NIWLUN / Guniw Tools | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

NIWLUN/Guniw Tools
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1. 頭上の石

2. It’s usual

3. 未練は思い上がり

4. 真心求める自己愛者

5. モラリストの事

6. 腐肉にとっての愛

7. Either Wise or Fool

8. か細さを武器に

9. 傘さす事の歓び

10. 優しさは暖かな支配者

11. スタイリッシュパンピーの青年期

12. Fade story


グニュウツールの1stアルバム。1996年の発売。

後にリマスタリングのうえ再発されていますが、そちらは2曲追加の14曲が収録されています。


アングラ、マニアック、独特で難解・・・

そのようなイメージがつきまとうバンドですが、具体的に、どこがとっつきづらいのか、というと答えにくいのがグニュウツール。

転調や変拍子があるわけでもないし、ボーカルやギターが不協和音を奏でているわけでもない。

曲構成も、そんなに凝っているわけではないシンプルなものが多いし、案外、メロディアスさもある。

でも、なんだか不思議でとらえどころがない世界観があるのです。

ヴィジュアル系という分野がまだ洗練されていなかった時代に、こんなバンドが、メジャーに進出していたっていうのも、今となっては面白いですね。


このアルバムは、まだグニュウが3人編成で活動していたころ。

ボーカルに、ギター2人というリズム隊を置かない布陣は、独創的な表現にはマッチしていたのかもしれません。

いわゆる、ヴィジュアル系のツインギターとは一線を画した、2人ともリードギターを弾くような手法は斬新で、ときには宗教的な浮遊感を、ときにはゴージャスな煌びやかさを演出していました。

ギターの一人、JAKEさんが脱退してからは、メロディ要素が薄まり、インダストリアルな方向にも進んで行きましたが、このあたりでは、まだまだギターが立っているので、導入としては聴きやすいかもしれませんね。


さて、この「NIWLUN」の聴きどころは、なんといっても、1曲1曲の中に感じる異国感。

チベット的な民族音楽から、北欧のイメージのある爽やかなアコースティックポップス、クラシカルなフレンチテイストもあれば、アラビアンや、スパニッシュ風の味付けまである。

グニュウにしては珍しく、歌謡曲風の楽曲や、スタンダードなアメリカンロック、UKロックまであったりして、このアルバム1枚で、音楽における世界一周を果たせるといっても過言ではありません。

言ってしまえば、統一感はないんですけれど、それにしたって、この柔軟さは凄い。

Vo.古川ともさんの声色ひとつをとってみても、同じ人が歌っているとは思えないほど、コロコロと表現方法が変わって、その曲を最大限に活かす工夫がされている。


音楽だけでなく、映像作品等、その他のジャンルの創作活動においてまで、独特のこだわり、世界観を持つ古川さん。

彼だからこその多角的かつ独創的な視野は、歌詞世界にも表れています。

グニュウが他を寄せ付けない理由は、音楽においてキャッチーさや流行を求めていないというのも、もちろんあるのあだと思いますが、このヘンテコな、でも深い意味がありそうな肌触りにこそあるのでしょう。


なんだかんだで、万人受けするタイプのバンドではありませんが、暗黒、ダークな方向ではなく、アングラ感を示すアプローチは唯一無二でした。

毒を食らわば皿まで。

せっかくヴィジュアル系にどっぷり浸かるんだったら、興味本位ででも一度は聴いてみたいところですよね。

新譜派なら、追加収録のあるリマスタリング盤が低価格で再発されていますし、中古派でしたら、通常盤がかなり安く売っています。

王道好きな人にはおススメしませんが、気になった方は、とりあえず手にとってみてはいかがでしょうか。