追記 ⑧台湾花蓮に行ってみることにした 「台湾のバイクは元気だった」 | 堺市の交通まちづくりを考える会

追記 ⑧台湾花蓮に行ってみることにした 「台湾のバイクは元気だった」

 2024年5月6日〜8日の日程で、台湾花蓮での地震被害と支援について調査することにした。その前に1999年9月21日に台湾で起こった921大地震について調べる必要があると考え、台湾西部に位置する台中の921地震教育園区にも訪問した。


 

 

 台湾の市街地で有名なのは上述の台北市台北橋における「バイク雪崩」だろう。動画サイトでも多く投稿されている。あの様な絵面になるのは、パーソナル交通手段の7割がバイクであることに加え、バイクと車の動線を交わらないようにすることで、事故の原因を減らしている工夫があるからだ。つまり加速の良いバイクが車の前から発進すること。またバイクは歩道側を走ること、つまり中央線に寄ってから曲がるのではなく2段階右折すること。(台湾は右側通行なので日本とは逆

 いずれにしても、自転車と軽自動車が皆無の台湾において、パーソナル交通手段の7割を占めるバイクを中心にした合理的な交通ルールにはいつも驚かされる。

 

↑(左上)バイクに跨ったピクトグラム(マーク)が記されているところでバイクは信号待ちする。車はバイク後方からの発進だ。(右上)比較的交通量の多い交差点は大きさに関わらず段階右折することを決められている。(左下)2段階で曲がるバイクは横断歩道よりも前の白線内で信号待ちして、青信号になれば真っ先に発進する。

 

↑信号待ちでは、2段階で曲がるバイクが先頭、2番目に直進バイク、最後は車の発進。こういった工夫で大量のバイクとの事故を減らす事ができている台湾。

 

 一方で、日本で問題になっている「車の間を猛スピードですり抜ける」バイク運転は、車と接触する可能性が極めて高い。更にこういったすり抜けバイクは車が停滞し始めると急に車の前に割り込んだり、車を縫うように走ることが多い。つまりバイクと車の動線が交差するバイク運転は危険極まりない。こういった命知らずなバイク運転を台中と台北の市街地では見かけなかった。

 

↑バイクすり抜け危険運転取締り強化(カンテレNEWSより)

 

↑台湾観光ではこういった歩行者用の信号を経験する。日本では横断中に走らないように交通教育されているが、台湾では逆。赤信号が近づくと青いピクトグラムが走り出す様が妙に笑える。また赤信号での待ち時間が表示されるのも合理的な発想。おそらくは数字は残り時間(秒)を表していると思われる。

 

↑たまたま面白い道路清掃の様子を見かけた。

 

↑(上)建物の軒に駐車するバイクをよく見かける。駐車してよいのかどうかは不明。(中)広い道路では道路脇に白線で囲まれたバイク駐車場があり、満車だ。(下)台中駅前の警察署の前には白線で囲まれた警察車両専用のバイク駐車場がある。

 


 

 合理的な交通ルールの台湾交通事情ではあるが、それ以上に公共交通に頼れない、パーソナル交通手段であるバイクや車の増加が台湾の死亡事故増加につながっているようだ。以下の記事を参考。こちら

 

 

 上記は交通専門家の記事ではあるが、なぜだかしっくり納得できなかった。統計的に論理展開しているが、具体的な運転意識や運転パターン、動線については触れられていない。交通手段の議論の前に、移動コストと利便性の議論が必要ではないのか?

 運転しているのは車両の種別にかかわらず「人」だということと、「事故=動線の交差」という見方が欠けている。「人」はいい加減で自己中心的で気分次第の運転をする。法律はあくまで道路上の規範でしかない。またタイミング(時間)と場所を共有することを事故とするならば、これらの共有条件を満たさなければ事故は起きないという観点で生身の運転を観察することが肝要。

 

 台湾の大通りでは高額工事であるフェンスが張られる中央分離帯がない。支柱が立地する高架下でさえ中央分離帯がない(道路清掃の様子を捉えた動画を参照)。逆走や速度超過の要因にもなる中央分離帯がないことが羨ましい。物理的に分けるので逆走が生まれる。物理的に分けるので高速道路に酷似して速度超過が起こる。また一旦停止の表示などはあまり無いので交通優先を考えて劣勢の車両は確認を幾度も行っている印象だった。

 これらはひとたび事故が起こると死亡事故につながりやすが、皆そのことを理解していることで一定の制限につながっているのではないだろうか?怪我をしたくないのは皆同じだから。

 
 最も多い原因は交通事故全体の30%を占める「安全不確認」で、「一時停止や減速をしたにもかかわらず、十分な安全確認をしなかったために事故につながった」。次は全体の15.9%を占める「脇見運転」で、携帯電話の操作など。次は全体の11.0%を占める「動静不注視」で「事故相手に気付いていたけど、危険性を軽視して事故を起こした」というもの。運転に集中できない「漫然運転」は全体の7.8%を占める。5番目にやっとハンドル操作を誤ったり、適切な運転操作ができなかった「運転操作不適」。
 安全意識の低さに起因する事故原因が65%であることからも分かる通り、運転者の意識をどう変えるかが事故対策の方向性だといえる。矢印信号やトリックアートのような路面標示も最近見られ、種別ごとの走行レーンなどできることは山程ありそうだ。取り締まりや法整備の厳格化では限度がある。
 逆説的ではあるが、台湾の事故を起こしたくないという危機感からくる「安全運転意識」も日本の交通安全の手法として取り入れることはできないか考えてしまう。白線を平均台と考えるとまっすぐに歩けないことと同じように。