no alternative / deadman | 安眠妨害水族館

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安眠妨害水族館~別館~-deadman

 

1. intro
2. 盲目の羽根と星を手に
3. 苦悩の中の耐え難い存在
4. 受刑者の日記
5. 銀のパラソル
6. ドリスからの手紙
7. rem.
8. imp
9. lunch box
10. in media
11. circus
12. through the lokking glass
13. quo vadis
14. 蟻塚

 

14曲入りで、1,980円という衝撃プライスだったdeadmanの1stフルアルバム。

低価格の代償として、音圧が軽い仕上がりになってしまっていて、3,000円でいいから、ちゃんとしたものを作ってくれという声も大きかった作品でもあります。

 

この声を反映したのか、再販されたバージョンでは、リミックス、再録などをして、音質を改善。

その代わり、価格は2,500円に値上がりしましたが、十分一般的なフルアルバムよりは安いですね。

リミックスといっても、音圧の調整がメインなようなので、今から聴きたい人は、レアになってる初回盤を無理して買うより、再販盤を買ったほうがよいかと。

 

ちなみに、同じ初回盤でも、通販盤と店頭盤ではジャケットが異なります。

ピンクの部分が黒になっているのが通販盤。

曲目に変更はありません。

 

さて、deadmanと言えば、V系特有のジャンル、名古屋系の代名詞的なバンド。

事実、洋楽に近い、ゴシックとオルタナティブを融合させたような楽曲を売りにしていました。

そのうえ、Vo.眞呼さんが、楽曲の世界観に恥じないパフォーマーなものだから、恐ろしい。

まさに、ゴシック・ホラーの映画を見ているようなライブは圧巻だったのですよ。

 

そんな彼らが、改めてフルアルバムを出すということで、どんな世界観が飛び出してくるか、ワクワクしながら聴いた一枚がこれ。

まず、実質的に1曲目である「盲目の羽根と星を手に」にびっくり。

これまでのドロドロ感が薄れ、ポップさがあるキャッチーなメロディじゃないですか。

しかも、それがハマっている。

歌メロだけ取り出せばポップなのだけれど、演奏の澱んだ感じ、マニアックさは相変わらずで、全然世界観を失っていないのです。

眞呼さんの、あえてコードを外した歌メロを乗せる独特の旋律も絶妙に絡んでいて、明るいからこそ狂気じみているというか、気持ち悪くなっているというか、とにかく濃い味付け。

「銀のパラソル」なんかも、キャッチーさがある一方で、空気はどことなく暗さを含んでいるのだよな、と。

これは、aieさんの作曲センスのすばらしさを認めざるを得ません。

 

デモテープで発売された「苦悩の中の耐え難い存在」や、シングル曲「lunch box」など、比較的聴きやすい曲を交えつつの曲構成もなかなかのもので、ボリュームはあるけれど疲労感は少ないです。

リズム体も、さすがに上手い。

地味ではあるが、なかなか複雑なフレーズを無難にこなしています。

 

加えて、特筆すべきはaieさんの成長ですかね。

Lamiel~keinの頃の彼は、どちらかといえば、技術が伴っていないギタリストとして有名でした。

当時はギターソロが弾けず、機材の使い方も未熟で、センスが先行しすぎていたプレーヤーの代表格。

それが、deadmanでの活動により風向きが変わり、今や、シーンに誇る実力者扱い。

単体で聴くだけでは味わいにくいかもしれませんが、そんな背景も踏まえながら聴くと、趣が増すのでは。

 

ラストは「quo vadis」で盛り上げた後、「蟻塚」でしっとりと締め。

ミディアムテンポのナンバーが中心で、表面的に攻撃性の高い楽曲は少ないアルバムですが、内なる激しさとは、こういうバンドに使うべき言葉なのでしょう。

英詞が増えてもおかしくなさそうな音楽性であるにも関わらず、日本語にこだわってメロディを構成しているところも好印象です。

 

14曲中、2曲がインストとは言え、ボリュームは満点。
張り詰めた世界観の中、意外とメロディも立っていて、名盤の声が多いのも頷けます。

欲を言えば、最初に記述した音圧のところ。

もっと重低音でズシズシ聴きたいのは否めないので、こうなったらリミックス盤も入手してみようかな。