1. (SE)
2. 眠りの果実(Re:RecordingVersion)
3. aile
4. 世界で一番愛してる
後に、ぐりむを結成するVo.タケル、Gt.ゆいな、みるふぃねを結成するBa.鈴育~Link~の3人組、Me'Syu Dear。
結成当初は、ギタリストがもう一人在籍していましたが、この作品をリリースする前に脱退してしまっています。
本作は、彼らの最初で最後のCD作品。
彼らの特徴は、3人がそれぞれ、自ら作詞・作曲した曲を持ち寄るスタイルだったため、楽曲によって異なった個性が特出していること。
タケルさんの曲は、切なくメロディアス、ゆいなさんの曲は、可愛くポップ、鈴育さんの曲は、ダークでハードと、それぞれの色がはっきりと出ているのですよ。
その意味では、統一感のないバラバラな音楽性とも言えるのですが、これをMe'Syu Dearというフィルターを通すことによって、1本の芯が通ってしまうから不思議でした。
SEから繋がる「眠りの果実」は、デモテープに収録されていた楽曲の再録バージョン。
鈴育さんが作詞・作曲を担当したダークチューンで、タケルさんの歌声の艶やかさが強調されている印象です。
演奏はツタツタと攻めていく一方、楽器隊に埋もれずに伸びやかさを見せつけるので、歌モノが好きなリスナーにとっても刺さるものがあるのでは。
Bメロを、あえてメロディで埋めずに、"歌わない"ことでヴォーカリストの存在感を主張する手法は、地味ながら面白いな、と。
「aile」は、タケルさんらしい、ストレートなセツナロック。
甘く伸びやかな声質が最も活かされていて、さすが、自身のツボを分かっているといったところ。
ひとつひとつのフレーズよりも、全体的な流れが重視されていて、結果としてサビのインパクトは薄まった感はありますが、まとまりがあって聴きやすいですね。
淡々としたメロディ運びの中で、徐々に盛り上がっていく演奏が感情の高まりを表現しているようで、儚さの表現方法として、実に効果的でした。
エンドロール的な位置づけとなる「世界で一番愛してる」は、ゆいなさんがコンポーズ。
単純明快な、賑やかポップス。
2000年代初頭のお洒落系バンドの王道の、少しメルヘンで、可愛くポップなメロディの中に、ほんのり切なさを混ぜてくる切り口。
ゆいなさんの楽曲を、タケルさんが歌うというコンビネーションは、その後のぐりむの音楽性にも近いですね。
これが、さっき「眠りの果実」を演奏していたバンドかと思うと、本当に音楽性の振り幅に驚かされるのですが、このCDの曲順で聴くと、やはり違和感はないのです。
ドラムが打ち込みなので、かなり無茶な激しいドラムフレーズを叩けていたりもするのですが、時代的な環境要因により、ポコポコと軽く、やや悪目立ちしてしまうところはあるでしょう。
ただし、それ以上にタケルさんの存在感が大きかった。
ダークな曲も、ポップな曲も、自分の色に変えてアウトプットするセンスが物凄い。
この協調性のない曲たちに、統一感を与えることができていた、大きな要素だったのは間違いありません。
残した音源が少なすぎるのが惜しまれる限り。
後にお洒落系シーンを支えるバンドの前日譚的な1枚。