震災から1年と3ヶ月。
ここであらためて4月3日のイベント(※注)のチケットを購入してくれたみなさん、募金してくれた皆さん、出演してくれた皆さん、スタッフの皆さん、そして後で述べますが現地経費を募金してくれた皆さんに心から感謝します。ありがとうございました!
これからもマイペースで通い続けようと思っていますので、どうかよろしくお願いします。

さて、今日はちょっと長いです。
お時間のある時に読んでいただければ、と。

※注…4月3日のイベント「日、出づるところへ」についてはこちらを。
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声優の山寺宏一さんと共同発起人になって2011年4月3日に東日本大震災被災地支援イベント「日、出づるところへ」を節電&自粛ムードに押さえつけられた都内で開催した。
そしてその3日後、イベントで集めた義援金(以下「4月3日義援金(※注)」と呼ぶ)の使い方を決めるために、僕は初めて被災地に足を踏み入れたのだった。
(詳しくはこちらを)

数日間の特濃な滞在の後、被災地から戻って痛感したことが2つ。

まず1つ目は「イベントで集まった約200万円は寄付すればあっと言う間になくなってしまうが、現地で使えば直接的で即戦力。ものすごく役に立つ」ということ。
「現地で直接足りないものを聞き、それを買い、届ける」
これこそが今回の募金の最も有効な使い方だ!と確信。
想像はしていたものの、現地でこれを実感できた時にはちょっと興奮してしまった。

そして2つ目は僕の前に突きつけられた現実。
「現地経費は思ったよりもかかる」ということだった。

当然のことながら1日動けば1日分のお金が出ていく。
友人宅に泊めてもらってはいたが、やはり気は遣う。世話になったお礼にと食費を出したりする。借りてきた車は近所のコインパーキングに一晩中停めておかなければならないため駐車料金もかかる。そしてもちろん現地までのガソリン代や高速代等の交通費。それらが直接僕の財布から出て行くわけだ。

この現地経費については「4月3日義援金」からは捻出できなかった。
4月3日に「どこかに寄付をする」という趣旨の元で集めたお金だ。「サトルが現地に行くための交通費や滞在費を寄付したわけではない」と言う人もいるだろう。
やはり「募金を集めるために事前に話したこと」と違った事に使うことはできない。

イベントの翌日、集まった募金をテーブルに並べた時、「これは大変な役目を買って出てしまったぞ…」と冗談ではなく目まいがしたが「始めたからにはやるぞ」と覚悟も決めた。
あの日の目まいと覚悟を思い出せば「いろんな出演者の皆さんに協力してもらって集めたお金を坂本サトルが自分のために勝手に使っている」などという言葉は一言も聞きたくない。
政治家というのは預かった税金をどうやって使うか、こうやって悩んでいるのかも知れないなあ。(悩んでいて欲しい)
「まじめに考えすぎだ」と思うかも知れないが、募金を預かるというのはそういうことなのだとやってみて初めて気がついた。お金と共に「想い」も託されているのだから。

しかし僕が被災地で動けば動くほど、収入を得るための仕事はできなくなって行く上に、現地経費をこのまま自分の財布から出し続ければこちらの生活が立ち行かなくなってしまう。

僕はその時「被災地に行きたいし、200万円の有効な使い道もわかった。しかし行けば行くほど生活が圧迫されてしまう」という袋小路にハマリかけたのだった。
せめて現地経費だけでも捻出できないものか?


そこで思いついたのが「支援活動費募金」だった。
ちょうどゴールデンウィークに北海道弾き語りツアーがある。
4月3日のイベントと違って今回の会場に来る人は僕だけを見に来る。そこでこの状況を話そう。そして賛同してくれた人だけが募金してくれればいい。

そんなわけで僕は2011年5月初め、北海道ツアーのライブ会場でこんな風に話したのだった。

支援物資を買うお金はある。しかしそれを買い集めたり届けたりする経費の捻出に苦労している。
支援活動のための交通費と宿泊費等の現地経費を寄付してもらえないだろうか?
僕を信じて、独断で使うことを許して欲しい。
もちろん大切に使うし、使用明細はブログで報告する。

【支援活動費の主な用途】
・被災地までの交通費(ガゾリン代と高速代)
・被災地に行くために使用したホテルの宿泊代
・被災地で活動した日の食費(1日¥1,500)
・「4月3日義援金」からの捻出が難しい、または判断に迷うような救援物資の購入費

これは我ながら思い切ったお願いだった。
要するに「俺に募金を!」というような事なわけで、これは理解を得られないかも知れないと思っていた。
でもそれでいいと思った。それでも預けてくれる募金なら、遠慮なく使う事ができる。
大切なのは被災地に通い続けることなのだ。


結果は以下の通りとなった。

*函館公演…¥32,928
*札幌公演…¥62,787
*紋別公演…¥15,337
*標茶公演…¥79,390

合計¥190,442!すごい!!

さらに6月に大阪と名古屋のライブで同様の募金を集めたところ

*大阪公演…¥32,800
*名古屋公演…¥30,000

その他、各地で行われたイベント会場でも同様の募金が集まり、8月までに合計「¥352,742」の活動費が集まったのだった!
すごいなー…。
よし、これで1つ心配が減ったぞー!!


印象に残っている出来事がある。
8月に東京都町田市でイベントに出演した日のCD即売所でのこと。
1人の男性がすーっと僕の元にやって来て、封筒を渡してこう言った。
「いつも気仙沼に行ってくれてありがとう。俺、宮城県の気仙沼出身なんだけど、すごく帰りたいのに仕事でなかなか帰れないのよ。これ、少ないけど使って。俺の代わりにまた行って下さい。気仙沼のこと、よろしくお願いします。」
封筒には1万円札が入っていた。


こうして支援物資を購入するのは「4月3日義援金」、交通費や宿泊費は僕のライブで集めた「支援活動費」から捻出、という仕組みが出来上がったのだった。
永続的な支援のためには支援する側に必要以上に無理がかからない体制が必要だ。
ユニセフにしろ、赤十字にしろ、国際的な支援活動組織には必ずそれを経済的に支える仕組みがある。
だからこそスタッフはなんの心配もなく支援活動に従事できるわけだ。
考えてみれば当たり前の事だが、何事もやってみて体で理解するタイプなので…。


「支援活動費」の方は昨年末に使い切ってしまったが、「4月3日義援金」の方には2012年6月現在、約95万円の残高がある。
この95万円という数字は僕の頭と胸のすみっこに常にあって、これまでに「早く使い切ってしまって楽になりたい」と何度考えたことか。
しかしここまで大事に使ってきたお金を「使うために使う」という考えで使ってしまうのにはどうしても抵抗がある。
いくつかお話しも頂いているので、山寺さんと話し合いつつ、そしてみなさんからの意見も聞きつつ、最後まで有意義に使っていきたいと思っている。


紹介した2つの募金は、確定申告歴19年の経験を生かした(←笑うところです)領収書管理とエクセル、そして100円ショップで買ったビニールケースにより、完全に分離されて管理されています。
これについては「俺を信じてくれよ」というしかない。文系だったけど数学も意外に得意なんです。


というわけで「僕はこうやって動いてきました」という報告でした。

最後に心の叫びを。

「今度募金を集めるようなイベントをやる時は、俺は絶対に会計やらないぞー!」


●イベント「日、出づるところへ」で集まった義援金の収支報告ページ
http://www.sakamotosatoru.com/0403syuushi.html

●「支援活動費」収支報告ページ
http://www.sakamotosatoru.com/katsudou.html

※注…本来「義援金」は現金で被災者の方々に渡るお金の事ですが、支援物資であるにせよ「そのお金で購入した物資が直接、被災された方々に届いた」わけですので、ここではその経緯を踏まえた上であえて「義援金」という呼称を使わせてもらいました。ご了承下さい。