小さいころ、僕はよく、
「ゴメンして」
という言葉を養母や祖父母に言っていた。
これは、一見すると「謝ってちょうだい」というような意味に見えるかもしれないが、そうではなかった。
むしろ、その逆で、「許してちょうだい」という意味だった。
僕はまったく意地っ張りではなかったので(今でも、まったく意地っ張りではないが……)、養母や祖父母に怒られたときにも、「ごめんなさい」と謝るのは、少しも苦痛ではなかった。
それよりも、謝ったにも関わらず、養母達の機嫌が直らずに、いつまでも暗い雰囲気で過ごす時間が耐えられなかった。
そんなときに、「ゴメンして、ゴメンして」と訴えるわけだ。
一刻も早く、「ゴメンして(許して)」もらって、安心して、また楽しい時間を過ごしたかった。
……
それは、ともかく。
この「ゴメンして」、僕のスラングのようなものだと思っていたが、じっくり考えてみると、なかなか文法的にも理にかなっている。
つまり、「御免(=容赦)をしてほしい」と頼んでいるわけだから、まったく文法的に正しい。
考えれば、「ごめんなさい」も同様だ。
「御免(=容赦)をなされ」と言っているわけだから。
小さいころの僕が、「御免」という意味を捉えていたとは、まさか思えないのだが、感覚としては、ズバリ、正解。
……
妻さんと、ときに喧嘩することもあるのですが、結構、ちゃっちゃって謝っちゃうのは得意です。
さすがに、「ゴメンして」とは、言いませんが、いつまでもどよーんとしているのは嫌いです。(好きな人はいないかとは思いますが……)
ということで、「ゴメンして」傾向は、今も続いているわけですが、この「ゴメンして」を、40過ぎのおじさん語に翻訳すると、
「なに、いつまで怒ってんだよ」
となります。