先日発売されたJIGGER'S SON19年ぶりのニューアルバム「SOUND of SURPRISE」セルフライナーノーツ第2回。今日は「バンジー」と「バトン」の2曲。

 

 

●03. バンジー

 

【data】

word & music 坂本サトル

recorded at 音屋ホール (2017 福島県相馬市)

坂本サトル:vocal, acoustic guitar, programming

渡辺洋一:electric guitar

坂本昌人:bass

鈴木慎也:drums

森山公一:kaossillator

 

【liner notes】

2017年に福島県相馬市で行われた6曲のレコーディングは4泊5日の合宿スタイルで行われた。

レコーディングに入る直前の1週間で溜め込んでいたアイディアを一気にまとめて、7月8日早朝、相馬へと向かう。この時点でプロデューサーの森山はもちろんメンバーさえレコーディングする曲を1曲も知らないという恐ろしい状況だった。

昼過ぎに音屋ホールに到着。森山とレコーディングエンジニアのナベちゃん(渡辺正人)は翌日から来る事になっていてこの日は4人だけ。

楽器をセッティングし、メンバーに譜面を渡し、口頭でアレンジのイメージを伝えそこから4人で構成や具体的なアレンジを詰めていき、この日のうちに6曲中、5曲を一気に仕上げた。

この曲も含め、相馬でレコーディングされた楽曲の中のアコギは全てラインのみ。マイクを一切使用していない。「録れた音が良かったから」の一言に尽きるが、僕の25年のキャリアの中で初めての出来事だった。レコーディングが進むにつれ、エンジニアのナベちゃんが「アコギにマイクって要ります?」とまで言うようになってしまったほどのグッドサウンド。使用アコギは68年製のギルド。エレキは渡辺のみ。印象的なトーキングモジュレーター的サウンドは「カオシレーター」というパッドをいじくり回して様々な音を出す楽器。森山が1発OKでナイスセンスなプレイを披露してくれた。

虚無感。場末感。焦りとあきらめ。ジリジリとしたエロス。時々無性にこういう詞が書きたくなる。言葉遊びも含め面白い詞になったと思う。

 

 

 

●04. バトン

 

【data】

word & music 坂本サトル

recorded at Sound Village (2012 山梨県山中湖村)

坂本サトル:vocal, acoustic guitar

渡辺洋一:electric guitar

坂本昌人:bass, chorus

鈴木慎也:drums

柴田俊文:piano

尾崎博志:pedal steel guitar

 

【liner notes】

父の四十九日の法要の日、祭壇の前で浮かんだ歌詞とメロディを書き留めてそれを膨らませて仕上げた曲。

2012年の夏に父が末期の膵臓ガンであることがわかって余命半年と診断された。その直後から母はそばにいながら異変に気づけなかったと自分を責めるようになった。結局、父は9ヶ月間の闘病の末旅立ったのだが、その後も母の自責は続いていた。落ち込む彼女のために曲を書こうと思った時に思い浮かんだのは、病院通いに付き添っていたある日、診察待ちのベンチで父が話してくれたことだった。

「お父さんの血はお前たちに半分ずつ残した。そう思うと死ぬ事が怖くなくなる」

死とは全ての終わりではなく、命が果てた後にも脈々と受け継がれるものもある。それは血や遺品といった物理的なものものだけではなく、想い出とか教えとか教育などの精神的なものも。そう考えれば失った哀しみや自分を責める気持ちが少しだけでもやわらぐのではないか。

生前、JIGGER’S SONをまたやるんだと伝えると父は「そんな大変なことはやめたほうがいい」と言った。まあ確かに大変だけど、それでも4人でやることに決めたよ俺たちは。

2012年の再結成と同時に制作された復活第1弾シングル。美しいスティールギターは尾崎博志氏。ピアノは1994年以来JIGGER’S SONのほぼ全てのアルバムに参加してくれている柴田俊文氏。感動的なギターソロはもちろん渡辺。アコギは67年製のMartin D-35を使用。

被災地で、大切な人を守り切れなかったことを今も責め続けている何人かの人に出会った。そんな気持ちを消し去ることはできないが、背負った十字架をほんの少しだけでも軽くする手助けができればと思う。

 

 

JIGGER'S SON『SOUND of SURPRISE』

DQC-1584 / 全12曲入り / ¥3,240(tax in.)

 

produced by 森山公一 and JIGGER’S SON

recorded and mixed by 渡辺正人(Spark Kid Sound)

masterd by 山崎翼(Bernie Grundman Mastering Tokyo)

 

詳細、購入→ http://bit.ly/2gHIvDK