現在発売中の『小説新潮八月号』は、医療小説最前線というテーマでまとめられている。
その中に、書評家の東えりかさんが「戦後の医療小説30選」という12頁にわたる長い書評を書いている。
『海と毒薬』(遠藤周作)に始まって、『白い巨塔』(山崎豊子)や『恍惚の人』(有吉佐和子)など、社会に命の問題を提起してきた名作の数々が並んでいて、興味を持って読んでいったのだが、最後の「医療小説の新潮流」と題する章の中に、『100万分の1の恋人』が批評されていて、驚いた。
「ヒトゲノムの解析が新たに人間につきつけた命題」を取り扱った恋愛小説ということで、深く暖かく批評して下さっている。
うれしいと同時に、言葉を紡いでいく覚悟と責任を痛感する。
身震いするような時間だった。