30年くらい前、動物病院の数は今より圧倒的に少なく、獣医師の技量レベルは経験年数(年齢)に比例する傾向にあり、大半は院長若しくは院長夫婦によるアットホームな経営で、彼らは大きな欲もなく獣医療に勤しみ「そこそこ稼げればよい」と考えていました。
現在、動物病院は約1.2万軒(国内)まで増え、競争は激化する一方で、ノホホンとやっていたら客は他に取られ廃業に追い込まれます。
この1.2万軒のうち、獣医師が1人の動物病院は約8,000軒(約60%)、獣医師が2人の動物病院は約2,500軒(約20%)、獣医師が3人以上いる動物病院は約2,000軒(約20%)です。
全体の2割を占める獣医師が3人以上いる動物病院は儲かっているからそれができるわけですが、従業員を沢山雇って診療もしなければならない院長の仕事は、サラリーマンが日中フルで営業しながら部下を教育し、経営、人事、経理、法務、総務などの管理業務もこなしているのと同等以上のハードワークです。
筆者は、診療に立ち合うだけでも一日動物病院にいるとヘトヘトになります。
体験教室で保育園に一日いたときもヘトヘトになりましたが、それをはるかに上回る知力・体力を消耗します。
そんな問題を企業が放置するわけはなく、イオンなどの企業経営の動物病院が増え続けています。
企業経営の動物病院では、獣医師は担当業務(主に診療)だけやっていればよく、お給料制なので安定しているし、面倒な雑務は企業が管理してくれるので、いわゆるサラリーマン的意識でOKです。
残業も殆どなく、休みもしっかりとれるので、家族と過ごす時間や趣味に費やす時間が増えます。
筆者の知り合いにも代診からイオン傘下の動物病院の雇われ院長に転身した獣医師がいて、子供が小さく共働きだった彼は「ここはパラダイス。二度と戻りたくない。」と言っていました。
別の獣医師(院長)は、忙しすぎて家庭を顧みることができず離婚されてしまいましたが、その後大きくなった病院を企業に売り、固定資産と経営コンサルタント業務でルーチン収入を得て、高級ベンツを乗り回し、リゾートマンションを買い、やりたかった事業を始めて人生を謳歌しています。
その動物病院はオーナーと院長が変わっただけで他は全て同じなので、企業経営になったことに気付かない飼い主はいるかもしれません。
獣医師も人なので、我々と同様に「ほどほどに働いて自分の時間を大切にしたい」人もいれば、「頑張って稼いで金持ちになりたい」人もいます。
企業経営の動物病院の院長はサラリーマンで、個人経営の動物病院の院長は社長です。
社長の中にはダメダメなやつもいるし、サラリーマンの中には社長になれるほど意識の高い人もいるしで、どちらがよいか一概には言えませんが、両方を経験した筆者の場合は、愛する子をサラリーマン病院には連れて行かないですね。
【トトロを管理下におくオキナインコのアイ】