■ 今日のおすすめ
『「アホの壁」で自滅する中国経済―「官僚の壁」を越えて覚醒する日本経済―』
(高橋洋一 石平著(対談)ビジネス社)
■ 「アホの壁」で自滅する中国と、「官僚の壁」を越える日本(はじめに)
紹介本は、著者の高橋洋一と石平の対談を文字起しして、2026年4月15日に発刊されました。両者は互いを高く評価し、YouTubeチャンネル「高橋洋一チャンネル」で対談を重ねています。
高橋氏は、紹介本の中で、石平氏を次のように讃えています。「日本が直面する危機の正体と中国共産党の手口を知り尽くした政治家」と。一方、石平氏は、別の場所で、高橋氏を次のように讃えています。「日本でトップクラスの、世界的視野を持った、データ分析力を持つ経済学者」と。
紹介本は、この様な卓越した両著者による対談を通して、世界、日本、中国の経済状況の真実を知る、またとない、チャンスです。
ところで、紹介本の題にある「アホの壁」とは何を意味しているのでしょう。「アホの壁」は、中国共産党の独裁体制やその経済運営が抱える構造的な欠陥を指しています。具体的には、市場原理を無視した強引な政策決定、正確な統計データを扱えないが故に対策も打てない体制、国民生活よりも、「国威発揚」目的の宇宙・軍事や(AIなどの)先端技術を優先する経済運営に加え、先端技術開発のAIにおいても、正しい学習をさせれば答えは「反・共産党」になることから、「嘘」をいう「アホAI」にしてしまう等、経済成長を阻む多くの「アホの壁」が存在するという指摘です。加えて、独裁体制ゆえに軌道修正ができず、自らの首を絞めるような愚策(アホな施策)を繰り返してしまう状態を揶揄しています。
一方、日本では高市政権がスタートし、「官僚の壁」を乗越え覚醒し、日本経済が黄金時代を迎えようとしていると、紹介本は、指摘します。まさに、『「アホの壁」で自滅する中国』と『「官僚の壁」を乗越え、覚醒し発展する日本』を対比させています。
それでは、次項に於いて、紹介本の要約でもある『「司令塔なき泥船」の中国』、『「未曾有の黄金時代」を迎える日本』の2つのテーマについて、記して見たいと思います。
■ これからの中国と日本はどうなる?!
【「司令塔なき泥船」の中国】
紹介本は、「司令塔なき泥船」について、不良債権を処理する仕組みがないが故に不良債権が積み重なり続けていること、不動産バブルの崩壊が今も続いており最近では国有系の「最も安全な不動産企業」と言われていた「万科企業」が債務不履行に陥ったこと、2,900兆円(日本の予算の20年分。含む隠れ債務)にのぼる、返済の目途無き地方政府の借金、引続く若者の高失業率に加え、外国資本の流失による一般の失業者増加、これらに加え、政治における終わりなき粛清による混乱など、残念ながら「司令塔なき泥船」から脱出できる要素は何一つ無いどころか、負の連鎖に陥っていると指摘します。
この様な泥船から抜け出せない、「メタ」な要素を、共著者の石平は、『多くの日本人に知っていただきたい』として、二つ、指摘しています。
まずは、共産党の行動原理である「地痞(ディーピー)文化」です。地痞とは、日本語では“ならず者”です。石平は、次のように言います。『中国の長い歴史を振り返れば、権力闘争の中で生き残るために、欺瞞、恫喝、裏切り、暴力を厭わない行動様式が一種の成功モデルとして洗練されてきた歴史が有ります。これは、文化的に内面化された「ならず者の合理性」と捉えることが出来ます。現代の外交の場で、中国共産党がしばしば見せる高圧的な恫喝、露骨な非礼、ルール無視の振る舞いは、その表れです。中国の権力闘争の歴史を貫いているのは、徳のあるものが生き残る“順淘汰”ではなく、むしろ、より野蛮で、より狡猾で、より倫理を顧みないものが勝ち残るという“逆淘汰”の歴史です。この文化は、王朝時代を超えて、現代中国の権力構造に受け継がれているのです。つまり、中国の権力行動は、倫理や国際規範が前提ではなく、“逆淘汰”に依ることを忘れてはならない』と。
二つ目は中国共産党指導部の意思決定や権力行使の深層に、今なお流れ続ける流氓(りゅうぼう:日本語では“ごろつき”)的価値観です。流氓的価値観とは地痞文化を内面化・DNA化したものを言います。石平は、次の様に言います。『歴史的に存在してきた流氓的価値観を、偶発的なものではなく意図的かつ体系的に国家権力の中枢に組み込んだのは毛沢東です。この価値観が社会全体に噴出したのが文化大革命です。「越粗魯、越革命(粗野であればあるほど革命的)」というスローガンのもと、知識は蔑まれ、理性は否定され、親を密告し、破壊を誇示することが奨励されました。中国社会が長い歴史の中で積み重ねてきた文明的基盤は、ほぼ壊滅状態に追い込まれたのです。ここで重要なのは、この“無法無天(社会的規範を恐れず法も天も顧みないの意)”の精神が毛沢東の死とともに消えたわけではないことです。それは、形を変えながら、現代の中国共産党指導部の意思決定や権力行使の深層に、今なお脈々と流れ続けています。このことを理解しない限り、中国という存在を正確に理解することは出来ないのです』と。
こうした流氓的価値観や地痞文化の中で、中国の国家権力は、自己保身にのみに拘り、李克強のような比較的知識人で国際感覚を持つ、“泥船”から救出する力を有する、指導者が、次々と淘汰されていったと、石平は、指摘します。まさに「司令塔なき泥船」の元凶です。
また石平は、“泥船”とは別の観点ですが、日本は、流氓的価値観に基づき行動をする中国に対しては、然るべき外交姿勢として、言葉による抗議や遺憾表明ではなく、「力による抑止と応報する外交」を行う必要があると主張します。
ここで筆者の頭に浮かんだことがあります。2025年11月に起きた、中国の大阪総領事の薛剣(せつけん)による、「汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」とXに投稿した事件です。外交官としてこのような投稿をする事、またこの件で外交交渉に北京に行った日本の金井外務省アジア大洋州局長に対し、中国の劉勁松(りゅう けいしょう)外交部アジア司長が、ズボンのポケットに手を入れたまま迎えた事は、背景に流氓的価値観が在るのだと思うと納得できます。中国とは、我々の倫理とは懸け離れた邪悪なDNAを持っている国と思い、対応する必要があります。
【「未曾有の黄金時代」を迎える日本】
紹介本で、共著者の高橋洋一は「これからの日本は、『未曾有の黄金時代』を迎える」と言います。
その要因として、首相の高市が、菅・岸田・石破と続いた「逃げの政治」ではなく、自らのビジョンである「日本列島を、強く豊かに。希望に満ちた日本の未来を。そして、それを、次の22世紀の若い世代に残そう。日本を守り、未来を拓く、皆様と共に」に沿い、「努力、努力、仕事、仕事」と睡眠時間を削ってでも、「強く豊かな国家」の構築に向けて、嘗ての妥協を重ねながらの政策決定ではなく、官邸主導で「決めて実行する」政治を実践していることを挙げています。
この結果、高市政権が発足して約半年を過ぎ、この間に今までの政権では実現できなかった政策課題が次々と実現しています。ガソリン暫定税率の撤廃、103万円の壁の178万への引上げ、国家情報局・国家情報会議の設置法案可決によるセキュリティー・クリアランス体制構築への前進、不法外国人に対する取締・国外追放や入国管理規制など、実施すべき政策を実現する速さは驚くばかりです。
さらに驚くことは、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、「救難、輸送、警戒、監視、掃海」に限定する「5類型」の制約を撤廃し,戦闘機や護衛艦など殺傷・破壊力のある装備品を原則として輸出できるようになり、また、「特段の事情」があれば、例外的に戦闘当事国への輸出も認め、武器輸出を厳しく制限してきた日本の防衛政策を大きく転換したのです。これにより、同盟国との防衛連携の強化、日本の防衛産業の維持・発展と併せて日本の防衛力の強化に繋がる等、安全保障政策が大きく前進しています。
この様な「強く豊かな国家」を創り上げる政策の実現の中で、経済面での「未曾有の黄金時代」の到来を可能にするのは、高市政権の、過去の政権のプライマリー・バランス固執政策から転換する、「責任ある積極財政」政策です。
「責任ある積極財政」政策の実現可能性について、共著者の高橋は、「大丈夫」と、次の様に断言します。『あの「Z(財務省)」は、経験則で言えば、政権発足から2~3ヶ月は静かにしているが、その後必ず、「このままでは将来が危ない」等という、お決まりのネタを言ってくるだろう。しかし、高市政権はそれに対しては準備が出来ている。株価は上がり、雇用も安定している。これは財務省の理屈を跳ね返すための非常に強力な材料です。市場が好反応を示している限り「緊縮しなければ危ない」という話は通らない。数字(財政が健全であることを示す)と実績がある限り、財務省が以前のように主導権を握るのは難しい』と。
更に加えて、片山財務大臣の支援があります。片山大臣は、着任後省内向けに、また最近では新規入省者に対し、財務省の新たな理念を共有しようと働きかけています。つまり、財務省の役割を「予算を削る番人」から、「成長をプロデュースするエンジン」へと、新たな理念を示しています。そして、新入省者に対しては、『既存の「緊縮財政の空気」に飲まれず、「2040年頃までにGDP1000兆円規模に拡大させる」という大きな目標に向かって、クリエイティブに政策を立案するように』と促しています。
片山大臣は「ザイム真理教」の体質を変えるべく、2026年2月から、財務省による、従来の「X(旧ツイッター)」に加え、有料ブログ「note」を通した、SNSによる、財政政策及び方針の発信を始めました。筆者は、有料ブログ「note」によるSNSの開始を、「黙って悪いことをする」財務省から、「正しい情報発信をして、正しい政策を行う」財務省へ、加えて、「SNS上での国民の声に敏感に反応する」財務省へと、体質を変えようとしている片山大臣の方針と推測し、期待をしています。
また、2026年4月10日、片山大臣は、税金の優遇措置や補助金の見直しを議論する関係閣僚会議の場で、税金の優遇措置や補助金の効果について、6月下旬にもデータに基づいた検証結果を公表するように各省庁に求めました。米政府効率化省(DOGE)の日本版である「日本版DOGE」の取り組みが本格的に始動しました。
これらは、まさに「責任ある積極財政」をBackupする取組みです。
また、外交面では、30ヶ国のNATO大使団が揃って高市詣でをするなど、高市首相の、「約束を守るリーダー」「トランプからの格別の信頼」「ぶれない安全保障政策」等が要因となり、世界各国から頼りにされています。国内政策に限らず外交も含めた「未曾有の黄金時代」の到来でしょうか。
■ それぞれの国の経済成長を左右する「メタ」を把握する(むすび)
これからの中国、日本はどのような道を歩むかを見てきました。表に出てくる数字や事実に加え、表に出てこない「メタ」も把握できたのではないでしょうか。
これらの情報を、経営戦略を策定する上で生かしていきませんか。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。