編集者・中里圭太 第16話「そして帰路に着く」 | 占星術小説家@酒井日香の占い死ね死ねブログ

最近、うちの会社(介護施設)に入所している

98歳のお婆ちゃん

 

「よっしー(仮)」

 

に馬券を占わせるとやたらにあたると

いうことで会社内でものすごい競馬が

流行っています。。。( ´(ェ)`)

 

昨日は職場の若い子がよっしーの

言うとおり買って大穴当ててました☆

 

よっしーの占い、ほんとすごいです!!

 

よっしーを占い師デビューさせたい。。。。ヽ(;´ω`)ノ

 

↑ 疎遠だった実家に急に戻ったと思ったら、会社の通帳を

  持ち出してどこかへ消えた息子を心配する同じ編集者の父。

  東京と京都を往復して、夜の高速道路を運転する中里は

  疲れ切っていた。

 

 

 

                     「第16話」

 

 

「……ちょっとね。あの……。うちで持ってるそのぅ……、全集を、ぜんぶ買いたいっていう人が東京にいたもんだから……。そのお金を預かったのでそのぅ……」

 中里は苦し紛れの言い訳をした。それから父に、100万円ほど残した通帳を渡した。この記帳履歴を見れば怪しいのはすぐにバレるのだが――。

 父はすぐに通帳を確認した。大金が振り込まれたあと、すぐにあちこちに割り振られて送金されているのがわかった。

「なんだ、桃源舎じゃないか! 桃源舎になんでうちからこんな大金が??」

 眼を丸くして驚く父には答えず、中里はずかずかと家の中に上がり込むと、家の真ん中にどーんと構える「宇宙統一教」の祭壇に対峙した。

 そう――。実は中里の実家は「宇宙統一教団・京都支部」もかねているのだ。中里の父はその宗教の熱心な信者なのだ。亡くなった母も宇宙統一教の信者であった。バリバリの宗教一家なのである。「楽学舎」はもともとは、宇宙統一教団が教祖や幹部たちの出版を行うために作られた出版社なのだった。

 宇宙統一教団は、神道系の宗教団体である。その祭壇も神道式だ。祭壇の中心には宇宙創造のご祭神、「天之御中主神」と宇宙統一教団オリジナル神「統乃(すべらの)大神(おおかみ)」が宿る鏡と(れい)()(あめの)(むら)(くもの)(つるぎ)八尺瓊(やさかにの)勾玉(まがたま)のレプリカが置かれ、五色旗や神饌が並べられていた。その横に今は亡き中里の母――、中里和江の写真が微笑んでいた。

 中里は熱心に祭壇に祈りを込めた。どうか、碧空社に騙されたお客たちに恨まれませんように、自分と家族に災いが起こりませんようにと祭壇に祈った。

「圭太……。お前……」

 いきなり帰ってきたかと思ったら、突然のお祈りだ。さすがの父も息子の様子がおかしいことがわかった。

「お前、一条さんのところで働くようになってから……。なんだか、目つきが悪くなってしまったなぁ……」

「………………」

 中里は祭壇から顔を上げると、踵を返して無言のまま、またずかずかと廊下を通って玄関に行き、靴を履いた。

「圭太お前、ちゃんと食べているのか?」

 父が靴をつま先に突っこんでいる中里の背中に声をかけると、父は、自分で自分の発言がおかしくなって後ろ頭を掻いた。

「ちゃんと食べてるって、おかしな質問だな、ははは。美穂子さんがいるのに、ちゃんと食べてないなんてこたぁないか」

 照れている父をそのままに、中里は振り向きもしないで家から出て行こうとするから、父はさすがに「圭太!」と大きな声を出すと、息子の腕をつかんだ。

「いったいなんなんだ突然。一条のところで何かあったのか? 美穂子さんは?? 勇太は?? 今日は家族で来たんじゃないのか? せっかく来たんだからゆっくりしていったらいいじゃないか、な??」

 中里は、父の腕を振り払った。

「悪いけど父さん。今日ここへ来たのはちょっと用事があったからっていうだけ。ちゃんとそのうち帰省するからさ。心配しないで」

 中里は父親に思いっきり笑って見せた。ひとり息子に苦労ばかり掛け続けている父は、何も言えなくなった。

「そう、か……。ふ、二人目が出来たんだろ? 今度は男か? 女か?」

「……性別がわかるのはまだ先だ。性別が判明したらお父さんに知らせるから。じゃあ」

 中里は父の肩を軽く二度ほど叩くと、そのままそそくさと玄関を出ていってしまった。

「圭太……」

 父は玄関に立ち尽くすと、呆然とした。なんだか息子の体に何とも言えない「影」が、まつわりついているように見えた。父は不安になり、すぐさま家の中心の祭壇に向かうと、中里のために祈った。

「統乃大神様、天之御中主神、そして死んだ母さん――。圭太におかしな影が……。どうか圭太をお守りください……。どうか、どうかっ……」

 父は祭壇の前に跪いた。





**

 車に戻ると村田が退屈そうに、タバコを吹かして待っていた。

「早く東京に戻ろうぜ。一条さんに報告しねぇと」

「……そうですね……」

 疲れ切った表情で、車のエンジンを吹かす中里であった。京都南インターから上りの高速道路に乗ると、あたりはすっかり日没である。東京に到着するのは夜の8時過ぎだろうか……。

 助手席で呑気にあくびをしている村田が、急に「おっ!」と言った。懐から携帯電話を取り出すと「一条さんからだ」と言った。

「一条さんから?」

 ステアリングを握りながら、中里が思わずチラリと村田を見た。

「入金、確認したってさ。カネのこととなると本当に素早いよなぁ。んで、このあと神楽坂の料亭に来いってさ。今日のご苦労さん会をするって」

「神楽坂の料亭……」

「まぁ、メシくらいおごってもらったって、バチは当たんねぇんじゃねぇの?? 自ら手を汚せない一条さんのために、俺たちが動いてやったんだから」

「………………」

 

 

(第17話に続く)