筆者が住むマンションでは、理事長と一部の居住者(80代夫婦)による執拗なハラスメントによって、先月管理人さんが辞めてしまいました。

 

彼らが管理人さんをイジメた大元の理由は、「自分たちの指示通りにゴミ置き場に水を流してブラシで掃除をしないから」でした。

 

管理人さんの言い分は、「防水コーティングされていないコンクリートの床に頻繁に水を流したらコンクリートが劣化して大問題になるからモップで拭いている」で、プロとしての経験に基づく理に適った意見でした。

 

しかしながら、彼らは「自分たちの言うことを聞かない生意気な管理人」ととらえ、「ゴミ袋を使い過ぎだ!」とゴミ袋を取り上げ、洗って使いまわさなければならないくらい少量ずつしか渡さなかったり、毎日のように掃除現場を監視しに来て嫌味を言ったり、管理人室のFAXが故障して困っているのに修理させてくれなかったりとイジメ続けたのです。

 

マンションの居住者が管理人をイジメる行為は、「客が行う迷惑行為や悪質なクレームなどのカスタマーハラスメント(カスハラ)」に該当します。

 

筆者はこのマンションに約25年住んでいて、理事長らの性格はよく知っているし、弱い者イジメが何よりも嫌いなので、管理人さんから相談を受け、個人名は伏せて全住戸宛にイジメが起きていることを知らせるビラを記名し配りました。

 

それが功を奏したようでイジメはおさまり、管理人さんは他の住人たちから優しい言葉をかけてもらえるようになって喜んでいたのですが、その4カ月後、理事長がまた言われもないことで責め、管理人さんはついに辞めてしまったのです。


筆者は次期(今月末の総会後)理事就任予定ということもあり、先月の理事会にはオブザーバーとして出席し、イジメた側の理事長と80代夫婦に直接、「あなたたちのしていることはカスハラであって許されることではない。こんなことを続けて管理会社が撤退したら皆が迷惑する。」と注意したのですが、彼らの言い分は「言う通りにしない管理人が悪い。彼女は外面がいいだけで掃除はいい加減だったから辞めてくれてよかった。こっちはお金を払ってるんだから何を言ってもいいんだ。」で、「カスハラって何?」レベルでした。


昔は、「お客様は神様です」志向でしたが、今はサービスを提供する側とそれを受ける側は対等と考えられています。

 

うちのマンションだけでなく、電車の遅延などで駅員を怒鳴りつけている人も時々見かけますが、動物病院にもカスハラ飼い主はいます。

 

カスハラ飼い主の言い分は、

「診断が間違っていた」

「治療を勧めてくれなかった」

「適切な治療をしてくれなかった」

から、うちの子は死んでしまったなどです。

 

客観的にみてもそれが正しいなら通せばよいですが、その時々で獣医師が言ったことを飼い主が忘れていたり、獣医師が勧めた検査を飼い主が拒んだことが根本原因だったり、高額な治療費に対する不満が起爆剤になったなどの言いがかりで獣医師に食ってかかるのはカスハラに該当します。

 

お金を払っていればエライわけではありません。

相手がどんな人でも、どんな関係でも、自己主張したあとは相手の話にも耳を傾け冷静に話し合う姿勢が必要です。

 

長年、社会全体で取り組んできたことでパワハラやセクハラは減ってきていますが、カスハラは増加傾向にあり、東京都は今、全国初の「カスハラ防止条例」の制定に向けて検討を進めています。

 

B to C の仕事をされている方は日常的に感じていることと思いますが、パワハラやセクハラと同じくらいカスハラも許されないということ、浸透させていきたいですね。