて歌い分けるしたたかさがあり、一度聴いたら忘れられない印象的な声を持った人だと思います。


1曲目の「Not saved yet」の壮大さから、いきなりノックアウトされてしまった作品。

いまいちメジャーではブレイクしきれなかった感があり、たくさんデビューして散っていったソフビバンドたちのひとつとして埋もれてしまいがちですが、活動歴もそこそこ長く、白系+UKロックというヴィジュアル系の新たな方向性を示した点は、無視しちゃいけないところ。

声で拒否反応さえなければ、ときどき振り返ってみてほしいバンドです。