「ALWAYS 続・三丁目の夕日」……神は細部に宿る | 榊邦彦 OFFICIAL BLOG new

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けれど一方で、言葉や愛がまったく立ち向かうことのできない不安や困難も、
また、存在しないのではないか……僕は、今そう思っている。
『100万分の1の恋人』榊邦彦(新潮社)

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 「ALWAYS 続・三丁目の夕日」が、明日、テレビ放映される。
 かつて映画館で観て心打たれたのを思い出す。
 前篇も良かったが 「続」も、負けず劣らずの出来だ。

 派手な設定も、派手な展開も、何もない作品だが、穏やかに切実に胸を打つ佳品だと思う。〈「佳品」どころか、本当は「大傑作」だと思うのだが、そういう派手な形容詞があまり似合わない映画でもある。〉
 泣き・笑い・人情の要素がたっぷりで、日本映画の王道とも言える。

 ストーリー的な部分はネタばれもあるので、書かないとして、一つ特筆したいのは、特殊撮影技術だ。
 特殊撮影といっても、大規模な爆破シーンとか、宇宙戦闘シーンとか、もちろん、そういうのではない。
 (ギャグでゴジラが暴れるシーンはあるけれど……)

 昭和30年代初頭の東京の風景が完璧なまでに再現されている。
〈僕はまだ生まれていないので、実際に目にした訳ではないのですが……〉
 羽田空港の様子、日本橋の街並み、驚くばかりだ。

 スタッフのこだわりもすごい。
 たとえば、特急こだま号の内部のシーンでは、窓にかかったカーテンまで、資料を調査して再現したという。 
 羽田空港から飛び立つDC-6Bというプロペラ機にいたっては、現在も利用されている同じ型の飛行機の「音」を録りに、アラスカまで行ったということだ。
 そういう細部のこだわりが、この作品を上質なものにしているんだろう。

 そんな細部に手抜きをしたところで、まず、ほとんどの観客には見抜けない。それでも、そういった細部にまでこだわる「愛着」「誠実さ」が、作品全体の資質を上げるのは間違いない。
 「志」というか、「祈り」にも近い誠実さだと思う。
 
 細部をちょろまかして、雑に作られた作品は、「作品に捧げる作り手の魂」もない。

 「神は細部に宿る」……好きな言葉だ。