コンピレーションアルバム「原点」を修正してみよう | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

原点/オムニバス
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1. gravity / LUNA SEA

2. 唄 / BUCK-TICK

3. HERO / Zi÷KiLL

4. Melty Love / SHAZNA

5. 未来航路 / La'cryma Christi

6. ENDLESS LOVE / D-SHADE

7. SkY / Lastier

8. ラストレター / PIERROT

9. スライド. / Plastic Tree

10. 白い闇 / ROUAGE

11. meet again / Laputa

12. コングラッチェ / CASCADE

13. ロマンス / PENICILLIN

14. 1/3の純情な感情 / SIAM SHADE

15. 月下の夜想曲 / MALICE MIZER



最近、V系界隈のテキストサイトを賑わせているオムニバスアルバム「原点」。

煽り文句は、以下のとおり(HMV ONLINEより抜粋)。


~ここからみんな始まった~

「昭和と平成をつなぐコンピレーションアルバム」90年代一大ブームメントとなったビジュアル系バンド。

そして、今再燃している第2次ビジュアル系バンドブーム。彼らの系譜をたどり、彼らの原点となったバンド・名曲を収録したコンピレーションアルバムの登場です!


まぁ、何をそんなに賑わせているのかといえば、見てわかるとおりの突っ込みどころの多さ。


・ 今、第2次ヴィジュアル系バンドブームなんて再燃しているの?

・ っていうか、今、まだ第2次なの?

・ だとしても、ここを原点としてしまっていいの?


っていうあたりなのかな、と思うのですが、「じゃあ、自分の思う『原点』を作ってしまおうぜ!」っていう流れが、色々なblogなどで起こっています。


ピンブラブログ~pinkblood blog~ さんだと、2次ブームを90年代後半のブレイクアウト世代と置いて、その時代に限定したベストを選定しているので納得感がありますし、空飛ヴ肉屋 さんでは、ヴィジュアル系そもそもの原点となるジャパメタ、ポジパン世代のバンドで選んでいるから、勉強になります。

この辺の拘りたるや、ヴィジュヲタ気質の真髄を見た!と、個人的には、たいへん共感と興奮を覚えるわけですが、ついついやりたくなってしまう僕も結局、ヴィジュヲタなわけですよ。

後乗りサクサクではありますが、僕なりの「原点」を作ってみようではありませんか。


上記のblogさんと同じような基準で選定しても、多分、似たようなアルバムにしかならないので、「ネオ・ヴィジュアル系バンドのルーツとなっている」ことを基準に、世代はバラバラに作ってみようと思います。

事務所やレコード会社の都合など考えなくてもいいのが、脳内コンピの素晴らしいところですね。



そんなわけで、安眠妨害水族館的、「原点」はこちら。



1.Dejavu / LUNA SEA 「ヴィジュアル系の原点」


ヴィジュアル系そのものの原点というと、Xとか、DEAD ENDとか、ジャパメタからヴィジュアル系に進化していく過程のバンドを選ぶべきなのかもしれませんが、最近のバンドにとっての「ヴィジュアル系の王道」像は、LUNA SEAなのかな、と思います。

メタルではなく、パンクではなく、今のスタイルのヴィジュアル系の音楽性を最初に作ったのは、このバンド。

1曲目にLUNA SEAを置いたのは、本家「原点」と同様ですが、選曲は王道曲に差し替えです。



2.親愛なるDEATH MASK / 黒夢 「コテビの原点」


多くのバンドのルーツとなっているという意味では、間接的な影響も含めれば外すことのできない黒夢。

中でも、ダーク、シャウト、ツタツタ・・・といった、現代のダークバンドにもそのまま受け継がれているコテコテさは、まさにこのバンドが原点になっているといっても過言ではありません。

時期によって音楽性がブレるバンドではありますので、上記の理由で選んだことを勘案すれば、この曲が妥当かな、と。



3.残 / Dir en grey 「ラウド系の原点」


このバンド自体の原点は、上記の黒夢にあるのだと思いますが、それでも入れざるをいないほどの影響力。

更に、そのフォロワーでもあるガゼットにインスパイアされたバンドも多いことを考えれば、Dirを原点と考えても問題はないはず。

特に、このバンドからシーンに広がったアプローチとしては、デスヴォイスを多用したラウド系の音楽。

それまでは発狂系のシャウトが中心だったヴィジュアル系が、デスヴォに染まりました。

初期Dirのフォロワーも多い中、選曲するのは難しいのですが、「残-ZAN-」の再録バージョンが、まさに発狂系の楽曲を、デスヴォ調に置き換えた好事例なのではないかと思いますので、こちらを選びました。



4.リストカッター / 蜉蝣 「エログロの原点」


蜉蝣を原点とするバンドも多いですよね。

音楽的には、その他の原点バンドの良いとこどり的な部分はありますが、それをつなぎ合わせたような強引な構成は、現在のミクスチャーバンドに通じるところもあり、間違いなく、ヴィジュアル系の新しい扉を開いたバンド。

ヴィジュアル系といえば耽美で、またはデカダンで・・・といった世界観がまだ根強く残っていたシーンに、「変態的」という概念を持ち込んだ功績はとても大きく、フィクションをノンフィクションにしてしまったような衝撃がありました。

選曲は、普通に初期の代表曲を。



5.奈落の底 / Laputa 「名古屋系の原点」


名古屋系の定義をどこに置くか、という議論もありますが、名古屋系という言葉が意識しはじめられたのが、このバンドの登場くらいではなかろうか。

黒夢の影響を受けつつも、マニアックで男受けする音楽という基本指針を構築したのはLaputa。

玄人好みの音楽性は、今聴いても格好良い。

原点という選定基準があるので、どうしても初期の作品が選ばれることが多くなってしまいますが、個人的な好みもあり、「奈落の底」を選ばせていただきました。



6.九日 / ムック 「昭和歌謡系の原点」


昭和歌謡系の原点としてムックを置くか、レトロックまで枠を広げて、メリーを置くか迷ったのですが、ここはムックを採用。

理由としては、メリーはそこまでフォロワーが生まれていないかな、と。

選曲は「九日」しかありえませんでした。

この曲の登場以降、一気に昭和歌謡をベースにした未練節、和メロナンバーに特化したバンドが増えた。

今となっては音楽性が違うことが明白な、ホタルや初期シドが「ムックっぽい・・・」と言われていたことから、昭和歌謡のイメージはムックとともにあったと言えるでしょう。



7.イロコイ / バロック 「お洒落系の原点」


ここは、正直迷ったところ。

バロック自体がネオ・ヴィジュなんじゃないか、という話にもなりそうなので。

しかしながら、バロック以前にお洒落系のベースとなりうるバンドがヴィジュアル系に見当たらない以上、既に文化として定着したお洒落系の原点は、彼らであるのは明白。

バロックを収録しなければ、椎名林檎を収録しなければいけなくなりますからね(笑)

ここも、初期の原始的なお洒落系ナンバーを選ぶ必要があるかと思いますので、「イロコイ」あたりが妥当かな、と。



8.プチ天変地異 / メトロノーム 「ピコピコ系の原点」


もっと前から、長く細くデジタル音楽をやっていたバンドはありますが、ジャンルとして認められたのは、メトロノームの登場が大きい。

ピコピコ系という言葉が定着するまでは、彼らもテクノ・パンク等と言われていましたからね。

それまでにあったデジタルミュージックとも違い、ファミコンから流れてくるような安っぽいデジタルさを追求したのが、ヴィジュアル系のシーンでは定着してしまったといったところ。

テクノ系は、まだまだ開拓の余地も多い分野なので、メトロノームが今後更に評価されていくかどうかは、フォロワー達にかかっていると言えるでしょうか。



9.Melty Love / SHAZNA 「女形の原点」


音楽性の話ではないのではありますが、SHAZNAが出てこなければ、ヴィジュアル系バンドを組もうと思わなかったバンドマンも多いはず。

女形という、ヴィジュアル系特有の文化に市民権を与えた功績は、もっと評価されてもいいのでは。

なんとなく、一発屋扱いの世間の目や、その後のIZAMのタレント活動の必死さもあって、SHAZNAが好きだったというのが恥ずかしいという傾向がありますが、収録されるのは妥当ですよね。

メガマソの涼平も、IZAMに影響を受けて女形をはじめたことを公言してますし、間接的な影響も含めればシーンの文化を作ったバンド。

選曲は、まぁ、これが間違いないでしょう。



10.絶望の丘 / Plastic Tree 「文学的歌詞の原点」


ヤンキー文化から派生したところもあり、演奏力や勢い、ノリが重視されていた90年代のヴィジュアル系のシーン。

歌詞は大半が中二病的な歌詞や、ラブソングが中心のポーズにしか過ぎないものでしたが、そこに一石を投じたのがプラでした。

曲から切り離して、歌詞だけを見ても心が揺らされる、ドキドキする、切なくなる、不安になる・・・

そんな文学的世界観を持ち込んだ功績は、ネオ・ヴィジュアル系のシーンの中でも、衰えを見せずに活動している彼らを見ていればおわかりいただけるかと。

当然ながら、歌詞が良いバンドが、プラ以前にいなかったわけではありませんが、現在のフォロワーの多さも踏まえれば、収録は必然。

ところで、本家「原点」での収録曲が「スライド.」なのは何でなんだろう。



11.弱虫毛虫 / cali≠gari 「密室系の原点」


カリガリ自体は、正直、密室系らしい密室系ではないと思うのですが、言葉の由来はカリガリのレーベル「密室ノイロヲゼ」から来ているわけで、ここでカリガリを入れないわけにはいきません。

石井さんになってからは、アングラ感が薄れてしまった印象なので、その前の「弱虫毛虫」を選んでみました。

こういう、ネガティブで淡々としていて、内なる狂気を秘めた曲というのは、現代の密室系、暗黒系に通じる部分があると思いますしね。



12.DUNE / L'Arc~en~Ciel 「白系の原点」


コテビという言葉が一般化したため、黒系という単語は使われなくなりましたが、白系に代わる言葉が未だにありませんね。

もし、今のバンドに「白系っぽい」的なことを言いたいのであれば、「初期ラルクっぽい」と言われているような気がします。

そういう意味では、初期ラルクはやはり原点なのです。

本人がヴィジュアル系じゃないと言い張ろうと、原点は原点なのです。



13.Adolf / PIERROT 「手フリの原点」


フリをやっていたバンドも、ピエロ以外にもいたのかとは思いますが、あまりにも有名な「Adolf」のフリは、多くのバンドに継承されています。

思えば、メディアミックスや、戦略的な商法など、様々なアイディアと文化を持ち込んだバンドでもありますね。

バンドとしても、独自の音楽性に対するフォロワーは多く、このコンセプトのコンピで収録されないとなれば、憤慨するピエラーさんも多いでしょう。



14.月下の夜想曲 / MALICE MIZER 「耽美系の原点」


ネオ・ヴィジュアル系シーンでブームになっている「耽美メタル」ですが、マリスがあそこまでのインパクトを残さなければ、ここまで洗練されてはいなかったでしょう。

マリス自体にメタル要素はほとんどありませんが、mana様はメタル畑も通ってますので、ひっくるめて耽美系の原点とさせていただきました。

KAMIJOのいるVersaillesも、マリスの影響を受けていることは明らかですしね。

名曲も多いですが、シーンに残したインパクトとしては、選曲はこれ以外にありえないでしょうな。



15.月光花 / Janne Da Arc 「ヴィジュアル系ブーム再燃の原点」


そもそも、本家「原点」が制作されたきっかけとしては、今、ヴィジュアル系のシーンに活気が戻ってきたということがあるわけで。

立役者としてはガゼットやシドなのだとしても、再燃の原点は、ジャンヌのブレイクなのではないかな、と思います。

長い間、一般チャートを賑わすヴィジュアル系バンドが登場しないまま、停滞していたシーンにおいて、ブレイクアウト世代の生き残り、ジャンヌがあのタイミングでブレイクしたことで、他のレコード会社やマネジメント事務所が、ビジネスモデルとしてのヴィジュアル系ミュージックに再注目したわけですよね。

バンドとしての影響力も大きく、文句なしのトリでしょう。



そんなわけで、記事内で紹介させていただいたブロガーさんとは違った視点で、「原点」を再考してみました。

ラクリマや、ペニシリンは、時代を作ったバンドであることは間違いないのですが、今のバンドに直接的な影響を与えているか、というと、そうでもないと思うのですよね。

もちろん、影響力が皆無というつもりはありませんが、王道バンドの中で、当時、一番人気のあった人たち、というイメージ。

今回は、カリスマ、先駆者という点から、選考をしてみました。

もっと掘り下げれば、本当の先駆者もいるのかもしれませんが、ある程度セールス面・知名度も意識する必要があるので、ミーハー感が出てしまうのはご了承いただきたいところ。


結構本気で考えたから、3時間かかったよ、この記事書くのに!(笑)

でも、たまにはこういう記事も、書く方としては面白いのです。自己満足、万歳。