- Kreis 1999/V.A
- ¥2,310
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現在kαinをはじめ、様々なプロジェクトで活動を続けている幸也さんが代表を務めていたレーベル、Kreisのオムニバスアルバム。
当時所属していたバンドは、JILS、Ray、Pleurの3バンドだけ、しかもRayは解散が決定していた時期でしたので、幸也さんの過去音源を収録する等、なんとかミニアルバムの形に持っていったといったところでしょうか。
1. Still(いまでも...)/JILS
名義はJILSですが、打ち込みのインストです。
「夢の途中」のヒーリングバージョンといったところ。
オムニバス作品には珍しい、次の曲を意識した導入的な位置づけですね。
2. 夢の途中/JILS
秀誉作曲の、白系の王道ナンバー。
ポップ感のあるアップテンポな構成ながら、叙情的に歌い上げる幸也節が重なり、清々しくも切ない一曲に仕上がっています。
シンセ・ストリングスのアクセントも良い味を出している。
あまり凝った展開はありませんが、コンパクトにまとまった名曲だと思います。
このCD発売時には、秀誉さんは既に脱退してしまっていたので、写真には初期メンバー3人のみ。
作曲者不在となったこともあり、他のCDで再録をされることもなく、本作でしか聴くことのできないレアトラックになってしまいました。
カラオケにも入っていたりするので、もっと多くの人に聴いてもらいたいところではあるのですけれど。
他の曲も聴いてみたい!と思わせる余韻の残し方は、オムニバスに収録される曲としては最高の出来でしょう。
3. escape/Ray
過去のオムニバスに収録されたのみの楽曲を再録。
亮さんの荒々しいボーカルが印象的な、ラフでノリのよいアッパーチューン。
シンプルな構成ではありますが、ギターについてはマニアックなフレーズも多く、勢いに任せて聴いてみるのもよし、細かいところに注目して聴き込んでみるのもよし、の作品です。
現在ソロで活躍中の善徳さんが所属していたことでも知られるバンドですが、らしい遊び心はこの曲にも見受けられますね。
個人的には、Rayは切ない沁みるナンバーが持ち味だと思っているので、こういうファン以外の人も聴くようなCDの選曲としては、正直、微妙な気もします。
ちょっと、彼らの中では邪道な曲ではありますよね。
だからこそ、コンセプト作品には入れにくかった、ということもあるのでしょうが、ラフなR&Rバンドという誤ったイメージで捉えられてしまわないかが心配。
もちろん、これはこれでレベルは高いのですが。
4. MINUET/pleur
見た目も、音楽性も、他の収録バンドとは明らかに浮いているプリュール。
この曲も、このCDでしか聴くことのできない幻の一曲ですね。
ツインベースという低音の強みを活かしつつ、ここまでポップで可愛い曲に仕上げることができるんだ、というインパクトが凄い。
Vo.-F-の下手ウマボーカルも、最初は抵抗があるかもしれませんが、キャッチーなメロディも相まって、一度聴いたら耳に焼きついて離れない中毒性がある。
ギターが足りない分は、上モノでカバー。この辺はクライスバンドらしいです。
この作品で、強烈なインパクトを与えたにも関わらず、短命だったのが悔やまれるバンド。
ポップなバンドは、演奏は表面的・・・と侮ることなかれ、ドラムは女の子とは思えないタイトなリズムを刻んでいるし、何より、サイドベースと、リードベースが存在する異色なツインベース編成は、演奏そのものがおもちゃ箱のよう。
メルヘンポップな世界観を、ある意味、体現していた演奏だったというのは言い過ぎでしょうか。
5. Cloudy(DEMO)/D≒SIRE
幸也さんが在籍していたD≒SIREのナンバーのデモバージョンが、なぜか収録。
トラック埋めなのかはわかりませんが、名曲が多いバンドではありますので、聴いたことがなかった人には嬉しいボーナストラックですね。
綺麗な旋律のメロディなのですが、幸也さんのあえて感情を押し殺すような淡々とした歌い方が、ダークな雰囲気を作り出している一曲。
派手な曲ではないですが、渋さが味わい深い。
他の収録曲に比べ、音質がレベルダウンしてしまうのが残念かな。
テープ音源からのリマスタリングなのか、無理やりボリュームを上げてミックスしたような、サラサラ音が気になります・・・
爽やかで切ないJILSに対して、ダウナーで内面的な激しさを表現しようとするD≒SIRE。
ボーカリストが一緒でも、こうも印象が変わるものかという驚きがあります。
こういうのって、同じCDで比較できる機会は少ないので、そういう聴き方も面白いかもしれません。
6. MOMENT(DEMO)/Kreis All Stars
何度かバージョン違いで発表されている、クライスレーベルのテーマソング的な「MOMENT」。
これは、D≒SIRE、Ize、Blüeという3バンドでのオムニバス作品、「Kreis」のボーナストラックとして収録されたバージョンが元ネタでしょうか。
メインボーカルは幸也さんですが、IzeのHIROKIさん、BlüeのARIHITOさんもボーカルで参加。
本作には参加していないクライスレーベルのOB達が、こういう形で参加しているのも、オムニバス作品ならではの豪華さといったところですね。
覚えやすいテーマソングとして作成されたため、わかりやすいシンプルなバラード。
同じフレーズを全員でコーラスするサビの繰り返しは、お祭り騒ぎの締めくくりにはぴったり。
本作用に、今回参加しているメンツで録り直しても良かった気もしますが、亮さんと-F-さんの歌い分けって、ギャップが激しすぎてバラバラになるか(笑)
終わってみれば、半分以上が幸也さんという、Rayとpleurがボーナストラックなんじゃないかとすら思える仕上がり。
しかしながら、3バンドともに、オムニバスでしか聴けない曲を持ってきているところは良質と言えるでしょう。(Rayは再録ではありますが。)
ボリューム満点、とは言い切れませんが、密度は濃いかと。
最近は、レーベル単位でオムニバスを出したり、テーマソングを作ったりっていうことが減った気がします。
ソレイユとか、P缶とか、一昔前は、レーベル全体でのイベントで演奏されるテーマソングがあったものなのですが。
家族意識、仲間意識っていうのを感じられるアットホームさも、たまにはあっていいんじゃないかと思いますけどね。