materiel of utopia / Phobia | 安眠妨害水族館

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materiel of utopia/Phobia
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1.パペット マスター
2.weve a head
3.B13F
4.dirty-people
5.Qのカードを買った僕
6.~if~
7.白いシリコン
8.「画鋲・釘・針」
9.neo-Nazism
10.黒い猫
11.universe


kein、Lamielとともに90年代後半~ゼロ年代初頭の名古屋系の全盛期を支えたPhobia。


当時は、シングルやミニアルバムを小出しにするのが一般的で、フルアルバムを発表するインディーズバンドが少ない中、果敢にもオリジナル・フルアルバムを発売したのが彼らでした。

当初は5人組で頭角を現していた彼らですが、現cocklobinのGt.伊織さんが脱退して、それからは4人で活動を継続。

コンポーザーがシフトして、改めて方向性を示したのが、今回紹介するアルバムとなります。


5,000枚限定での生産。

トールサイズのブックレット仕様という、ちょっと置き場に困るアイテムでしょうか。

彼らが所属していたドーナツレコードと言えば、名古屋系の王道バンドを多く輩出したレーベル。

今では、名古屋系といえば、重たく激しいロックで、デスヴォイスを多用した硬派なバンドを指すようになり、現在活動しているところだと、lynch.やDEATHGAZEが代表的だと思います。

咲きやフリなんてもってのほか、拳をあげてこそ!というイメージもあるかもしれません。


当時も名古屋系といえば、重くてドロドロしたマニアックな音楽性のバンドを差していたのですが、意外なことに、Phobiaは率先してフリを取り入れていたバンドでした。

まだ"捧ぐ"文化が残っていた時代、他のバンドと差異化をするために、全ての曲にフリを取り入れたのが、名古屋系バンドだったって、ちょっと面白くありません?

(もちろん、曲単位ではそれ以前にもフリは存在していますが。)


もっとも、フリをする前提の曲作りではなく、曲構成は非常にマニアックで、男受けもしていましたね。

鋭いシャウトも相応に用いながら、一辺倒ではなく、「黒い猫」のようにストレートな王道メロディアス曲など、バラエティに富んでいるのも特徴だと思います。

シングルの「~if~」なんて、とてもキャッチ―でポップ。

賛否両論はあったけれど、柔軟な音楽性を象徴していたのでは。


そんなわけで、このアルバムを聴くポイントとしては、全体的に漂うマニアックな雰囲気に浸りつつ、大事にされているメロディ部分を楽しむということでしょうか。

つい口ずさみたくなる名古屋系なんて、なかなか稀有だと思いますよ。