ゴメンして | 榊邦彦 OFFICIAL BLOG new

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けれど一方で、言葉や愛がまったく立ち向かうことのできない不安や困難も、
また、存在しないのではないか……僕は、今そう思っている。
『100万分の1の恋人』榊邦彦(新潮社)

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小さいころ、僕はよく、

「ゴメンして」

という言葉を養母や祖父母に言っていた。

これは、一見すると「謝ってちょうだい」というような意味に見えるかもしれないが、そうではなかった。
むしろ、その逆で、「許してちょうだい」という意味だった。

僕はまったく意地っ張りではなかったので(今でも、まったく意地っ張りではないが……)、養母や祖父母に怒られたときにも、「ごめんなさい」と謝るのは、少しも苦痛ではなかった。

それよりも、謝ったにも関わらず、養母達の機嫌が直らずに、いつまでも暗い雰囲気で過ごす時間が耐えられなかった。

そんなときに、「ゴメンして、ゴメンして」と訴えるわけだ。

一刻も早く、「ゴメンして(許して)」もらって、安心して、また楽しい時間を過ごしたかった。

……

それは、ともかく。

この「ゴメンして」、僕のスラングのようなものだと思っていたが、じっくり考えてみると、なかなか文法的にも理にかなっている。

つまり、「御免(=容赦)をしてほしい」と頼んでいるわけだから、まったく文法的に正しい。

考えれば、「ごめんなさい」も同様だ。
「御免(=容赦)をなされ」と言っているわけだから。

小さいころの僕が、「御免」という意味を捉えていたとは、まさか思えないのだが、感覚としては、ズバリ、正解。

……

妻さんと、ときに喧嘩することもあるのですが、結構、ちゃっちゃって謝っちゃうのは得意です。
さすがに、「ゴメンして」とは、言いませんが、いつまでもどよーんとしているのは嫌いです。(好きな人はいないかとは思いますが……)

ということで、「ゴメンして」傾向は、今も続いているわけですが、この「ゴメンして」を、40過ぎのおじさん語に翻訳すると、

「なに、いつまで怒ってんだよ」

となります。