沈黙の臓器(腎臓・膵臓・肝臓)中、腎臓・膵臓は書きましたので、この際肝臓も深読みしてみます。

参考に成る事が有れば、幸いです。

肝臓は何処にあるの

肝臓の位置は、お腹の右上で横隔膜の下、胃の隣に位置します。 約1~1.5kgあり、内臓の中では大型の臓器に分類され、 女性より男性の場合は大きい傾向にあります。 

役割

肝臓の主な働きは3つあります。 1つ目は、私たちの体に必要な蛋白の合成・栄養の貯蔵、2つ目は、有害物質の解毒・分解、それと3つ目が、食べ物の消化に必要な胆汁の合成・分泌です。

沈黙の臓器と言われる訳

 肝臓には痛みを感じる神経がありません。 また、肝臓が徐々に病気に冒されて機能が低下しても、全体の30%が正常であれば、日常生活で気付かない程度に機能しようとします。 つまり、病気の自覚症状が出たときには、症状がかなり進行していることがあります。

 

肝臓が悪くなると出る症状

 

初期症状

初期症状としては、食欲不振や、疲れやすくなる等があり、重篤化すると、黄疸の症状や腹水が溜まったり、吐血、意識障害に陥ることがあります血液検査やCT、超音波等の画像診断で検査することができます 一度死滅して、硬く変化した細胞は元に戻らないため、早期の内に病気の進行を防ぐ必要があります。 早めの受診を心掛けましょう。

顔に現れる症状

進行時の症状

進行すると、全身倦怠感、食欲低下、嘔気、黄疸、皮膚のかゆみ、からだのむくみ、腹水などが挙げられます。 明らかな症状が出現している場合は、肝機能障害がかなり進行している可能性があるため、症状がないうちから定期的に健康診断や人間ドックなどで定期観察することが重要です。

免疫力低下と癌の関係

免疫力の低下や、タバコや飲酒などの生活習慣によって、がん細胞は増殖してしまいます。がん細胞が成長すると、正常な細胞のフリをするため、免疫細胞の攻撃から逃げられてしまうので厄介です。また、がん細胞が増えると免疫抑制細胞が増えてがん細胞を囲うようになるため、免疫力をさらに低下させてしまいます。免疫力が低下するとがん細胞への攻撃が抑えられ、がんの発症に繋がってしまうため、免疫力を高めることはがん予防において重要な要素です。


 

肝臓病とは

肝臓病とは、ウイルス、生活習慣、薬物などさまざまな原因により肝臓に障害が起こる病気です。

肝臓の病気ですが、肝臓の状態により3つ状態があると考えられ、肝炎、肝硬変、肝がんと進行するのが一般的です。

ただし、肝炎の前の症状として脂肪肝があり、これを考慮すると、4つの状態があるとも考えられます。

脂肪肝 ⇒ 肝炎 ⇒ 肝硬変 ⇒ 肝がん へと進行することがあります

肝臓の病気でよくみられるものは、肝炎の前の状態でもある脂肪肝が一番多いです。脂肪肝に続き多いのは、体質性黄疸、ウイルス性肝炎(A、B、C型)、肝がんと続きます。自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎は稀なケースではありますが、よく検査して診断することが需要です。

ウイルスによる肝炎(ウイルス性肝炎)の 中でもB型肝炎やC型肝炎は肝がんの主な原因となっています。

 

肝臓病度合チェック項目

  1. 食欲がない
  2. 吐き気があってむかむかする
  3. アルコールに弱くなった
  4. 胃がもたれる
  5. だるくて、疲れやすく、気力がない
  6. 尿の色が茶褐色である
  7. 黄疸がある(白目が黄色い)
  8. 皮膚が黒ずんできた

上図の脂肪肝 ⇒ 肝炎 ⇒ 肝硬変 ⇒ 肝がん等について概要を記載します。

 

①脂肪肝とは

患者さん参加型DVD|公益社団法人日本糖尿病協会 (nittokyo.or.jp)

脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に蓄積する病気です。食事で摂った脂質は、小腸で吸収され肝臓で脂肪酸に分解され、糖質はブドウ糖に分解されて、小腸から吸収された後、肝臓で中性脂肪に変化します。摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが取れていればよいのですが、脂質や糖質を摂り過ぎていてさらに運動不足の場合には、使いきれなかった脂肪酸やブドウ糖が中性脂肪として肝臓に蓄えられます。

脂肪が蓄積し、全肝細胞の30%以上が脂肪化している状態を『脂肪肝』といいます。

適切に対応すると回復しますびっくりマーク

※NASH (ナッシュ) とは?

脂肪肝の原因はアルコール性脂肪肝と、ほとんどアルコールを飲まない人に起こる非アルコール性脂肪性肝疾患 (nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)に分かれます。NAFLDは良性の経過をたどる単純性脂肪肝と、肝硬変や肝癌に進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分かれます。わが国にはNAFLDが約1,000万人NASHが約100~200万人いると推定されます1)

 

※非アルコール性脂肪肝障害(NAFLD:ナッフルディー)肥満や急激な体重増加が原因で発症する脂肪肝を非アルコール性脂肪肝障害(NAFLD:ナッフルディー)といいます。

 

肝機能とデータの関係

「奈良宣言2023」は、国民病の一つと言える肝臓病の克服のた めに、肝臓・消化器疾患を専門とする医師や医療者のみならず、いわゆるかかりつけ医や一 般医療者や国民に向けた本学会としても初めて発信する宣言です。

特に一般的な健康診断でも肝機能検査として血液検査で広く測定されているALT値が30を超えていた場合、まずかかりつけ医等を受診することを勧めています。

 

脂肪肝と肝機能データ関係

  • ALTやASTの値が50~100 U/L前後にまで上昇している
  • ASTよりもALTの方が高い傾向にある
  • γ-GTPやコリンエステラーゼなども高くなる
  • 超音波検査では「肝腎コントラスト」といって、肝臓の方が腎臓よりも明らかに白くなり境界がはっきり見えるようになるが一番特徴的な所見となります
 
 
脂肪肝治療
脂肪肝状態を真摯に捉え直さないとまずいですよびっくりマーク
脂肪肝は何よりも「食事」や「生活習慣の改善」が大切ですが、下記併用治療方法もあります。
ビタミンE摂取
ビタミンEは、抗酸化作用があり、脂肪肝に関連する肝細胞の酸化ストレスを軽減することができます。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者に対して、ビタミンEの摂取が肝臓の炎症や線維化の改善に効果的であることが複数報告されています。
糖尿病治療薬

糖尿病を合併している脂肪肝の方で有効な薬剤がいくつか報告されています。例えば、糖分を尿からは排泄する薬(SGLT2阻害薬)やインスリンの働きをよくするお薬(チアゾリジン誘導体)などです。

脂質異常症改善治療薬

脂質異常症の方は、悪玉コレステロールを下げる代表的なスタチン製剤や、フィブラート製剤も脂肪肝を改善させる可能性が報告されています。

「コレステロールを下げるのだから、肝臓中の脂肪も減らせるのではないか」と思うのは当然でしょう。しかし、有用性も一部では認められているものの、上記2つの薬よりは効果は限定的です。

高血圧の薬(ARB・ACE阻害薬)

高血圧の方にはACE阻害薬、ARBが肝機能改善に有効です。

「なんで高血圧の薬が脂肪肝にとってもいいの?」と思うかもしれませんが、脂肪肝にかかわる「肝星細胞」には「アンジオテンシンII受容体」があり、肝星細胞にアンジオテンシンがくっつくことで、細胞が活性化されて肝臓の炎症や線維化がうながされることがわかっています。

 

②肝炎

①慢性肝炎

肝臓の炎症が6ヶ月以上続いている状態を慢性肝炎と呼びます。慢性肝炎になると、食欲不振や全身倦怠感などの症状が現れる場合もありますが、多くの場合症状がありません。 しかし、症状がないからといって慢性肝炎を放置していると、将来、肝硬変・肝臓ガンに発展することもある非常に重大な病気です。

 

治療

慢性肝炎の治療は、B型肝炎による場合は、インターフェロンの注射、ラミブジン(エイズにも使用します)の内服、C肝炎ウイルスの場合はウイルスのタイプと量にもよりますが、リバビリンの内服+ペグインターフェロンの注射を使用します。

 

②急性肝炎

主に肝炎ウイルスの感染が原因でおきる急性の肝機能障害を呈する病気です。 症状としては、黄疸、食欲不振、嘔気嘔吐、全身倦怠感、発熱などがあります。 今までに肝炎ウイルスとしては、A、B、C、D、E型の5種類が確認されています。

原因・症状

 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。

牡蠣などの魚介類生食によるA型肝炎ウイルス性的な接触によるB型肝炎ウイルス汚染された血液や器材からの感染であるB型あるいはC型肝炎ウイルス猪や鹿等の生肉の摂取によるE型肝炎ウイルス、さらにはEBウイルス、サイトメガロウイルス等のウイルス感染があります。

急性肝炎に特異的な症状はありませんが、食欲不振や吐き気、嘔吐などの消化器症状、右上腹部違和感あるいは痛み、全身倦怠感や黄疸が認められます。 これらの症状がすべて出るということではなく、また症状の程度も個人差があります。


治療

急性肝炎はC型肝炎をのぞき、一過性に経過し、本来自然治癒やしやすい疾患です。急性肝炎の治療上、最も大切な観察ポイントは、極期を過ぎたか否かの見極めです。重症化、劇症化への移行が疑われた場合には、速やかに専門の病院に紹介する必要があります。 

中でもヤバイC型肝炎ウイルス(HCV)ダウン

 

C型慢性肝炎の進行

 

 

 

急性肝炎の生命予後は、重症化、劇症化しなければ極めて良好でありA型、B型肝炎は終生免疫が成立し再感染することはありませんが、C型肝炎では急性期を経過した後は、遷延化、慢性化に対して内服の抗ウイルス剤(DAA: Direct acting antivirals)を用いた抗ウイルス療法が必要となります。また、再感染することもあります。  

B型急性肝炎に関しては、日本肝臓学会によるB型肝炎治療ガイドラインに詳しく記載があります。

急性肝炎 | 肝炎情報センター (ncgm.go.jp)

 

③劇症肝炎とは
劇症肝炎とは 元気だったお子さんの肝臓がある日突然、全く機能しなくなってしまう病気が劇症肝炎です。 原因としては、薬剤の関与、ウイルス感染などと言われていますが、はっきりとした理由がわからないことがほとんどです。

 

劇症肝炎の初期症状は?

最初の症状としては、発熱、筋肉痛などの感冒様の症状、全身のだるさや食欲不振などが多く見られます。次いで、尿が濃褐色になるとともに黄疸が見られるようになります。最初の症状が軽度で黄疸により初めて病気に気づく場合もあります。
急性肝炎では黄疸が出てからは全身のだるさなど最初の症状は軽くなりますが、劇症肝炎になっていく場合は、これが持続するか逆に悪くなり、やがて肝性脳症が現れます。
肝性脳症の程度は様々です。昼と夜の睡眠リズムの逆転、服装や姿勢が乱れていても無関心でいたりするなど、さらには、場所、人、時間などを間違えたり、興奮して暴れたりするようにもなります。重症になりますと、眠ったままで呼びかけや痛み刺激に反応しない状態(肝性昏睡)に陥ります。
劇症肝炎では、細菌の感染や腎臓、肺、心臓、消化管などの異常、血液凝固の異常など、全身の臓器に高頻度に障害が次第に起こります。そのため、発熱、呼吸困難、むくみ、下血、口腔内や注射針で刺した部位からの出血など、色々な症状が次々と現れることになります。

 

劇症肝炎の診断基準は?

劇症肝炎とは、肝炎のうち初発症状出現後8週以内に高度の肝機能異常に基づいて昏睡Ⅱ度以上の肝性脳 症をきたし、プロトロンビン時間が40%以下を示すものとする。 そのうちには症状出現後10日以内に脳症が発現 する急性型と、11日以降に発現する亜急性型がある。

プロトロンビン時間とは

PTは、血液凝固因子と呼ばれる、血液を固める作用のあるたんぱく質に関連した検査値です。 血液凝固因子は、現在13種類見つかっていますが、そのほとんどは肝臓で作られます。 したがって、肝機能が低下すると、血液中の血液凝固因子が減少して、血液が固まるのに時間がかかるようになります。

 

治療

劇症肝炎では、血漿交換など 特殊な治療が行われますが、効果が期待できない場合には肝移植が考慮されます。

 

劇症肝炎の予後

劇症肝炎の救命率は30%前後であって、その予後はきわめて不良である。 しかし、劇症肝炎肝炎を急性型と亜急性型に分けると、急性型の救命率は60%と改善されているが亜急性型では10%にも満たない

最初の症状に気づいてから肝性脳症が現れるまでの期間が10日以内の場合(急性型)11日以降の場合(亜急性型)に分類されます。

 

③肝硬変

B型やC型肝炎ウイルス感染、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎などによって肝臓に炎症が生じますが、その炎症を修復するときにできる「線維(コラーゲン)」というタンパク質が増加して肝臓全体に拡がった状態のことです。肉眼的には肝臓全体がごつごつして硬くなり、大きさも小さくなってきます。顕微鏡でみると肝臓の細胞が線維によって周囲を取り囲まれている様子が観察できます。そこで肝硬変になると、肝臓が硬いために起こる腹水や食道静脈瘤と、肝臓の機能が低下するために起こる肝性脳症や黄疸、こむらがえりなどが問題となります。

症状

  1. 体がむくむ
  2. 黄疸(白目や皮ふが黄色くなる)の症状がある
  3. お腹に張り(膨満感)がある
  4. てのひらが赤くなる
  5. 肩などに斑点ができた
  6. 倦怠感・疲労感・食欲不振がある
  7. 髪の毛が抜けてきている
  8. 尿の回数が増えた(尿量が減った)

肝硬変が進行すると、お腹の皮膚の静脈が膨れ上がり、放射状にコブのような模様を作る。これを「メドゥーサの頭」という。肝硬変で固くなった肝臓には、血液がスムーズに流入しにくいため、血液は慢性的に交通渋滞を起こす。行き場をなくした血液は、他の迂回路を探して心臓へ戻ろうとするため、全身のあちこちの細い血管がコブのように拡張する。

 教科書にも掲載される正確な医学用語だ。


 
治療
肝機能の悪化をくい止め、現在の状態を維持することが治療の目標になります。
肝硬変の重症度や、原因、患年齢、生活環境によって治療法は様々です。
 

 

④肝癌

肝癌には、肝臓から出現した原発性肝癌と他の臓器の癌が肝臓に転移した続発性肝癌(転移性肝癌)があります。 原発性肝癌の約90%を肝細胞癌が占め、残り約10%のほとんどを胆管細胞癌が占めています。 一般的に肝癌というと原発性肝癌、特に肝細胞癌を指します。

 

肝臓癌の症状

肝臓がんの症状 初期には腹痛や全身倦怠、お腹の張り、食欲不振などがあげられます。 しかし、これらの症状は、他の疾患でも現われるものであり、また、症状があまり強くでないケースもあります。自覚症状がほとんどなくこのことから肝臓は「沈黙の臓器」とよばれています。 進行した場合には、腹部のしこり・圧迫感・痛みなどを訴えます。 さらに進行すると、肝不全の症状として腹水やむくみ、黄疸、肝性脳症が起こってきます。

 

肝癌のステージ

肝臓がんの主な治療法

肝がんの治療法として、主に以下の6つの治療があります。

肝切除

がんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く治療法で、もっとも根治的な治療になります。肝切除ができるかどうかは、がんの状態や肝機能によって判断しますが、多くの場合、がんが肝臓にとどまっていて、がんの数が3個以内、肝予備能が比較的保たれている場合(Child-Pugh分類がAまたはB)は、がんの大きさにかかわらず、肝切除を行うことが推奨されています。

肝移植

(患者)の肝臓をすべて取り出して、ドナー(臓器提供者)の肝臓を移植する治療法です。日本では、近親者などの健康な人から肝臓の一部を提供してもらう「生体肝移植」が一般的ですが、近年では、脳死後のドナーから肝臓を提供してもらう「脳死肝移植」も行われています。

穿刺局所療法

体外から針を刺し、がんを局所的に治療する方法で、手術に比べて簡便で、体への負担が少ないことが特徴です。肝がんの穿刺局所療法として推奨されているのは、ラジオ波焼灼療法(RFA)です。他にも、従来から行われてる経皮的エタノール注入療法(PEI)や経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)があります。

 

※ラジオ波焼灼療法(RFA)

お腹の皮膚の上から特殊な針をがんに直接刺し、そこに通電して針の先に高熱を発生させることで、局所的にがんを焼灼する(焼いて死滅させる)治療法です。一般的には、穿刺に伴う痛みを和らげるために、針を刺す腹部に局所麻酔を行うほか、焼灼時にも鎮痛剤を使用したり、点滴で麻酔をしたりします。焼灼時間は30~60分程度ですが、治療後は数時間の安静が必要です。

ラジオ焼灼療法

塞栓療法

血管造影の技術を応用した治療で、X線で体の中を透かして見ながら、鼠径部(足の付け根)や肘、手首の動脈から肝動脈にカテーテルを挿入し、標的となるがんの治療を行います。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

がんに栄養を送っている血管の血流をせき止めて(塞栓)、がんを死滅させる方法です。
血管造影しながらカテーテルの先端を肝動脈まで挿入し、細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)とがんに取り込まれやすい油性造影剤(リピオドール)を混ぜて注入し、その後、塞栓物質を注入します。肝動脈を詰まらせることでがんへの血流を減らし、抗がん薬によりがん細胞の増殖を抑えます。
塞栓療法の解説    

全身薬物療法

肝切除や肝移植、穿刺局所療法、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などが行えない進行性の肝細胞がんで、体の状態を表す指標の1つであるパフォーマンスステータスが良好、かつ、肝予備能が保たれている(Child-Pugh分類A)場合には、全身薬物療法を行います。

放射線治療

肝がんの放射線治療は、まだ標準治療として確立されていません。しかし、手術や穿刺局所療法が難しい場合や骨や脈管内に広がったがんに対する治療として、放射線治療が行われることがあります。骨に転移したときの痛みの緩和を目的とした治療や、脳への転移に対する治療としては、放射線治療を行うことが勧められています。

 

転移がある場合や肝機能が大きく低下している場合の治療

がんが肝臓以外の臓器に転移している場合は、分子標的薬による治療が行われます。肝機能が大きく低下している場合、薬による治療は肝臓の負担になるため、肝臓移植が選択肢として検討されます。肝臓移植は、65歳以下の場合に適応となります。

選択肢が増えた 分子標的薬

選択肢が増えた 分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞だけを狙って攻撃するように設計されている薬です。そのため、従来の抗がん剤と比べ、効果が高く、正常な細胞へのダメージが少ないために重い副作用が少ないのが特徴です。

肝臓がんに対する 分子標的薬

肝臓がんに対する分子標的薬は近年進歩が著しく、現在、ソラフェニブ、レゴラフェ二ブ、レンバチニブ、ラムシルマブの4種類に増えました。種類が増えると、1つの薬で効果がみられなかった場合も、薬を変更して治療を続けられる可能性が高くなります。

現在は4次治療まで行えるようになり、がんの増殖を長期間抑え続けることも可能になりました。最初に行われる1次治療には、最も効果が現れる確率が高いレンバチニブとソラフェニブのどちらかが使われることが多くなっています。2次治療からは、医師が効果や副作用をみて使う薬を判断します。

分子標的薬の副作用と対処法

分子標的薬の副作用と対処法

レンバチニブの主な副作用は、血圧上昇、腎臓の障害によるたんぱく尿、甲状腺機能の低下です。ソラフェニブやレゴラフェ二ブには、手足症候群や下痢などの副作用があります。手足症候群は、手のひらや足の裏が赤く腫れ、水ぶくれやひび割れができたり、皮がむけたりします。ラムシルマブでは、血圧上昇、むくみ、たんぱく尿などが現れることがあります。

高血圧、たんぱく尿、甲状腺の病気などがもともとある場合は、レンバチニブを使用すると悪化するおそれがあるため、1次治療にソラフェ二ブが使われることがあります。副作用で血圧上昇がみられた場合は、降圧薬でしっかりと血圧をコントロールします。たんぱく尿や甲状腺機能の異常は、症状を自覚しづらいため、検査で定期的に調べることが重要です。手足症候群が現れた場合は、保湿クリームで皮膚を保護したり、やわらかい靴を履くなど、手足の痛みを軽減するための対策をとります。

特にレンバチニブ、ソラフェニブ、レゴラフェ二ブについては、副作用が起こる場合のほうが、がんに対して効果があることが多いと考えられています。副作用にうまく対処しながら、分子標的薬による治療を長く継続していくことが大切です。医師と相談したうえで、計画的に薬の使用を休むなどの対処を行う場合もあります。

※2020年11月、分子標的薬カボザンチニブも承認されました。さらに2022年12月、トレメリムマブも承認されました。
※2020年9月、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブと、分子標的薬のベバシズマブを併用する治療が承認され、保険で受けられるようになりました。

進歩した肝臓がんの治療 主な治療法や選択肢が増えた分子標的薬 | NHK健康チャンネル

肝癌 | 看護roo![カンゴルー] (kango-roo.com)

 

肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む

凄く専門的で難しいですが、患者にとっては命綱。患者さんは是非一読下さい。ダウン

肺癌診療ガイドライン2023年版 (haigan.gr.jp)

肝細胞がんの内科治療と成績|肝臓がん|がん研有明病院 (jfcr.or.jp)

肝がんの治療について|国立がん研究センター (ncc.go.jp)

 

最悪状態になる前に

肝臓病の早期発見は「肝機能検査」
 健康診断で受けられるますよグッ

健康診断で受けられる肝機能検査

健康診断で受けられる肝機能検査には、AST、ALT、γ(ガンマ)-GTPの3項目があり、血液検査で調べます。いずれも肝臓の中で働く酵素です。肝臓の病気により肝臓の細胞が壊れると、これらの酵素が血液中に流れ出るため、血液検査の数値が高くなります。

検査の結果、1項目でも基準範囲より高い値があると、「肝機能異常」と診断されます。成人男性の場合、およそ3人に1人が肝機能異常と診断されていると推定されています。肝機能異常と診断された場合、「二次検査」を受けることがすすめられます。

 

特に「二次検査」がすすめられる人

肝機能異常と診断されて、次に挙げる項目が1つでも当てはまる場合は、肝臓病になりやすい、あるいは、すでに肝臓病である可能性があるため、二次検査を必ず受けることをおすすめします。

特に二次検査をすることをおすすめする人

 

①家族に肝臓病のある人がいる

C型やB型などのウイルス性肝炎は、血液・体液を介して感染するため、家族は感染する可能性があります。

 

②尿の色が濃くなった

古くなった赤血球を肝臓が分解する過程でつくられる、「ビリルビン」という黄色や緑色をした物質の影響によるものです。

ビリルビンの影響で尿の色が濃くなる

ビリルビンの多くは、肝臓から胆管を通り十二指腸に運ばれ、便に含まれて排せつされます。

肝機能は低下するとビリルビンが血管に漏れ出す

ところが、肝機能が低下すると、ビリルビンは胆管をすばやく通過できなくなり、周りの血管に漏れ出します。それが尿として排せつされるため、オレンジや褐色(紅茶のような色)に尿の色が濃くなるのです。

 

③あぶらっこいものを食べなくなった

肝臓は食べ物から吸収された脂肪を処理する働きをしています。肝機能が低下すると、脂肪を処理しきれなくなるため、あぶらっこいものを食べたくなくなってきます。

④年々体重が増えている

肝臓に脂肪がたまる脂肪肝が起こっている可能性があります。特にへそ周りが太くなる「内臓脂肪型肥満の人は注意が必要です。

「内臓脂肪型肥満」についてはこちら

 

⑤お酒を毎日のように飲んでいる

肝臓にはアルコールを処理する働きもありますが、その量が多くなるほど肝臓に負担がかかるため、肝臓の機能が低下している可能性があります。

必ず二次検査を受けないといけない人は

こうした項目で当てはまるものがない場合でも、健康診断などで3つの値がいずれも2年続けて高かった人は、肝臓の病気の可能性が高いと考えられます。その場合も必ず二次検査を受けて、肝臓の状態を詳しく調べることが大切です。

 

肝臓の病気を確定診断する「二次検査」

肝臓の二次検査

二次検査では、次のような検査が行われます。

肝炎ウイルス検査

C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスに感染していないかどうかを、採血して調べます。

 

肝線維化マーカー検査

採血により肝臓の硬さを調べるのが、「線維化マーカー検査」です。健康な肝臓の場合、細胞と毛細血管の壁の間には特に何もありません。

肝臓の炎症が続くと、肝臓が硬くなっていく

ところが、肝炎ウイルスの感染や脂肪肝などで肝臓の炎症が続くと、細胞と毛細血管の壁の間に「線維」ができるため、肝臓が硬くなっていきます。線維化の進行に伴って、血液中にこの線維の成分である「Ⅳ型コラーゲン」などが増えます。このⅣ型コラーゲンなどの量を調べることで、肝臓がどの程度硬くなっているかがわかります。

 

腫瘍マーカー検査

肝臓がんの可能性を、採血して調べます。

 

超音波検査

体の外側から肝臓に超音波を当て、肝臓の断面の画像をみることで、肝臓の状態を調べる検査です。脂肪肝がないかどうかがわかります。

肝臓の超音波画像

超音波画像で、肝臓が白っぽく写ると脂肪肝と診断されます。上の画像では左の健康な人では、肝臓と腎臓の色の濃さにあまり差がありません。それに対し、右の画像では、肝臓よりも腎臓のほうが色が濃く、黒っぽく写っています。これによって脂肪肝であることがわかります。

 

肝硬変を調べる検査

二次検査で肝硬変を発症しているか調べる必要がある

二次検査で、肝炎ウイルスの感染や、脂肪肝、肝臓が硬くなっている線維化などがわかった場合は、「肝硬変」を発症しているかどうかを調べる必要があります。そのために行われるのが、超音波エラストグラフィやMRエラストグラフィなどの画像検査です。

MRエラストグラフィ

 

MRエラストグラフィは、皮膚の上から肝臓に振動を与え、その波が伝わる速度を計測することで、肝臓の硬さを色分けして表示します。上の画像の右側がエラストグラフィで、やわらかい部分は青く表示され、硬い部分は赤く表示されています。右下の画像は肝臓の多くの部分が赤くなっており、肝硬変であることがわかります。

これらの検査で肝臓の状態を詳しく確認して、肝臓の病気の診断と治療が行われます。

肝臓の病気を早期発見「肝機能検査」とは 特徴と注意すべき症状 | NHK健康チャンネル

 

まとめ

健康診断を必ず受けましょう。

自覚症状が無いからと安心せず、肝機能検査データALT>30なら必ず再検査

しましょう。

脂肪肝の内なら、健康状態が回復します。

誰有ろう自分の体、自分自身でしっかり管理しましょう。

それは、貴方のためであり愛する人のためでもあるのです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございましたお願い

それではまたお会いしましょうねバイバイ