「徒然草」と「翔んだカップル」 | 榊邦彦 OFFICIAL BLOG new

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けれど一方で、言葉や愛がまったく立ち向かうことのできない不安や困難も、
また、存在しないのではないか……僕は、今そう思っている。
『100万分の1の恋人』榊邦彦(新潮社)

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高1で「徒然草」を扱うときに、好んで取り上げる章段が49段。(先日も取り扱いました)
 まあ、短く言えば「いつ死ぬか分からないんだから、今を精一杯生きろ」みたいな話。(兼好先生、短くまとめてごめんなさい)

 この章段を読むたびに、思い出すのが、高校生のときにはまった漫画『翔んだカップル』(柳沢きみお)だ。
 僕が高1のときに、主人公たちが高1。高2になったら高2。高3になったら高3。受験期まで完全にシンクロしていた。
 時期だけではない、勉強・進路・恋愛・受験……主人公たちの等身大の悩みが、自分になんともシンクロして、毎週、息を詰めて読んでいた。志望大学までほとんど同じだった。

 中でも強烈だったのが、登場人物の杉村秋美さんが、だらしない時間を過ごす主人公の勇介に言った一言。
「私は、明日、死ぬと思って生きてるわよ」
 僕自身、将来への不安を抱えながら、あがきつつ、焦りつつ、それでも無為な日々を過ごしていたから、まるで自分が叱咤されたように感じて、忘れられない言葉となった。高校時代から、50代まで、ときどき思い出してきた言葉だ。

 数年前のこと、生徒向けに企画したキャリア教育の講演会で、この「明日、死ぬと思って生きる」というフレーズには、続きのフレーズがあることを知った。
 その会に講師としてお呼びした岩瀬大輔さん(ライフネット生命社長)が、会の最後に、後輩たちへのメッセージとして伝えた言葉が、
「明日、死ぬと思って生きる。……永遠に生きると思って夢を見る」
 だった。
 
 数十年の時間を貫いて、自分が撃たれたようだった。
 岩瀬さんの高校時代に、僕は岩瀬さんの前の教壇に立っていた。巡り巡って、岩瀬さんから聞いたフレーズが、高校生のときの僕まで貫いた感じだった。