- カッコーの巣の上で/カッコー
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1. カッコーの巣の上で
2. N氏は美しく腐ることにした
3. Y談デモクラシー -60年代編-
【 】改め、カッコーでは初の正式音源となる1stシングル。
コバヤシシャラク、サクライアヲ、ササブチヒロシというメンバーの豪華さから、品薄状態が続いている作品です。
メトロノーム、cal≠gari、plastic treeと、それぞれ色の違ったバンドに在籍していたメンバーが、どのような音楽的な融合を果たすのか、というのが注目されるところでした。
本作は、全曲が青さんの作詞・作曲ということもあり、それぞれの個性を融合させたいうよりも、むしろ青さんらしさを非常に濃い密度で純化させたような作品。
フォーク+パンクをベースにして、味わい深い歌詞、ノスタルジックなメロディ、薄味だけれど印象的なアレンジ・・・
最近では、cali≠gariでさえ封印する傾向があったサクライアヲ節を、これでもかというほど堪能できます。
「カッコーの巣の上で」では、イントロから印象的なギターのリフを用いたキラーチューン。
青さんの新バンド、という意識を強く持っていた人にとっては、「これを待っていた!」と言わんばかりの要素が詰まっているのではないでしょうか。
皮肉交じりなんだけれど、温かく、優しさが感じられる。
泣かせるようなセリフは一言もないんだけれど、心にじんわり響いてくるような歌詞と、それを殺さない懐かしさのあるストレートな音楽。
ひとつひとつのフレーズに、音を薄くアレンジしていることの意味を感じ取れます。
続く、「N氏は美しく腐ることにした」は、タイトルのインパクトが強烈なブルーステイストな楽曲。
夜の歓楽街を想起させるジャジーなアレンジは、大人びた、ベテランならではの落ち着きがある。
「~が嫌い!」と応酬するサビは、激しく畳みかけたくなるところなんですが、ミディアムテンポでじわじわと盛り上がるような構成にしたところは、彼らならではのアイディア。
写楽さんの淡々と歌うフレーズに、青さんのシャウトが重なって、カオスなラストスパートに至るのが面白いですね。
突然終わるような余韻のつけかたも、マル。
最後の「Y談デモクラシー -60年代編-」は、【 】として会場限定販売されたグッズセットに含まれていたデモ音源のリアレンジ版。
60年代編という言葉に込められた意味が何なのかは気になるところですが、音のバランスがデモ版のほうが良かったような(笑)
渇いたドラムがやたら目立っていて、ギターが埋もれ気味なのですが、あえて聴きづらく構成したのでしょうかね。
曲自体は、レビュー済なので、下記のリンク先をご参照いただきたいのですが(過去のカッコー~って、なんか洒落っぽくてアレだな・・・)、反体制っぽいアイロニカルな歌詞は、今後のこのバンドのコアになっていく曲であることを予感させます。
とにかく、青さんの曲が好きな人ならマストアイテムな1枚に仕上がっているのではないかと。
そういう意味では、後期のcali≠gariというよりは、LAB. THE BASEMENTに近い雰囲気があるのかな。
当然といえば当然なのですが、青さんよりも、写楽さんのボーカルの方が安定していることもあり、歌モノならカッコーのクオリティが高くて良いと思います。
LAB. THE BASEMENTも、活動を完全に終わらせたわけではないと思うので、どういう住み分け方をしていくのかにも要フォローですね。
逆に、メトやプラが好きで注目していた人には、どのように映ったのかも気になるところです。
本作においては、ピコピコ要素や、雰囲気モノの楽曲は一切なし。
写楽さんもコンポーザーになり得る人材なので、今後、バリエーションが広がっていくことも十分考えられ、将来に向けた期待感も大きいバンドといったところでしょう。
個人的には、青さんっぽい曲を裏コンセプトにして活動しているヴィデオグラマァに対してのアンチテーゼも含まれているのではないかと勘繰ったり。
早くも、今後の活動が待たれるところです。
<過去のカッコー(【 】)に関するレビュー>