「私、税理士事務所を廃業します!!」 | 「難しいものを分かりやすく、面白く!」難解なものに挑戦するあげまん税理士・行政書士 坂野上満の小部屋

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「一読理解、二読難解、三読不可解」とも言われるのが税法。そのような難しいものを簡単にお伝えすることに日々腐心している税理士・行政書士のセキララな実体をお届けします!「あげまん」って何や!と思われた方。いらっしゃいませ!!

って夢をみました。なかなかリアルな夢だったので詳細に至るまで書いてみようと思います。


時は201×年、消費税の税率が15%に上がっていました。5%から8%になるまで17年かかったのにそれからの上がりペースは速かったようです。

もちろん、国の基幹税目は消費税。法律の適用がとても厳格になっていました。まず原則課税の場合、税務調査で帳簿及び請求書等の提示ができない場合には即、仕入税額控除否認でその分の15%が追徴されます。期ズレもなかなか痛い。仮に1,000万円の売掛金が漏れていたとするとすぐに150万円の追徴になります。

税務調査官の仕事はかなり楽になったようです。だって、原則課税のところに入ってちょっと厳しく仕入税額控除関係のことを帳簿保存要件からつつけばすぐに100万、200万になるんだから。ちょっと年配の調査官が言ってました。「昔、こんな金額の追徴を取るのに寝ずに情報を取ったり資料とにらめっこしたりしたもんだけど、今の若い人達はこんなに楽に仕事が進むんだからうらやましいよ」。

税務調査官は「何が正しい税額かを明らかにすること」ではなく、「納税者がした申告の間違いをどれだけ見つけられるか(つまり、いくらお金を取れるかってこと)」が仕事なので、追徴の額がそのまま評価になったりします。だから消費税の税率アップと要件の厳格化によって一番得をするのは何をかくそう、彼らです。

また、こんなこともありました。

簡易課税が有利になると思いきや、フタを開けてみたら原則課税が有利だったということはよくあります。しかし、税率が15%ともなるとシャレで済まなくなるんですよ。税抜き経理をしていたら決算で簡易の不利税額(簡易課税で損をした額)は雑損失に計上されますが、これが今までとは桁違いの額になってました。200万円だって。

税率が5%のときには5千万の5%は250万円だから200万円も不利になるってことは設備投資でもしない限りはなかったのですが、15%の世界では5千万円の15%は750万円。フツーに200万円の不利差額って出る世界でしたよ。こわ~。

消費税って損益にも大きな影響を及ぼすんですよ!

①税抜き経理をしていれば、「②消費税の処理が正しく、③原則課税で全額控除ということを前提にすると」損益は正しく表示されます。しかし、これらのうち一つでも要件を満たさないと期中の損益は結構いい加減なものになってしまいます。

まず、①税抜き経理ではなく税込み経理にした場合。これは今でもだけど、毎月納付すべき(又は還付されるべき)税額を予定計上しておかないと決算でどかーんと損益が変わってしまいます。

②消費税の処理が正しくないと5%のときにはあまり気にならなかったけど、15%になるとかなり損益が狂いますよ・・・・。100万円の課税仕入れを間違えるとそれだけで10数万円の損失計上だからね・・・。利益が出てると思って決算対策をしたら大きな損失だったって。笑えない・・・

③の原則課税で全額控除ではなく、個別か一括、又は簡易課税だったら税抜き経理の場合には必ず消費税精算差額が出ます。これが5%のときはあまり気にならたかったけど、15%になったときにはこの精算差額まで予定計上していかないと期中の損益が狂い、決算でどかーんと損益が変わってしまいます。

で、税務調査のときに追徴が出て社長が会計事務所の責任だって半ば半狂乱になるわ、調査官は人ごとなので半ば遠い目をしながら腹の中で笑ってやがるわ、簡易課税で税額が大きくなったら決算で社長に弁償しろと言われるわ、お客様の借入先からは「お宅の月次損益はどうなってんの?」と嫌味を言われるわ、どーしろってんだー!!!!!

ってところで目が覚めました。

でも、この夢って近い将来実現しますよ。嫌なことですが。

私もこの業界に入って十数年、リスクが高いのは相続・贈与・譲渡といった資産税だと言われました。しかし、資産税は確かに難しいしリスクは高いのですが、調べる時間があります。一つ一つ要件をつぶしてお客様に説明をしていけばそれなりにできたりするのです。

しかし、消費税率が10%を超えてくると一気に消費税はリスク税目に変身します。特に原則課税。これって、仕訳の一つ一つですよ。帳簿の保存がないというだけで追徴にかかる調査官はごまんといますよ。1億円の5%は500万円ですが、15%は1,500万円。資産税の世界だけだと思っていた桁の数字が中小零細企業でも当たり前に税額として出てくるようになります。

このままのルールで進んでいったら、それこそ、消費税の申告代理をしない会計事務所も出てくるかもしれません。「ウチは免税事業者か簡易課税しかやんないからね」って。

国はこんなことの対応は全く考えません。彼らは納税義務の履行をするのは一方的に国民の義務だって思っているから。そのための環境整備なんて全くなされていないのに。だから滞納額が一番多い税目になっているんでしょ?霞ヶ関ではやるべきことをやらずに国民に押し付けるのが当たり前になっているらしいので、今に消費税がこの国の社会を壊してしまうかも・・・です。

税理士賠償責任保険があるじゃないか!

・・・・残念ながら、税賠は夢の中では定額免責額が300万円、消費税についてはさらにその300万円を超える部分の50%が免責となっていました。まだ保険が存在しているだけましか、と思うしかない状況でした。

それで私は夢が覚める直前、タイトルの結論に至るのでした。「消費税率が15%になったら会計事務所なんてやってらんねーよ!リスクが高すぎるし、神経がもたんよ。廃業だ、廃業。やめてやる!!!!!!」

分かった!この解決策!!消費税だけ税務署か商工会議所の臨税でやる。そこで消費税額を確定してきてもらってあとは会計事務所がやりまっせ!ってなことにはならんわな。

これがそのまま正夢にならないことを願って・・・