膵臓は消化酵素を十二指腸に分泌する働きをもちます。

 

この消化酵素は、膵臓内では不活性で腸内に分泌されて初めて活性化されますが、これが何らかの原因で乱れ、膵臓内で活性化されると膵炎になります。

 

猫の膵炎は一般的な病気で、2007年に行われた115頭の猫の病理組織評価では、全体の67%が膵炎(慢性膵炎:50.4%、急性膵炎単独:6.1%、急性膵炎と慢性膵炎:9.6%)で、このうち45%は見た目健康だったことが分かっています。

 

膵炎で入院した猫の分析結果から、飼い犬の短毛が素因で、脱水症、嗜眠、食欲不振、嘔吐、体重減少、低体温、頻呼吸、黄疸、腹痛、下痢、発熱などの症状がみられたとの報告もあります。

 

猫の膵炎の確定診断は、臨床症状や血液検査結果が非特異的なことや腹部エコー検査の感度の問題などにより困難で、特に、腎臓病の猫の場合、膵臓に特異的なリパーゼ濃度に影響を及ぼすことがネックとされています。

 

膵臓リパーゼ免疫反応性(PLI)検査は猫の膵炎に特異的で、PLIが7.9μg/L以上であれば膵炎と診断されます(感度:79%~100%)。

 

人の重度の急性腎障害は、サイトカインストームに続発する全身性炎症、標的臓器損傷、血液量減少、凝固異常などにより全身に悪影響を及ぼし、急性膵炎をもたらすことが分かっており、猫でも同様のことが起きる可能性があると考えられています。

 

慢性膵炎は、猫は人と異なり好中球性炎症ではなく、膵臓単核浸潤や線維症がみられ無症候性とされています。

 

また、膵炎の猫は糖尿病になりやすく、ドライフードだけ食べている子は缶詰を含むフードを食べている子より膵炎になりやすいことも分かっています。

 

人も猫も慢性腎臓病と膵炎は関連しているため、双方の治療を早い段階で行うことで病気の進行を抑えられる可能性があります。

Association between pancreatitis and chronic kidney disease in cats: a retrospective review of 154 cats presented to a specialty hospital between October 1, 2017, and October 1, 2022 in: Journal of the American Veterinary Medical Association - Ahead of print (avma.org)

 

膵臓は肝臓と同様に「沈黙の臓器」と呼ばれており、病気に気付きにくいだけでなく、通常の健康診断では病気を発見できませんが、早期に見つかれば重症化は抑えられコントロールすることが可能です。

 

腎臓病や甲状腺機能亢進症と同様に「膵炎」も頭の片隅に置いておき、愛する子の消化器系の症状の原因がはっきりしないようなら早めにPLI検査をした方がよいかもしれません。