■         今日のおすすめ

①  『「付加価値のつくりかた」―キーエンスの一体何がすごいのか?―』

                         (田尻 望 著 かんき出版)

②  『「数値化の魔力」

   ―キーエンス「行動の見える化」で自分もチームも10倍速で進化する―』

                     (岩田 圭弘 著 SBクリエイティブ)

 

■         「付加価値のつくりかた」と「数値化の魔力」が高収益を生む(はじめに)

 二つの著書を、紹介本として採り上げるに至った契機は、本ブログ“経営コンサルタントの本棚”で採り上げた以下の二つの書籍が称賛する“キーエンス”に、興味を覚え、この高付加価値・高収益企業から、何らかの“まねぶ(まねる+まなぶ)”を得たいと思ったことに始まります。

 一つ目の書籍は『「シン・日本の経営」-悲観バイアスを排す-(ウリケ・シェーデ著、日経BP日本経済新聞出版)』(私の本棚2025.7.22)です。ここでは、キーエンスについて次の様に称賛しています。

 『キーエンスは、停滞論(失われた30年)を覆して最高益を叩き出し続けてきた「シン・日本企業」のトップランナーである。また、キーエンスは、小兵乍ら多彩な技で大型力士を倒す戦略である「舞の海戦略(技のデパート)」の体現者であり、表舞台の消費者からは見えにくくとも、グローバルなものづくりの最先端(インサイド)に深く食い込み、代替不可能な高い付加価値を提供し続ける「新時代の日本型経営」の理想像である』と。

 また、著者のウリケ・シェーデは、他国が容易に真似できない、高付加価値な素材や部品、生産機械などを手がける日本企業を高く評価しており、それらを「ジャパン・インサイド」と呼んでいます。キーエンスは、そのビジネスモデルで驚異的な高収益を上げている先進的な「ジャパン・インサイド」企業であるとして、高く評価しています。

 さらに、著者のウリケ・シェーデは、キーエンスは、顧客自身も気づいていない潜在ニーズを先取りして、高利益率の商品を開発する仕組み(Process)や、それを支える徹底した人材マネジメント(People)の観点から、優れた「シン・日本企業」に共通する特徴である「7つのP《Profit(利益)Plan(戦略)Paranoia(驕りのない健全な危機管理能力)Parsimony(効率性)Public Relation(情報の透明性)People(リーダーシップ)Pride(幸福感)》」を、極めて高いレベルで体現している企業であると、高く評価しています。

 二つ目の書籍は、『「シン日本流経営」(名和高司著 ダイヤモンド社)』(私の本棚2026.3.24)です。ここでは、キーエンスについて次の様に解説しています。

 『1974年に設立し、FA用センサーを中心に測定器や画像処理機器の企画・設計・開発・生産を行っているキーエンスが実践するモデルは、高い顧客価値(高い付加価値)を低コストで提供する「スマートリーン」です。つまり、「顧客の課題を解決する、即納・高付加価値なソリューション」という、強烈なマーケットインの姿勢に基づき、販売額の約70%が、世界初・業界初の商品である実績を生み出しています。さらに、「より小さく・強く・速く」を追求した高付加価値商品を「1位になる領域」でのみ展開しています。 また、「納品・集金しない」を掲げ、営業は最も高い付加価値を生む業務のみに特化する一方、即日出荷をモットーに全世界35万社以上の取引先に対し、システム化された物流センターから出荷することで、迅速な対応を実現しています。これらの結果、海外売上高比率62.3%、営業利益率54.1%、東証プライム時価総額ではNTTと並ぶ16位と、驚異の業績を上げているのです。まさに、「深化」と「新化」を実践している「シン日本流経営」企業です』と。

 なお、直近(2026年3月)では、海外売上高比率66.6%、営業利益率51.0%、東証プライム時価総額では、NTT(13位)を追越し、10位です。ちなみに、両社の売上高は、NTT14兆円、キーエンス1兆円です。これは、市場が、キーエンスを「超高利益率で資本効率がよく、グローバルに拡張し続けるコンパクトな超優良企業」として、特にキーエンスの「利益を獲得する力の強さ」に注目して、高く評価している現れと言えます。〔注1〕【図表1】を参照下さい。。

〔注1〕『【図表1】「キーエンスの時価総額(2026年5月)」』は、下記URLから参照下さい。

URLhttps://ameblo.jp/sakaigmo/entry-12974018027.html

 このキーエンスの「利益を獲得する力の強さ」を創り出している仕組みを、紹介本の「付加価値のつくりかた」と「数値化の魔力」から解いてみましょう。

【「付加価値のつくりかた」から解く】

 著者の田尻氏は、『付加価値創造企業「キーエンス」の本質を読み解くには、営業が探索してきた顧客の(潜在)ニーズを、会社全体としてどう活用しているか、組織全体としてどうやって付加価値を生み出しているかについての深い理解が必要』と言います。

 そして、付加価値を生み出しているコンセプト(骨組み)は「構造が成果を創る」であるとし、言い換えれば「成果は構造、つまり仕組みによって生み出される」とします。具体的には、営業の構造、商品企画・開発の構造、販売促進の構造、人事の構造、物流の構造などキーエンスの組織内における「構造(仕組み)」の全てが「お客様に付加価値を提供するための「構造(仕組み)」になっており、社員の個人的な能力や努力だけでなく、「構造(仕組み)」によって、社員全員が成果を上げられるようになっている、とします。

 ここで、著者田尻氏の言われていることを、筆者流に解釈してみました。それは、ISO9001の認証を取得する時に作る「品質マネジメント・システム」を皆さんご存じと思いますが、キーエンスの「構造(仕組み)」は、『DX・自働化され、社員の仕事・行動と伴走する「付加価値創造マネジメント・システム」』と思って頂くと、理解が進むのではないでしょうか。

 キーエンスの「構造(仕組み)」の基本にあるのは、同社の理念である「最小の資本で、最大の付加価値を上げる」、つまり「無駄を徹底的に排除し(スマートリーン)、顧客に価値を提供することによって、最大の付加価値を確保する」であり、「構造(仕組み)」に沿って、全社員でそれを求め・行動・実現し、企業理念を達成していると言えます。

 それではキーエンスの付加価値を創造する、具体的な「構造(仕組み)」を見てみましょう。文字数の関係もあり、詳細は〔注2〕の【図表2】を参照下さい。どの様なプロセスを経て、顧客の付加価値とキーエンスの最大の付加価値が創出されるか理解できます。

〔注2〕『【図表2】“付加価値創造の「構造(仕組み)」を営業・商品企画・商品開発・販売促進の「連携強化プロセス」から見る”』は、下記URLから参照下さい。

URLhttps://ameblo.jp/sakaigmo/entry-12974018545.html

【「数値化の魔力」から解く】

 キーエンスの、上述の、「構造(仕組み)」に沿った行動を「見える化」し、「実現性」と「再現性」を高め、社員のやる気を引出すと同時に、社員を成長させ、無駄を徹底的に排除する「スマートリーン」経営を実現し、「改善」の種を見出し、必要ならば、「構造(仕組み)」を「改善」していく、等の機能を果たしているのが「数値化の魔力」です。

 著者の岩田氏は「数値化の魔力」が発揮される要素を、次の3つの視点で分析しています。

 一つは、数値化には、BSC(Balanced Scorecard;バランスト・スコアカード)の思考を用いたKGIとKPIを使います。これは「プロセス(行動)の数値化」ですが、キーエンスでは、部門からチームへ最後は個人へと「目標の連鎖(cascade down;カスケードダウン)」による数値化を行います。つまり、『「個人の行動レベル」の管理』がベースなのです。「個人」の目標に向けた、個人の行動プロセスを因果関係でロジカルに構築した、『「個人」の「行動の数値化」』により、『目標達成に向けてすべき「行動」』が明確になり、「個人」はどうすればよいか迷う必要がなくなり、ストレスが軽減され、その結果、「ゲーム感覚的」に仕事が出来、「個人」は自ら設定した目標をクリアーすることが面白くなって来るのです。これを実現する方法・手段が、次の二つの視点です。〔注3〕【図表3】を参照下さい。

 二つ目は、『「顧客の付加価値を前提とするキーエンスの最大の付加価値という結果」=「行動の量」×「行動の質」』と定義し、「行動の量」と「行動の質」を最大化する3つのステップを示します。

 1st Step;『数字で「自分の行動」を「見える化」する』です。「仕事の成果」と「プロセス(行動)」の因果関係のロジックが明らかになり、判断の根拠となります。

 2nd Step;『数字から「行動の量」のボトルネックを見つける』です。「行動の量」の不足を見つけ、改善することで「行動の量」を最大化できます。

 3rd Step;『数字から「行動の質」のボトルネックを見つける』です。「行動の質」の不足を見つけ改善することで「行動の質」を最大化できます。

 三つ目は、「個人」による行動管理ではなく「チーム・マネジメント」です。チームの状態を、チーム全体から見た結果と、メンバー毎にプロセス単位で確認できる透明性を確保し、数字で分解することで、改善すべき行動を明らかにできます。これにより、具体的な改善策をメンバーに指示し、必要な場合には、「構造(仕組み)」の改善を経営陣に提示します。これこそが「クリエイティブ・ルーティン」(現場のきらりと光る気付きを、「構造(仕組み)」へと落とし込み、それを日々くり返すこと)による「キーエンスのマネジメント」と言えます。

詳細は〔注3〕【図表3】を参照下さい。

〔注3〕『【図表3】「キーエンスの数値化の魔力を見る」』は、下記URLを参照下さい。

URL: https://ameblo.jp/sakaigmo/entry-12974019013.html

 

【二つの紹介本の解き明かしから、「キーエンスから“まねぶ”」を得ました】

 上述の解き明かしから得た、「キーエンスから“まねぶ”」を、次項で記して見たいと思います。

 

■         “出色(際立っている)の企業”キーエンスから“まねぶ”

【『「究極の成功例」キーエンス』から、BSCの構築の手法を“まねぶ”】

 出色の企業キーエンスの、KGIとKPIマネジメント(BSC経営)から学んだことは、「構造(仕組み)」(マネジメント・システム)とBSC経営が連携・リンクすることで、初めて効果が出るということです。

 加えて、キーエンスのBSC経営は、綺麗ごとではなく、全社の財務目標から、「目標の連鎖(cascade down)」により、部門、チーム、個人の具体的なKGIへと連鎖し、その具体的なKGIが、目標に至るプロセスへと分解された「行動」と行動の目標に至る「数値化」によって構成される、KPI設計によって、「実現性」と「再現性」が担保されているのです。

 「BSC(バランスト・スコアカード)とは」について次のような解説が有ります。『バランスト・スコアカードは、企業経営のビジョン・戦略を、整合性あるアクションに落とし込み、全員参加による総力戦で競争優位・持続的成長企業へと切り開いていく、戦略実現ナビゲーションツールと言えます。バランスト・スコアカードの「バランスト」は、キャプランとノートン(BSCの開発者)が、「企業戦略」VS「従業員の日々の業務に適用できるアクションプラン」、「財務」VS「非財務」、「従業員」VS「顧客・株主」、「短期戦略」VS「長期戦略」等の二項対立を二面性・両立性とみる「バランス」を目指していたことに由来します。』(「ロジカルシンキングがよくわかる本」今井信之著 秀和システム190p)

 キーエンスのBSC経営は、上記解説の要素を100%実現し、『プロセス重視の視点+「構造(仕組み)」の非財務数値の財務数値化』の、TQM(Total Quality Management)ツールとして機能しているのです。加えて、他に例を見ない、「数値化」による『「スコアカード」化』を実現し、「公平で透明性の高い評価制度」を構築し、社員の「モチベーション」と「エンゲージメント」を高めていることです。まさに「究極の成功例」です。

 この、キーエンスからの学びを生かし、BSC経営の構築の際の“まねぶ”として、生かして行きたいですね。

 詳細は、〔注4〕【図表4】を参照下さい。また、「目標の連鎖(cascade down)」については〔注3〕【図表3】P4を参照下さい。

〔注4〕『【図表4】“BSC(Balanced Scorecard;バランスト・スコアカード)の本質を体現し、最も高い業績を上げ続けている「究極の成功例」キーエンス”』は、下記URLを参照下さい。

URL: https://ameblo.jp/sakaigmo/entry-12974019225.html

【知って得する「The Model」と「レベニューオペレーション」】

 「The Model」は、米Salesforce社が、自社の成長プロセスを体系化したもので、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つの部門に分業し、各プロセスの情報を可視化・数値化して運用の効率を高める営業組織の標準的なフレームワークです。

 「レベニューオペレーション」とは、「The Model」と補完関係にあるフレームワークです。「The Model」を導入して分業化を進め、それぞれの部門が独自のKPIを追い求めると、「サイロ化(部門の孤立)」という構造的な罠に陥りやすくなることを避けるために作られた、「4部門を統合し全体最適を目指すフレームワーク」です。

 キーエンスでは、「レベニューオペレーション」を採用し、「The Model」の4つの部門のうち「インサイドセールス」を営業の中にいれ、「営業」「マーケティング」「カスタマーサクセス」の3部門が、「高速の循環(ループ)」を回して活動しています。まさに、組織横断の統合により、全体最適を実現しています。

 キーエンスでは、「営業」が「目」となり、「マーケティング」が「頭脳」となり、「カスタマーサクセス」が「信頼の盾」となることで、デザイン思考(これまでにないイノベーション<新機軸>を生み出すための、顧客ファーストな新規事業・商品開発の手法)を組織全体で生み出す仕組を創っています。これもキーエンスの強みの一つです。

 キーエンスの、「デザイン思考」が生まれてくる「レベニューオペレーション」の仕組みは、営業システム構築の際の“まねぶ”として、生かしていきたいですね。

 キーエンスの「レベニューオペレーション」の詳細は〔注5〕【図表5】を参照下さい。

〔注5〕『【図表5】“知って得する「The Model」と「レベニューオペレーション」”』は、下記URLを参照下さい。

URL: https://ameblo.jp/sakaigmo/entry-12974019383.html

 

■         出色の企業からの“まねぶ”を得る(むすび)

 遠い世界の企業と思っていた「出色(際立っている)の企業キーエンス」にも、“まねぶ(まねる+まなぶ)”が有りました。これからも、様々な“まねぶ(まねる+まなぶ)”の機会を見つけていきたいと思っています。

 

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/