- スケベボウイ/バロック
- ¥1,260
- Amazon.co.jp
1. 唄
2. しゃがれブギー
3. 曖昧ドラスチックナンバー
ドラムのメンバー交代を経て発売された、バロックの1stシングル。
型にはまらない自由なスタイル、シャッフルリズムのジャジーな曲や、ミクスチャー的な構成など、現代のお洒落系バンドの原型を作ったバンドです。
後にギターの圭さんが、シューゲイザー的なアレンジに方向性を見出し、メジャーデビュー前後の時期から、よりマニアックな方向に進んでいきますが、この頃は、お洒落系なバロックの全盛期。
教科書通りの作品となっているため、このCDがバロックでは一番好き、という人も多いでしょうね。
このバンドのコンポーザーは、シャッフルリズムのウネウネナンバーを得意とする晃、ミクスチャー、ヒップホップなど、新しい試みに積極的にチャレンジする圭の両ギタリストなのですが、本作では、それに加えて、ベースの万作さんが作曲した「曖昧ドラスチックナンバー」も収録され、バラエティに富んだ内容になっています。
「唄」は、その後のバロックの音楽性をうっすら示唆するポップでラフなミクスチャーチューン。
最近でこそ、この手の曲がヴィジュアル系ミュージックとして受け入れられていますが、お洒落系という概念がなかった当時、動員を急激に増やしているコテコテバンドが、こんなヴィジュアル系要素の薄い曲をシングルとして切ってきたというのが衝撃的でした。
圭さんのノーボーダーの音楽性が、ヴィジュアル系の歴史を変えた瞬間。
やや、その時期にJ-POP界隈で流行っているアーティストのヒット曲を、とりあえず詰め込んでみた的な印象もあり、影響が大きく音楽に表れてしまうのは若さ故なんでしょうけれど。
「しゃがれブギー」は、晃さん作曲の、王道シャッフルナンバー。
こまっしゃくれた歌い回しと、ジャジーなリズムは、初期バロックの代名詞といったところ。
当時は、こんな曲をどのバンドもこぞって作ったもので、今聴いてみると懐かしさを感じますね。
サビに、もうちょっとインパクトがあれば、より面白かったのですが、渋く無難に仕上がっているのはさすが。
ラスト、万作作曲の「曖昧ドラスチックナンバー」は、バロックにありそうでなかった、強引な曲。
2つの曲をひとつにしたような、転調、リズムチェンジの違和感を、むしろ味にしている独特な構成です。
その複雑な展開は、聴く人を選ぶところもあるのでしょうけれど、そのマニアックさを補って余りある歌メロのキャッチーさが光っている。
王道のメロディアスなフレーズと、疾走感。それが大サビで切なく炸裂。
転調があることによって生じる、気持ち良く曲が進行しないストレス、フラストレーション・・・
これを逆手にとったような、我慢したあとに来るサビの流れるようなメロディの気持ちよさといったら、たまりません。
それに尽きる1曲。
3曲とも色が違っていて、でも、どれもバロックらしさが詰まっています。
この中の、どの方向に伸ばしていっても売れただろうに、あえて、また違う方向性を模索するバンドの姿勢も、攻撃的だったと言えるでしょう。
音楽性が変わるバンドって、大抵は、売れ線、流行路線に走ってしまう傾向がありますが、バロックは、変わった方向性がますます玄人向けだったというね。
バロックと、baroque。
どちらが好きだったかと言われると返答に困るのですが、こういう初期の音楽性にハマったからこそ、このバンドに注目したのは間違いないわけで。
時代を語るうえでは、外せないアイテムかと思われます。
<過去のバロック(baroque)に関するレビュー>